本文
福岡県労働委員会委員コラム 第9回
第9回
「和解による早期解決」
使用者委員 吉村 達也
労働委員会は、労働争議の調整(あっせん、調停、仲裁)を行うほか不当労働行為(不利益取扱い、団体交渉拒否、支配介入、報復的不利益取扱い)の救済申立てに対して、審査、判定を行います。解決まで時間を要するのが審査案件です。 審査の一連の流れですが、組合の申立てによって始まり、準備書面や証拠の提出による調査、審査計画、証人・陳述書による審問を経て命令(救済または棄却)、決定(却下)もしくは和解、取下げとなります。もし、命令に不服の場合は、再審査の申立てもしくは取消訴訟の提起ができます。 自主的な解決が困難と判断した上での申立てであり、当初は「和解」の糸口が見えないのが通例です。しかし、調査により当事者双方の主張を整理し、それをもとに審査計画を作成し、審問が開始される頃には、紛争の原因となった事実を、当事者双方が振り返りにより客観的にとらえ直し、相手の立場にも冷静に向き合えるようになります。そうすると結晶作用で積み重なった相手方への不信感が一歩退き、「和解」という選択肢も検討の余地が生じてきます。 労使関係は人的関係として今後も継続しますし、条理にかない、実情に即した妥当な「和解」案なら早期解決こそ多くの当事者の利益にかなうからです。 命令は公益委員の合議で決し、労使の委員も参与として意見を述べます。命令に行き着くにしても、その前ステップとして公労使の各委員がそれぞれの立場で当事者双方の事情を汲み取りながら、誠意をもって最後まで生産的な「和解」解決を目指します。結果的に命令が発せられ、その内容に不満が生じても、合理的・弾力的な方法で紛争解決に取り組んだ過程が、少しでも将来の労使関係の安定に役立つことがあればとの願いもあるからです。 公労使委員三者で紛争解決に当たり、アプローチしやすいのが労働委員会の特徴です。ご利用の手続き、その他お尋ねは、事務局に気軽にお問い合わせください。 |