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福岡県労働委員会委員コラム 第2回
第2回
「労働組合法は働く人たちの味方」
労働者委員 溝田 由美子
令和4年7月に労働委員会の委員に任命され、委員会での経験はまだ浅い私ですが、これまでの経験を顧みて、労働委員会の労働組合法による解決レベルは高いと感じました。
私は、長年公務職場で働きさまざまな業務を経験しながら、労働組合の活動も併せて行ってきました。組合は一人の問題でも職場全体の問題として捉え、使用者との話し合い、あるいは団体交渉により解決を図ります。私自身も子育て中の権利行使には組合に助けてもらいました。ですから、労働組合は困ったときの「駆け込み寺」と思っています。
しかし、実際に労働相談の仕事に携わってみると、相談者の職場には労働組合がない場合が多く、従業員全体に関わる問題には労働組合を結成して改善を図った方がいいと、組合結成の助言をしていました。もちろん、上部団体や合同労組の紹介も。でも、相談者の中には「組合まではちょっとねー」と労働組合に対していいイメージを持ってない人や、「労働組合ってなんですか?」と知らない人も多かったのです。当時も労働組合の組織率は年々低下していましたし、直近の2022年厚生労働省の調査では16.5%(前年比0.4ポイント減)にまでなっています。
また、個別労使紛争の解決にも関わり、「あっせん」も行いましたが、例えば不当解雇の場合であっても金銭解決となり原状復帰はほとんどありません。未払い賃金等の問題でも同様で、職場で支えてくれる仲間がいない状況では、会社を辞める覚悟であっせんを申し立てられていました。
ところが、労働組合を結成して組合員となれば、解決の方法が格段に広がります。労働組合法が適用されることになるからです。例えば、組合活動を理由に使用者が組合員を解雇した場合、労働委員会に「不当労働行為の救済」申立てを行い、審査により不当労働行為があったと認定されれば、原状回復義務の履行が使用者に課されます。つまり、解雇が撤回され職場復帰をし、さらに解雇がなければ支払われたであろう賃金の支払い(バックペイ)もあります。
近年、企業に属さない個人事業主やフリーランス等(労働基準法等の適用なし)多様な働き方をする労働者が増えていますが、労働組合法による救済事例も出てきました。
「団結は力なり」です。労働組合法の枠組みを使って、働く人たちの労働環境を改善していきましょう。そのためにも、労働委員会を積極的に活用してください。 |