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福岡県労働委員会委員コラム 第32回

ページID:0815471 更新日:2026年5月1日更新 印刷ページ表示

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第32回

 

 

「労働における『ビジネスと人権』と労働委員会」

 

労働者委員  桑原 忠志 

 

 「ビジネスと人権」とは、「企業は利益を追求するだけでなく、当該企業の従業員のみならず事業に係るすべての人たちの人権を守る責任がある」という考え方です。

 2011年に国連で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」により、日本政府は、国内の事業者(企業)に対し、国際労働基準の重点分野5項目(結社の自由と団体交渉、雇用および職業についての差別の撤廃等)と国内法の理解を高め、人権が尊重され誰もが生き生きと働ける職場環境と企業競争力の維持・確保を目的に「行動計画」や「ガイドライン」を策定し企業の取り組みを支援しています。具体的には、企業が事業活動の全般において、人権リスクを防止・軽減する方針を定め、もし人権侵害等が生じた場合は対策を講じるとともに被害者を救済する取り組みである「人権デュー・ディリジェンス」(人権DD)の実施を求めています。この取り組みは現時点で法制化されておらず法的拘束力はありませんが、この間の取り組みにより、大手企業を中心に「人権DD」の実施率は約7割に達しているといわれています。一方で、取引先の協力が得られない、中小企業への浸透や認知度が低い、また、女性、外国人労働者などへの差別解消や実効性ある救済措置(相談窓口)の整備などが進んでいないなど多くの課題があることが指摘されています。

 「ビジネスと人権」という取り組みの中において、国は企業が関与する人権侵害に対して法的な手段で被害者を守る義務があります。そのような中、労働委員会は、企業が負うべき「人権尊重の責任」のうち、特に「労働基本権(団結権、団体交渉権、団体行動権)」を実効的に守るための公的なセーフティーネットとしての役割を担うものと考えます。

 企業が、労働組合への加入や活動したことを理由に解雇したり、正当な理由なく団体交渉を拒否したりすることは、憲法に保障された基本的人権の侵害にあたるため、労働委員会では必要な審査を経た上で不当労働行為にあたる場合は救済命令を発出し労働者の権利を保護します。

 また、「指導原則」では、企業と労働者の対話が重視されており、労働争議が発生した場合、労働委員会は第三者として「あっせん・調停」を行い争いの早期解決を図ります。

 職場や労働環境に係る長時間労働、解雇、配置転換、いじめ・嫌がらせ(ハラスメント)など、個人の人権にかかわるトラブルについては、福岡県内の各労働者支援事務所が解決を支援します。

 労働委員会や労働者支援事務所は、企業が事業活動の中で見落としがちな「働く人の権利」を公的な立場から守り、是正させるための「駆け込み寺」であり、「対話の仲介役」になります。

 福岡県では、労働委員会と県内4カ所の労働者支援事務所において労使双方からの電話や面談によるご相談を受け、労使関係の安定に向けた必要なサポートを行っていますので、お気軽にご相談ください。

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