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福岡県労働委員会委員コラム 第23回
第23回
「働く人の声を届けるために」
労働者委員 古賀 栄一
このコラムを読まれている方は、労働委員会をご存じでしょう。一方、社会一般的にどれだけの方がご存じでしょうか? 労働委員会は公益委員・労働者委員・使用者委員の三者で構成されています。その一角を担う労働者委員の役割は極めて重要です。それは、労働者一人ひとりの声を代弁し労使の健全で対等な関係を実現するための橋渡しを担うということに他なりません。
近年、職場でのトラブルや不安定な職場環境が増加しています。とりわけ、非正規雇用やフリーランスと言った形態で働く人々にとっては、自らの権利を主張することすら難しいのが現実です。
こうした中で、労働委員会の存在意義がますます問われています。労働委員会は「正常な労使関係」の実現に向けて、不当労働行為の救済制度やあっせん制度を通じて、労働者が声を上げる場を提供し、公正な解決を目指しています。その過程において、私たち労働者委員は労働者の視点に立ち、実態を正確に把握し、真の意味での「公平」を追求しなければなりません。
委員会に寄せられる相談の中には、使用者側の無理解や誤解によって生じた問題も多く見受けられます。一方で、労使の対話が機能していれば防げたケースも少なくありません。だからこそ、今後の労働委員会には紛争解決だけではなく予防的機能の強化が必要になってくると考えています。問題が表面化する前に、健全な対話と交渉が行われる風土づくり、労働組合の組織化や労使双方への啓発活動などの対策も強化していかなければなりません。
「一人でも泣いている者がないように」これは私が所属する産業別組合の基本理念です。労働者が孤立せず、仲間とともに声を上げる力を持つことが「正常な労使関係」をつくる第一歩です。働くすべての人にとって、安心して声をあげられる社会を実現するために、これからも労働者の声に真摯に向き合い、制度の実効性を高めていく努力を積み重ねてまいります。
最後に、もっと多くの人に労働委員会を知っていただきたいと思っています。労働委員会の制度も知らないまま泣き寝入りしている労働者がいるのも現実です。労働委員会をもっと身近に、もっと積極的に使っていただき、安心して働き続けられる職場環境構築の一助となれば幸いです。 |