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福岡県労働委員会委員コラム 第15回
第15回
「労使関係の構築について」
使用者委員 小川 浩二
私のような人事を管轄する経営側の人間の中で、今抱えている(共通の) 大きな課題は ・人手不足=人材確保 ・従業員のエンゲージメント向上 の2点ではないでしょうか? 以前から課題認識はされていましたが、アフターコロナ以降、顕在化しています。
労働者側の働くこと(仕事)に対しての様々な価値観の変化に対し マネジメント(経営)側が対応出来ていないことが、トラブルに発展する事例も 増加しています。 使用者は時代の変化に対応し、従業員に向き合う必要があります。 使用者の思考も変わらないといけません。 但し、変わらないものもあります。それは「法」です。 労働者の権利は保障され、その権利は法で定められているのです。
福岡県労働委員会では、様々なトラブルに対し 公益委員、労働者委員、使用者委員が連携して、真摯に向き合い、取り組んでいます。 21名のメンバーの知識・経験、スキルを結集し、問題解決に取り組みます。 最適解を各委員で熟慮し、審査・調整・和解・解決作業を行います。
争議案件に携わる中で痛感するのが、会社内での日常のコミュニケーションの重要性です。 労使間は勿論、横や斜めの関係の中での、相談・報告など。 自分の主張だけでなく、相手の言い分にもしっかり耳を傾ける、そのような対話が 続けば、“労働争議までエスカレートしない”“和解のヒントが見つかる”等、 解決に向けての近道になるはずです。 使用者の皆様は、是非、対話の労力を惜しまず、従業員の声に耳を傾けてもらいたいと 思います。
皆さんは「エンプティチェア」をご存知でしょうか? エンプティチェアはゲシュタルト療法と呼ばれる心理療法のひとつで カウンセリングやコーチングの場で使われます。 その名の通り、誰も座っていない「空の椅子」を準備し、実際のその椅子に 座ったり、話しかけたりしながら進めるワークとなります。 労働者、使用者の方も、是非やってみてください。 1人で自分、相手の役を演じます。 (1) 椅子を2脚用意する (2) 相手が座っていると見立てた椅子に向かい、相手に言いたいことを言う (3) 相手の椅子に座り、自分からの言葉を味わう (4) 相手と自分の椅子を行き来しながら会話をする このワークは相手の立場になることで、「本当の気持ち」「そういうつもりじゃなかった」 「その話はやめてほしい」など、自分では気づかなかった気持ちが出てきたり、新たな気づきがあるなど、これまでとは違った感覚が生まれるかもしれません。
相互理解が円滑な労使関係を築き、トラブルに発展しても解決の近道になるのです。 |