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福岡県労働委員会委員コラム 第20回
第20回
「組合と力を合わせて風通しの良い職場を作りましょう」
労働者委員 溝田 由美子
4月は、社会人となって新しい生活をスタートする人、転勤や異動で部署が変わる人が一年で一番多い時期。新たな出会いにドキドキすると同時に、慣れない環境に戸惑いや不安を感じる人も多いのではないでしょうか。職場は新人を迎えて活気付きますが、新人は周りから注目されるので職場環境に慣れるまでは緊張続きではないかと思います。 職場の人間関係が良好なら、同僚とも自由に意見交換ができ、上司とのコミュニケーションも取りやすいので、いつのまにか緊張も解け、新しい環境にも慣れて、仕事のモチベーションも上がってきます。 ところが、職場の人間関係が悪いと、仕事に行くのが嫌になります。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、仕事を辞めた理由として、「その他の個人的理由」を除くと、「職場の人間関係が好ましくなかった」が男女とも多くを占めています(※1)。職場の人間関係が悪い場合、離職する大きな要因になっているのではないかと推察できます。さらに、令和5年度の労働相談の内容では、福岡労働局では「いじめ・嫌がらせ」が11年連続でトップ(※2)、福岡県(県内4か所の労働者支援事務所の労働相談合計)でも「職場の人間関係」が3年連続トップ(※3)となっており、職場での人間関係に悩んでいる人が多いということがわかります。 福岡県の労働委員会では、労働争議の調整(あっせん等)において、個々の労働者と使用者との間の労働関係に関する紛争、いわゆる個別労使紛争については直接的には扱っていませんが(労働者支援事務所を通じた「委員あっせん」は実施)、労働組合や労働者からの不当労働行為救済申立ての中には、職場の人間関係という個別労使紛争が原因となっている事案も見受けられます。 職場で日頃から一人一人のコミュニケーションが取れて、お互いに適切な情報共有ができており、そして信頼関係でつながっている風通しの良い状況では、労使紛争は起こりにくいでしょうし、仮に起こったとしても自主解決できるのではないでしょうか。 労働組合は組合員一人一人の問題や職場全体の問題について、使用者との団体交渉により解決を図り、労働者が働きやすい職場を作っていきたいと考えています。団体交渉は組合との話し合いの場。意見交換、情報共有そして問題解決を図る機会だと考えてはいかがでしょう。
(※1) 厚生労働省『令和5年雇用動向調査結果の概況』 [PDFファイル/674KB] (※2) 厚生労働省 福岡労働局『紛争の内容は「いじめ・嫌がらせ」が11年連続で最多』 [PDFファイル/1.78MB] (※3) 福岡県『令和5年度 労働相談の状況』 [PDFファイル/272KB] (いずれも令和7年3月28日閲覧) |