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福岡県労働委員会委員コラム 第24回
第24回
「労働組合法の労働者って誰のこと?」
使用者委員 熊手 艶子
労働者とは、「お給料をもらっている従業員のことじゃないの」と思われている方が大多数だと思いますが、実はそれは労働基準法上の労働者のことです。 労働者の定義は、労働基準法と労働組合法では、労働組合法の方が労働者の範囲が広くなります。 二つの法律の労働者の定義を見てみましょう。 労働基準法第9条 職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。 労働組合法第3条 職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。 労働基準法は、「賃金を支払われる者」となっておりますが、労働組合法は「賃金、給料、その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義されています。 労働組合法の労働者は、労働者と使用者が対等な関係で団体交渉や団体行動ができるように作られた法律のために労働者の範囲が広がります。 最近は、フリ-ランス、つまり業務委託(請負契約、委任契約)等働き方が多様化しており、名目上自営業者として働いているが実態は労働者に該当するような場合があります。 労働委員会にも、労働組合法の労働者(労働組合法上の労働者性)といえるか否かが争点となる事例が増えているように思われます。 労働組合法上の労働者性を認められれば、その労働者が加入した労働組合の団体交渉を拒否した場合には、労働組合法第7条の不当労働行為に該当するため使用者は注意が必要です。 労働組合法第7条の不当労働行為とは、(1)労働組合に加入したことによる不利益取扱い(2)正当な理由のない団体交渉拒否(3)労働組合への不適切な介入等があります。 私は、税理士として30年以上中小零細企業に関与してまいりました。 使用者は経営内容が苦しくなると、雇用契約を業務委託に変更し、労働基準法の適用を受けないと思い込んでいる使用者もいます。 しかし、使用者は、業務委託であっても労働組合法上の労働者性が認められる場合があることを十分理解しておく必要があると思われます。 |