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知事定例記者会見 令和6年2月15日(木曜日)

更新日:2024年2月16日更新 印刷

知事定例記者会見 令和6年2月15日(木曜日)

この会見録は発言をそのままではなく、文章とする際読みやすいように整理したものです。

この知事記者会見録の模様は、  ふくおかインターネットテレビ  で動画配信しています。

発表事項

(1)令和6年度当初予算及び令和5年度2月補正予算の概要について(財政課)
(2)教育長の任命について(人事課)

(知事)

今日の発表事項は予算についてです。

2月22日に、2月定例県議会を招集します。この議会に提案する令和6年度当初予算及び令和5年度2月補正予算の概要を説明します。

まず考え方です。昨年を振り返ると、5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類から5類に変わりました。このことにより、人、モノの動きが活発化し、また経済、社会も動き出しました。我々の日常がようやく戻ってきたかなという感もあるわけです。インバウンドも非常に多くなってきています。

しかし一方、本県は昨年7月に梅雨前線豪雨による大雨災害を被りました。全国的にも度重なる自然災害が発生しています。さらには、ロシアによるウクライナへの軍事侵略も依然戦闘終結の見込みが立っていない状況です。昨年10月にはイスラエルとパレスチナの紛争が勃発しました。さらに、為替マーケットの円安傾向も続いています。こうしたことに伴い、国際的なエネルギー価格、あるいは各種の原材料価格が高騰しています。この状況を見たときに、私たちの生活や、産業経済を取り巻く状況は依然として厳しいものがあると受けとめています。

そこでまず、県民の皆様の命と健康そして生活を守るということを第一に取り組んでいきます。県では、令和5年度の当初予算の際にも説明した「1000億円の人づくり」、「県内GDP20兆円への挑戦」、「安全・安心で活力ある社会づくり」の三つの柱を立て、令和6年度の当初予算も編成しました。この人づくり、人材育成について、私はかねがね、人こそが宝であると申し上げています。そしてまた、経済成長という観点から、福岡県が1度も超えたことのない実質GDP20兆円の壁を乗り越えたい、このための果敢な挑戦を続けていきたい。そしてまた、誰もが住み慣れたところで長く元気に暮らし、そして働き、そしてこどもを安心して産み育てられるような、安全・安心で活力ある社会を作っていきたい。この三つの考え方はやはり変わらないと思っています。来年度もこの三つの柱に基づく施策を力強く実行し、そしてその成果となる実を上げて、福岡県の未来を見据え、成長・発展を加速前進していきたいと考えています。

来年度の施策を考える上でのキーワード、これは「サステナブル」と「イノベーション」としました。県民の皆さんの将来を守るサステナブル社会への改新。そして福岡県の未来を切り拓いていくイノベーションの創発。この二つの視点を持って施策を展開していきます。

この二つの視点に込めた思いについて説明します。

まず、「将来を守るサステナブル社会への改新」についてです。福岡県も含め、我が国における平成28年以降の出生数は毎年減少を続けています。こういった少子化の進行、そして人口減少を背景に、深刻さを増している人手不足の対応を図っていかなければいけない。さらには、物価上昇を上回るような賃上げによって、実質賃金をプラスに持っていきたい。令和4年も令和5年も、残念ながら実質賃金はマイナスであったという状況です。これを何とかプラスに転換し、経済を成長させていかなければいけない。つまり物価と賃金の好循環、経済の好循環を実現していく。こうした私たちが直面している先送りできない課題に真正面から取り組んでいきます。

また、平成29年の7月の九州北部豪雨以来、福岡県は7年間で6度に及ぶ大雨特別警報が発令されるなど、度重なる豪雨災害に見舞われています。さらには、元日に起こりました令和6年能登半島地震といった震災、また、新型コロナウイルス感染症をはじめとするような新興感染症や地球温暖化、気候変動など、私たちの暮らしは様々なリスクに脅かされています。この状況を放置していると、私たちが今享受している様々なサービスの縮小はもとより、社会そのものが持続可能でなくなってしまう、サステナブルではなくなる。何とか手を打ち、県民の皆さんの不安を取り除き、将来にわたって社会を持続可能なものとし、県民や事業者の皆さんの将来を守っていきたい。令和6年度に本県として取り組むべき視点は、まずこれではないかとの思いを込めたものです。

次に、「未来を拓くイノベーションの創発」です。人口減少、中でも若年層をはじめとする生産年齢人口の減少が続いている下では、現状の維持にとどまっていると経済は縮小し、諸外国との競争にも遅れをとってしまう。このことは皆さんもよくご理解のことと思います。これに対し、世界に打って出る福岡県の未来を切り拓いていくため、デジタルや先端技術、そして何より、人材が生み出すイノベーションの力で、労働生産性の向上や、企業、産業の付加価値生産性の向上を図っていきます。さらには、半導体、EV・電池、水素などの福岡の“産業のコメ”ともいうべき分野や、福岡県が人や企業から選ばれるために必要な取り組みに重点的に投資を行い、福岡県の付加価値の向上を図っていきます。そして、イノベーションを創出する拠点形成、人づくりに積極的に取り組むとともに、新たな可能性を広げる多様な人材の活躍を支援していきます。こうしたことにより、福岡県を力強く、成長・発展させていきたい。その思いを込めたものです。

予算の全体像ですが、令和6年度の当初予算が2兆1,321億円、国の経済対策を最大限活用した令和5年度2月補正予算が140億円、合計して2兆1,461億円です。この二つの予算を今議会に提案します。そしてすでに議決いただいている12月補正予算の746億円。これら三つを合わせた2兆2,207億円を16ヶ月予算という考え方で編成しました。これは国の経済対策補正予算の考え方もそうですが、当初予算と一体的に考えて、切れ目のない施策、対策を打っていくということからこういう考え方を設けるものです。

令和6年度の当初予算における新規事業は、トータルで200件あります。前年度は190件でしたので、10件増えたというところです。

なお、2月補正予算については経済対策の効果を速やかに発現させるため、早期に執行する必要があります。このため県議会において早期に審議、議決をいただきたいと考えています。

 

それでは、この二つの視点に沿った主な施策についてお話をしていきます。

まず、少子化に歯止めをかけるため、こどもを安心して産み育てることができる社会づくりを進めていきたいと考えています。今年度設けた「出産・子育て安心基金」を活用して、今年度は、病児保育の無償化、また病児保育施設の増加を図るための支援策、さらにまた不妊治療に対する支援を行いました。来年度は、この基金を活用して、産後間もないお母さんとお子さんが心身のケアや育児サポートを受けられる、いわゆる産後ケア事業の利用者の負担を軽減する県独自の補助制度を創設します。

この産後ケア事業は現在、県内すべての市町村で実施されています。しかし、この利用者負担に対して、国の利用者減免制度を活用している市町村はまだ少ない状況です。国の減免制度を使うと市町村の負担も生じることになります。国が2分の1、市町村が2分の1負担のイメージです。これが、今回の県の補助制度では運営費について市町村負担分2分の1のうち、半分にあたる4分の1を県が持ちましょうと。そして、利用者の方が負担する金額は、例えば5,000円のケースですと、今までは国が1,250円、市町村が1,250円負担で残りの2,500円を利用者が負担されている。今回の補助制度では、今利用者が負担している2,500円のうちの半分、つまり国負担分と同額を上限として、県が負担するというものです。これにより、利用者の負担は1,250円で済みます。つまり、トータル5,000円のうちの4分の1で済むということになります。こういう補助制度を設けようというものです。我々のこの補助制度を、国の減免制度を導入していない市町村に対して導入を促していきたい。このための県としてのベースとなるプラットホームを作ろうということです。多くのお母さんがこの産後ケアを気軽に利用し、母子ともども健やかな日々を送れるよう、医師会、産婦人科医会、そして助産師会など関係団体の皆さんと連携して、対象者となるお母さんや市町村の皆さんに、我々のこの新しい制度をぜひ活用していただくよう呼びかけてまいりたいと考えています。

次に、学びの多様化学校です。近年いろいろな事情を背景に、不登校の子どもさんが増えています。不登校になった生徒の皆さんがどのような支援を必要としているか、どういった分野の学習に取りこぼしがあるのかなどは、それぞれの生徒の不登校の期間や原因によって様々です。将来の夢を叶えるために高校で学びたいという意欲があっても、それぞれのニーズに応じた手厚い支援がなければ、学びを継続することが難しいケースがあります。様々な生徒さんの実態に応じた教育を行うため、特別な教育課程を編成できる学びの多様化学校を設置します。

この学びの多様化学校では、少人数での授業や、学び直しなど、生徒一人一人のニーズに合った教育が受けられます。令和7年度に、全国初めてとなる県立高校での学びの多様化学校の設置、開設に向けて、令和6年度はその準備を進めるための予算を計上しています。この学びの多様化学校を活用することによって、不登校になった生徒の皆さんが安心して学び続けられる環境を作り、誰一人取り残さない教育を実現したいと考えています。次に、共通している不登校の問題です。不登校の生徒数が増えていることに伴って、通信制高校への進学者数も増えてきています。通信制高校は社会的にそれだけ期待が大きくなっているわけです。博多青松高校は県内唯一の公立通信制高校で、県内各地の生徒さんが在籍しています。ただ通信制といっても、ずっとウェブでやっていればよいというものではなく、月に数回はスクーリング、対面授業を受ける必要があります。その時には博多青松高校に来てもらう必要があるわけです。ただ、遠くに住んでいる生徒さんにとっては通学の負担が生じます。また、博多青松高校の在籍されている生徒の状況を見ると、約7割が福岡地区に居住している生徒さんで占められています。つまり、それ以外の地区の子どもたちにとっては、博多青松高校がいいなと思っても、なかなか選択しづらい状況になっています。こうした現状を踏まえて、この博多青松高校通信制の対面授業を、北九州、筑後、筑豊の3ブロックの各地区の協力校を指定して、そこで対面授業を受けられることができるようにすることによって、県内どこに住んでいても、公立唯一の通信制である博多青松高校にアクセスしやすい環境を整備してまいります。

それから次に、人手不足に打ち克つ不断の働き方改革です。どの業種の皆さんとお話しても、人手不足は定例句のような会話になっています。これに打ち克つためには、やはり働き方改革の推進が各業種でも必要で、自動車運転業務の時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」によって、物流や地域公共交通の分野において、輸送能力の減少や人手不足がさらに加速することが懸念されます。このために、まず物流について、物流サービスを支えていただいている大きなものはトラック運転手さんたちです。ただハンドルを握っているだけではなくて、荷物の上げ下ろしなど非常にいろんな作業があるわけです。このような労働負担を軽減し、そして拘束時間を削減する取り組みを支援していくものであり、荷台の昇降装置の設置やパワーアシストスーツの配備、輸送効率化のためのシステムを作るといったことに取り組む事業者に対する支援を行うものです。地域公共交通も同じです。女性の方、若者、そして外国人の方など、多様な人材が、この地域公共交通の運転手として活躍できるように、職場環境の整備をしていくものです。女性用のトイレがない、女性の更衣室がないというのが現場の現状です。こういうものの整備を支援しようというものです。それから外国人の方のためには、第2種自動車運転免許の取得の時に、多言語で受験できるようにしようというものです。

それから、次は医療の問題です。外科医になろうという方が少ないです。大学の先生と話しましたが、外科の方にリクルートするのは結構大変らしく、また外科医のなり手不足で、外科医になったとしても、都市部に集中してしまう状況にあります。このため地域偏在という状況が生まれています。これを解消しなければなりません。この原因は、若手のお医者さんにしてみると、色々な症例がたくさん見られる、あるいは自身のキャリア形成にとっても、大学病院など自分の育ってきた病院や指導していただいた先生から直接指導が受けられることが必要で、どうしても、遠隔の地に行くとそういうことがなかなかできないということです。地域の病院でも、若手の医師の皆さんがより高い技術を習得して、その場で活躍していただくことができるように、指導される先生指導医、あるいは症例がたくさんある都市部の病院から、リモートで手術の指導を行ってもらうために必要な機器を整備するものです。

この遠隔手術の指導は全国では、茨城県において実施している例がありますが、九州においては初めての取り組みです。

それから次ですが、中小企業の持続的な賃上げと物価の好循環の実現です。もう30年間フリーズしているデフレから何とか脱却しなければいけない。そして、賃金が増える、経済が成長する、大きくなっていく中で、緩やかに物価が上がる。こういう状況を生み出していかなければいけない。令和6年はその一つの大きな節目の年というか、重要な年だと思います。この賃金と物価の好循環を実現するためには、県内雇用の8割は中小企業の皆さんであり、この中小企業の皆さんが持続的に賃上げすることができる状況を生み出すことが不可欠です。

このため、昨年2月に、私の方から呼びかけまして、経済団体の皆さん、あるいは連合の皆さんも加わっていただき、13団体の皆さんと「価格転嫁の円滑化に関する協定」を結びました。これに基づき、今パートナーシップ構築宣言を行っていただく企業を増やしたり、県民の皆さまにもご理解いただくための街頭活動を行うなど、13団体が協力して取り組んでいるところです。この取り組みの中で、今回は新たに中小企業の賃上げを応援する専門家を配置しようということです。社会保険労務士や税理士、中小企業診断士、ファイナンシャルプランナーといった方々に、いろんな原価計算やその納め先との価格交渉のやり方を指導していただき、学んでいただくためのスキルアップセミナーを開催していこうというものであり、官民労一体となった取り組みをこれからも進めてまいりたいと思っています。

それから防災力の問題です。経験された方もいらっしゃるかと思いますが、福岡西方沖地震から20年。南海トラフ地震や、平成23年度の調査以降新たに主要活断層に追加をされた「福智山断層」「宇美断層」「日向峠-小笠木峠断層」の3断層での地震により想定される、市町村ごとの人や建物、インフラ等の被害調査を実施します。その結果については、我々の地域防災計画に反映させてまいります。

それから、登録していただいている方が15万人を超えましたが、この「ふくおか防災ナビ・まもるくん」というアプリがあります。本県は地域大雨災害が多いので、地震メニューがありませんでしたが、地震メニューを新たに追加します。断層別に想定される震度や液状化の危険度を地図上に色でわかりやすく表示していく機能や、地震時に徒歩帰宅者の支援のため、トイレや水道水などが利用できるコンビニやガソリンスタンドがどこにあるのか表示する機能を追加してまいります。

それから次に、災害時に現場の状況をSNSで投稿していただいていますが、非常に参考になっています。この被害情報等がどういうものかをAIによって分析して、瞬時に被害状況等がわかるシステム「Spectee(スペクティ)」の活用を市町村に拡大するなど、AI技術や衛星データ等のデジタル技術を広く防災対策に活用して、災害対応力を強化します。

次はワンヘルスです。これはずっと進めていますが、みやま市でワンヘルスセンターの整備を進めつつあります。新型コロナウイルスの流行予測手法の開発や人獣共通感染症と媒介動物に関する研究など、ワンヘルスセンターとしての研究環境を強化する必要があります。このため、このワンヘルスセンターの中核となる保健環境研究所において、病原体の情報やレセプトデータなどを一元化するとともに、このデータを解析するためのワークステーションを来年度整備してまいります。

次は環境の健全性の確保です。家庭や企業における太陽光発電設備等の導入をもっと進めなければいけないが、ご家庭もそんなに設置しているわけでもない。導入するときの費用が高いというのもあるので、これを共同購入する仕組みを作ろうと思いました。共同購入することによって、規模感により利益が出るということで、2割ぐらい安く購入できます。それと併せて、太陽光発電を行うことによってそれぞれの家庭のCO2削減量を集約します。これを国の「J-クレジット制度」によってクレジット化して、企業等に販売した収益を、今後の地球温暖化に関する取り組みに活用させていくシステムを作っていこうというものです。

それから次は海藻とウニの話です。海藻が吸収するCO2のことをブルーカーボンといいます。このブルーカーボンは新たな吸収源として非常に期待されており、企業活動などで排出されるCO2を藻場の保全活動で吸収されるCO2で相殺するクレジット化の取り組みが注目されています。福岡県では、九州大学と連携して、ドローンで撮影した画像からその海藻の量とCO2固定量を算出する技術を開発して、クレジット化につなげます。それとともに、藻場を守るために、海藻を食べるウニを除去する必要がありますが、ウニを捨ててしまうのではなくて、地元の野菜、くず野菜とかが出ますので、これを餌として与えて養殖することで、水産資源の有効活用にも取り組みます。このような施策を総合的に推進し、県民の皆様の暮らしや経済、環境が「将来にわたり守られるサステナブル社会への改新」を図ります。

次に、「未来を拓くイノベーションの創発」です。これからの福岡県の産業に不可欠な基盤、いわば明日の“産業のコメ”への重点的な投資を行っていきます。第2工場まで発表されているTSMCの熊本進出は「新生・シリコンアイランド九州」にとって非常に大きなチャンスであり、本県にとっても同様です。本県には、ロームさんや三井ハイテックさん、三菱電機さん、住友ベークライトさん、安川電機さん等々、半導体関連において優れた技術を持った企業が400社ほど、本県の中に立地されています。こういった半導体関連企業の設備投資などの取り組みが活発になっている状況です。そうした中、半導体の微細化が限界を迎えつつあります。もうどんどん小さくなって、もうこれ以上は無理というところにきており、性能向上や省スペース化、省電力などを実現する「最先端実装」が世界的に注目されているところです。

本県を考えますと、2011年の3月に三次元実装の設計、試作、評価・解析を一貫して支援する国内唯一の公的機関である三次元半導体研究センターを設立しました。これまでこの三次元センターは、県内外の延べ約260社の企業に、約3,500件の研究開発を支援してまいりました。この三次元センターの研究開発は、最先端の研究のため企業秘密に類することが多く、なかなかその具体的なものをお示しするということが難しいのですが、多数の実績があります。このような最先端実装の新しい技術の確立に向けて、世界的な企業や研究機関との共同研究をしようという新たな動きも生まれてきており、この三次元センターの重要性はますます高くなっています。これはTSMCが進出することも一つの要因です。このため、企業版ふるさと納税などを活用して、このセンターに新しい装置を導入し、機能充実を図ることで、県内企業の研究開発をさらに後押しし、最先端実装に取り組む県内外の企業とのプロジェクトを実施していこうというものです。

それから次は、EV・電池ということで、EV、電気自動車は今も走っていますが、まだまだ走り出して間がないといいますか、そんなにまだ車載用のバッテリーがどんどん捨てられているという状況にはなく、今からどんどん増えてきます。EVの使用済みバッテリーを大量廃棄する時代が遠からずやってまいります。こういったことを見据えて、我々の自動車産業はご存知のように、北部九州、中津のダイハツまで入れて、154万台の生産能力、イギリス1か国に匹敵する車の生産能力を持つ地域です。この福岡県のポテンシャルを活かし、全国に先駆け、EVバッテリーをリユースする、あるいはリサイクルする。リサイクルするとはつまり、中の希少金属を取り出してまた使うということです。そして、再びこのバッテリー材料として県内での電池の生産に活用していく。こういった循環の福岡モデルを作っていこうというものです。これは自治体が取り組むものとしては全国に例がないものです。これにより、EVやバッテリーの生産拠点を作ります。電気自動車が走るためには当然バッテリーが必要です。このバッテリーが非常に重いわけです。電気自動車になるとほとんどの重さはバッテリーの重さになります。これを遠くから運ぶのは非常に難しいため、我々としてはこのバッテリーの生産拠点を形成していきたいと考えています。ひいては本県のEV関連産業の発展につなげていきたいと考えています。

福岡モデルを作るにあたり、本県が北九州市に設置している福岡県リサイクル総合研究事業化センターを中心に、自動車メーカー、自動車の解体業、バッテリー関連の企業などと研究会を立ち上げ、このリユース・リサイクルを行うビジネスモデルやそれをどう進めていくかというロードマップを作っていく取り組みを始めたいと考えています。

それから次が、水素です。かねてから申し上げておりますように、北九州市若松区の響灘臨海エリアを中心とした水素の大規模拠点を構築したいと考えています。これに向けて、水素の需要量、供給コストを踏まえた収益性を評価し、実現の可否を判断するための調査を行う民間の水素供給事業者を支援してまいります。そして水素需要の拡大、あるいは将来的な県内への展開に向け、全国で初めてFC船の運航事業に取り組む事業者を支援してまいります。

それから「先端技術の実装」は、福岡バイオエコシステムというものを作っていこうというものです。昨年10月にボストンに行ってまいりましたが、ボストンはサンディエゴと並んで、アメリカにおいてもバイオ産業のエコシステムが完成された地域です。州政府の支援、それから現地の資金供給元の金融機関、ベンチャーキャピタル、資産運用会社等の集積、さらにまたMITやハーバードといったアカデミアの集積といったものもあり、このエコシステムができています。昨年訪問したボストンで、投資家や製薬企業、支援機関等との意見交換を行ってまいりましたが、この関係をさらに強化していきたいと考え、CIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)のボストン本部において、本県のバイオベンチャーによるピッチイベントや現地のベンチャーキャピタルとの個別マッチングなどを行い、現地企業との協業、あるいは資本提携、投資を呼び込むことで、福岡バイオエコシステムの形成を推進してまいりたいと考えています。

次は、イノベーションを創出する「拠点」、「人」づくりです。CICがアジアで2か所目となる拠点施設「CIC Fukuoka」を福岡に開設します。これを契機とし、我々としては、「CIC Fukuoka」の中に「グローバル・コネクト・福岡」という拠点を設けたいと考えています。これは、ベンチャーサポートセンターと福岡ABCと呼ばれる福岡アジアビジネスセンターの二つのセンターを統合し、さらに強化しようというものです。令和6年度はその準備を進める期間としています。新たな拠点では、このCICのネットワークを活用することで、海外の投資家や企業と繋がることができます。また、これまで福岡ABC等で支援してきたスタートアップをはじめとする県内企業の資金調達、ビジネスマッチング、海外展開等を、さらに強力に支援を行ってまいります。

それから、国際金融機能形成の促進です。これは13日に、高島市長とともに記者発表させていただきました。国の「金融・資産運用特区」の認定に向けて、県と市共同で提案、申請を行います。この認定を目指すともに、これまで実施してきたアジア、香港、シンガポール、台湾等からのアジアでの誘致活動に加え、先ほど申しました、資産運用業者やFinTech企業が集積するボストンなど北米でのプロモーションを強化し、アジアはもちろんアメリカからの金融関連機能を誘致する取り組みを進めてまいります。

それから農業です。これは新たに園芸農業の先端技術研究開発拠点を整備するものです。後程詳しく説明します。

それからバンコク都との連携ですが、昨年1月に友好提携15周年を迎えました。バンコク都のチャチャート都知事と私との間で、新たに起業家精神を持つ、いわゆる「アントレプレナーシップ人財」の育成に取り組むことを合意し、これを盛り込んだ覚書を新たに締結しました。これに基づき、大学生や社会人の皆さんを相互に派遣し、両地域のスタートアップ企業の訪問やグループワークによるビジネスプランの立案など、いろんな経験をしていただき、未来の経済発展や社会変革に貢献できるような人材を育成していきたいと思っています。

次に、新たな可能性を広げる女性・障がい者・海外人材の活躍です。こういった多様な人材の活躍を支援します。まず、女性はこれからの社会経済を強くしていくという観点からも、女性の活躍は不可欠であり、さらにこの女性の活躍の応援に力を入れていきたいと思っています。

まず一つ、女性の創業支援です。男性もそうですが、女性の皆さんも起業しようとした時にはまずお金が必要です。県の制度融資「新規創業資金」に女性向けメニューを設けます。通常は信用保証協会の保証料が必要ですが、これについては県と信用保証協会が全額補填し、ゼロとします。そして、通常の新規創業資金は年利が1.3パーセントですが、ここをさらに0.1パーセント引き下げます。こういった助成メニューを新設し、起業する女性のチャレンジを応援してまいります。

それから、女性の皆さんは、投資による資金調達に苦労しておられます。投資家あるいは大企業の皆さんが集中している東京に、先ほど申しましたCICの拠点である「CIC Tokyo」があります。福岡県もこの中にオフィスを設けております。この「CIC Tokyo」において、女性の起業家の皆さんに特化したピッチイベントを実施します。

それから3番目は人材育成です。なかなか女性の理系への進出が少ない状況です。特に半導体は、設計分野にもっと女性がいてもいいと思いますが、案外少ない。それからデジタル、自動車、ものづくりといった分野に女性の進出を促していきたいと思います。そのために、自分の将来、進路を決める段階にある女子中学生、高校生の皆さんに向けた「ガールズテックプログラム」を実施します。具体的に申しますと、女性エンジニアとして活躍している方にフォーカスを当てたPR動画を制作し、学校のキャリア教育で活用していただく。それから、県内の技術系企業の施設見学やエンジニアの皆さんとの交流を通して、理工系の仕事に直接触れていただく。こういうものを県内50社の企業の皆さんにご協力をいただいて開催していきたいと思っています。

それから同じく多様な人材の活躍で、障がい者の皆さんの活躍です。障がいのある方の就労分野の拡大を支援していきます。運輸部門は障がい者の皆さんが就職するのはなかなか難しいと言われていました。しかし、ここを何とか切り開きたいということで、西鉄グループ6社のご協力をいただきながら、鉄道車両や路線バスの車内外の清掃業務といったところは障がい者の皆さんも就業が可能と考えていますので、このような業務の切り出しをまず行い、就職前に、ARグラスを使って模擬訓練を行います。これにより、障がい者の皆さんにとっても、なかなか難しいんじゃないか、ちょっと苦手だなというような就職への心理的な障壁を、実際の就職前に取り除きたいと思っています。さらに、このような訓練を基にして、作業ごとに訓練手順のマニュアルを作り、同業種の企業の皆さん等に配ることにより、我々が今回やる西鉄グループ以外の会社でも障がい者の皆さんのこういった分野の就業を広げていきたいと思います。

それから海外人材の活躍支援のため、相談体制を強化したいと思っています。これまで、転職の際の在住資格の変更や新しい職探しはどこに相談したらいいんだろうかと、いろいろな相談の内容はあると思います。この時に出入国在留管理局や労働局、県の窓口等、複数の機関に尋ねなければならず、相談者にとって時間と手間を要してしまうケースがあります。こういったことから今回、県と福岡出入国在留管理局、JETRO福岡、労働局や法務局等と協力し、一体となった「FUKUOKA IS OPENセンター」を開設します。先ほど申したような生活面の相談、就労の相談、在留資格に関する相談など、「FUKUOKA IS OPENセンター」にてワンストップで対応したいと思っています。

 

今、二つの視点の主な事業についてご説明を申し上げました。まだまだほかにも本当はご説明したいですが、時間の関係もありますので、ぜひ資料をご覧いただきたいと思います。

年頭会見で申し上げましたが、私は今年の県政のテーマを「実」としました。今申し上げたような施策を強力に実行する。そしてその成果、実を上げていく。こうして、県民の皆さんの期待に対して誠実に応えていきたい。この気持ちを持って、令和6年度も取り組んでまいりたいと考えています。

 

少し話が戻りますが、園芸農業の先端技術開発研究開発拠点についてです。ご存知のように、福岡県は、野菜や花、ハウスを活用した施設園芸農業がとても盛んです。園芸作物はいろいろあるわけですが、この園芸作物の産出額は、県全体の産出額の6割を占めます。まさに園芸農業は本県農業の中核です。しかし、この園芸農業の国内外の産地間競争は激しくなっています。イチゴもそうです。この競争が激しいと、さらなる本県の園芸農業の競争力の強化を図りたいということで、高品質なものを作る。また、高収量。そして、生産にあたっての人手不足の問題も考えたときに省力化も図らなければいけない。こういった先端技術の研究開発をこれまで以上に強力に進め、そして速やかに現場に普及をしなければいけないと思っています。今、こういった技術開発は、農林業総合試験場、本舎が筑紫野にあり、分場が県内各地に点在しています。ここで行っている研究を集約重点化しようということです。そして、新たな研究機関として、「園芸農業アドバンストテクノロジーセンター」、略して「園芸アドテックセンター」を整備します。

この施設では、研究管理棟に加えてハウスや圃場を整備して、総面積は3ヘクタールぐらいのものを予定しています。場所は県南の筑後市に作りたいと思っています。まず、この研究開発の段階から先進的な取り組みを行っている農業者の皆さんと、県の研究員等も連携をして進める必要があります。筑後地域というのは園芸農業の主産地であり、また地元のJAの園芸販売高が上位です。こういった状況や交通の利便性等を勘案した場合に、筑後市が最適だと考えています。園芸アドテックセンターを整備し、技術開発をしていくことによって、稼げる農業をさらに進めていきたいと思っています。

 

最後に人事案件について説明します。任期満了に伴う教育委員会教育長の任命についてです。新しい教育長には、現在福岡県立美術館長をお務めの寺崎雅巳さんを考えています。

このほかの人事案件として、任期満了に伴う監査委員、収用委員会委員及び予備委員の任命並びに辞職に伴う公安委員会委員の任命です。

私からの発表は以上です。

質疑応答

(西日本新聞)今回の予算は、来年に1期目の任期満了を迎える知事としては思いの入った予算になったと思われますが、今回の予算の位置づけ、知事にとってどういった予算だと言えるのか、そこをお聞きしたいのと、こだわった分野、部分を一つ挙げるとすれば何ですか。

(知事)予算というものは我々の行政を推進していく上での裏づけになるもので、財務的に非常に重要なものです。これは今年のみならず、毎年非常に重要なもので、いずれの年の予算の編成に当たっても、職員の皆さんとともに全力で取り組んでおり、今年も同様です。その時々の社会的な情勢の変化やニーズの多様化など、様々なものに対応する。県民の皆さんからのお声や、県議会を通した御意見もございます。こういったことを踏まえながら政策を考え、そして予算を編成していますので、今年の予算についても、基本的なところは先ほど申し上げたとおりですが、やはり将来の効果を考えたときに、我々の社会をサステナブル社会というものにしていかなければいけない。また、福岡県が発展していくためには、絶え間ないイノベーションというものを起こしていかなければいけない。このサステナブル、イノベーションというこの二つの言葉をキーワードとして、それを主眼に置いて考えたというところです。

 特に一つといっても、これはいずれも重要なので難しいんですけれども、何といってもまず第一に、先ほど色々な施策を御説明しましたが、その前に申し上げたように、やっぱり県民の皆さんの命を守るんだと、健康を守るんだと、そして生活を、なりわいを守るんだと。このことが重要なので。例えばワンヘルスもそれにつながることですし、また、産業の振興も当然それにつながる。雇用の拡大もつながるし、全てが収れんされるわけで、この一つだけ特に重要視したというものは申し上げられないです。

(毎日新聞)冒頭に御説明があった産後ケアの補助制度の創設についてですが、今年度、子育ての基金をつくられて、今年度は病児保育の無償化でしたけれども、来年度はこの産後ケアに焦点を当てたというのは、どういった狙いでしょうか。

(知事)お産の後のお母さん、そして子供さん。母子が安心して、安定して生活をしていただくことが必要です。医学的な問題や精神的な問題もあると思いますが、色々不安定な状況になると、最悪の場合、あまり考えたくはないですが、虐待といったことにつながるケースもありますし、また、お母さん自体が精神的に追い込まれ、産後うつなどの状況になったりと、様々な影響がある場合があります。そういったことを専門家の皆さんの力も活用しながら支援していこうというのが産後ケア事業です。

 今は、我々の家庭を見てもそうですが、昔のように大家族で、おじいちゃん、おばあちゃんがいて、何世代同居で、という御家庭は非常に少ない。やはりそれぞれが核家族化し、また、お仕事もされながら、という状況もあるわけですから、そういう中でこういう制度、事業、サービスをもっと活用していただいて、追い込まれないようにしていただきたいという思いが非常に強いです。

 こういったときに、病児保育もそうですけれども、やはり利用料金と経済負担というものがネックになっているとすれば、ここを何とか軽減していきたいし、また、このことのために国の補助制度である利用料の減免制度を設けているわけです。これをもっともっと市町村の皆さんに活用していただきたい。そのために、我々としては、このプラットフォームと呼べるような制度をつくって、その上で市町村の皆さんに考えていただきたいという思いで、この制度をつくりました。

(朝日新聞)当初予算編成の考え方の3本の柱についてお伺いしたいのですけれども、「1,000億円の人づくり」、「GDP20兆円」、「安全・安心で活力ある社会づくり」というのは、昨年知事が定められた3本柱だったと思いますが、それぞれの達成の状況というか、実際、この1年でどれぐらいできたかというのを改めて振り返っていただきたいのと、それを踏まえて、今回新しい二つの視点がありますが、新年度予算でどのように県政を動かしていくかというのをお伺いしてもいいでしょうか。

(知事)3本柱それぞれの達成というのは、それぞれの事業、またKPIもありますので、今、全てをここでお話するのは難しいんですが、人づくりで申しますと、例えば、アンビシャス運動という事業がありましたが、地域の担い手の方も高齢化して難しいという事情もあり、また、市町村や企業との連携ができていないというのがあって、「未来子どもチャレンジ応援プロジェクト」という事業に切り替え、これを進めています。私もキックオフイベントに出ましたが、もう開会式の時間から親子連れの皆さんで福岡国際センターがいっぱいになって、そして色々な企業やNPOの皆さんが設けていただいたブースに並んでいらっしゃる。早くこれをやりたいと、もう子供たちが目をきらきらさせている。ああいうものを見たときに、やってよかったなと思いましたし、また、参加していただいている団体・企業の皆さんからも、もっともっと色々なことで協力したいというお声もいただいています。このような、社会全体で子供たちの育ちの支援をしていき、世界に羽ばたいていけるような子供を育てていきたいと思っていますし、他にも「Stanford e-Fukuokaプログラム」という取り組みをしていますが、これにもたくさんの応募をいただき、高校生の皆さんが、始まる前と比べて閉校式のときでは、積極性も出て、たった5か月でこんなに変わるものだろうか、成長するものだろうかとびっくりするようなことがあります。

こういうことを見たときに、こういう人づくりの取り組みが非常に重要だし、こういったことを地道にこれからも進めていかなければいけないと思っています。

 それと、産業人材の育成については、先ほど産業の分野で申し上げた半導体分野の圧倒的な人材不足。これについては、黒田教授の御協力もいただいて福岡半導体リスキリングセンターをオープンさせましたが、非常に大きな反響をいただいております。そしてこれはつくる側だけじゃなくて、さっき自動車の話もしましたが、半導体を製品としてどこに使うかという使う側の講座もつくっているわけです。こういう総合的な、つくる側と使う側、そして、基礎から応用までの幅広い講座を用意していますので、ここには全国から色々な受講希望をいただいています。これからもたくさんの方に御利用いただきたいと思っています。そういう状況が生まれているということです。

 それからGDPの20兆円について、今の状況を見ますと、まだ多分コロナの影響もあって、20兆円を超える状況にはなっていない。これをしっかりと、経済を牽引する企業を育てて、未来につながる経済産業を、経済成長を実現していきたいと思っています。

 そういう中で、色々な産業政策を、先ほど申したようなことが主になりますが、企業誘致にしても、今、県には企業を誘致する手持ちの土地がほとんどないということで、うきは市さんや直方市さん、鞍手町さんなどと協力して、産業用地の開発にかかっているわけです。こういうことをさらに進めていって、企業の新たな産業の誘致と、それと我々の地域をこれまでも支えていただいた中小企業の皆さんをしっかりと支えていく。

また、中小企業のスタートアップ。ベンチャーとよく言いますが、中小企業の後継ぎの皆さんたちも、非常に挑戦的な取り組みをされているんですよね。こういうアトツギベンチャーという新しい事業も盛り込んでいます。こういうことにも着目して我々の経済を、今までずっと支えてきていただいた中小企業を大事にして、そしてさらに強くしていって、そして雇用を拡大していくと。こういうサイクルの一歩を昨年度も踏み出していったかなと思っています。ちょっと漠然としていて申し訳ないです。

そういうことで来年度の予算は、先ほど二つの視点というものを申し上げましたが、予算はあくまで予算です。予算をどう組むかというのは非常に重要ですが、本当に一番重要なのは、この予算をどう生かして、どう実績を上げるかですよね。令和6年の1年間、
16か月予算だからもう補正予算はスタートしていますが、我々がこの予算をどう生かし、どう効率的に活用して、県民の皆さんの期待に応えられるか。この実績が重要なので、それで先ほど私も「実」という文字のことを申し上げたんです。予算も確かに重要だと。でも、予算ばかり言っても駄目です。この実績をしっかり上げられるように、我々は取り組んでいきたいと思います。

(西日本新聞)すみません、「予算ばっかり言っても」と言ったそばから申し訳ないですけど、新規事業数が190件から200件に増えたということで、印象としてはすごく前向きな、福岡県が新しいことに取り組もうとしているんだろうなという印象を受けます。この10件、新規事業数が増えたということに対する知事としての思いやメッセージが何かあれば教えていただければと思います。

(知事)先ほど申したように、今、社会情勢も我が国を取り巻く環境も非常に大きく動き、国内の状況も動き、産地間競争というものが非常に激しくなっており、そして、県民の皆様が暮らしていく上での色々なニーズも非常に多様になってきている。こういったことに対して、やはり我々もそういう情報やお声をしっかりと捉えて、できる限りお応えできるように、各部局の皆さんが一生懸命考えていただいた。そうすると、やっぱり今までの事業では対応し切れていないものがあるわけです。それを組み替えたり、あるいは全く新しい事業を生み出したり。先ほども新しい制度の創設というのを申しましたが、こういうことをやった結果が、前年より結果的に多くなったんだと思いますが、200という本数になりました。これは本当に職員の皆さんが、もちろん議会の皆さんを通した声、あるいは市町村の皆さんのお声、こういったことも踏まえて、一生懸命全力で考えた。「予算ばっかり」と言いましたが、やっぱり予算がないと活動できませんから。この予算において、我々がこういうことに取り組みますということを県民の皆様にお約束するものでもあるわけですから、そういうことでこの事業を打ち出させていただいたということです。

 本当に各部局の皆さんとは随分議論しました。そういう中で新しい事業も生み出してきたし、議論する中で生まれた事業もいくつもあります。

やっぱり施策とか事務の検討というのはこういうものかなと思いますね。何か決まりきったシナリオがあるわけではなくて、みんなが知恵を寄せ合って。現場の声を職員の皆さんが聞いてくれて、そしてそれを持ってきてくれて、僕は僕なりの考えがあるし、みんなの知恵を、知識を、そして思いを寄せてつくったのがこの予算であり、その中で200の新規事業が生まれたと思っていただければと思います。

(西日本新聞)FUKUOKA IS OPENセンターについて、地方公共団体でこういった施設は初めてということで、非常に注目度が高いと思うのですが、基本的にあらゆる外国人の相談に対応するということだろうとは思いますが、知事として、例えばどういった人材に福岡県に来てほしいか、また、世界から見てこういった受入れ体制をつくることによって、福岡県がどういうふうに見られたいと思われるのか。その2点を伺います。

(知事)地方自治体としての取り組みでもありますし、これは出入国在留管理局とか、法務局とか、ジェトロとか、そういう国の機関と協力した形でのセンターになります。だからこそワンストップで対応できるようになります。こういう国と県が協力してワンストップの相談支援センターをつくるのは、全国的に初めてです。

 やはり外国の皆さんは本当に色々です。既に福岡で活躍しておられる方も、留学生の方も、技能実習生の方もいらっしゃるし、それから、自分で会社を経営していらっしゃる方もいるし、たくさんの方がいらっしゃる。こういう皆さんが、福岡って住みやすいんだ、働きやすいんだ、色んな相談に親身になって答えてくれると。そういうふうに思ってもらえる、このことがまず重要だと思います。

 どんな人材をとおっしゃいましたが、もちろん様々な分野の方に来ていただきたいということなんですけれども、先ほど申しました金融機能の誘致もTEAM FUKUOKAとして取り組んでいます。金融機能と言ったってロボットが来るわけではない。人ですよね、外国の方。こういう皆さんが来るに当たって必要なことというのは、特に高度人材の皆さんは、日本人みたいに単身赴任ってほとんどなく、大体御家族を連れていらっしゃる。そうすると、やっぱり生活環境。もちろん医療は当然のこととして、子供さんの教育ですね。それから奥さんも一緒にいらっしゃれば、奥さんが生活していく上での色々な状況。奥さんも働きたいという御希望もある。そういうとき「どこか相談に乗ってくれるんだろうか」と、色々な御相談があるわけです。こういうことにきちんと我々の地域は対応するということをお示しできないと、やっぱり海外の企業にとっても安心してスタッフを福岡に送り込むことができませんし、また、福岡で新しいことを始めようという人にならないと思いますね。そういう意味で、こういうセンターを我々は充実していく必要があると思いますし、それをちゃんと対応できる様々なインフラも今後必要になってくると思います。

(毎日新聞)今回の施策を全体的に見ますと、人手不足や人口減少を背景として、多様な働き手の確保、女性だったり、障がいのある人だったり、外国人だったり。あと人材の育成というところにかなり力点を置いておられるのかなと感じたんですけれども、そういった人材の確保の部分で、今回の施策を組むに当たって大切にした視点というのは、知事にとってどういった点だったかというのを。全体的な話で恐縮ですが。

(知事)冒頭に、人手不足という問題が今非常に大きな課題としてあると申しました。だから当然、労働力を確保していくということは産業、経済、地域にとってもちろん必要なのですが、ただ、今の御質問の中であった女性とか外国人材、もちろんそういう観点もありますけれども、やはりそれぞれの皆さんがそれぞれの能力とか思いとか希望とか、そういうものを生かして、障がいのある皆さんもそうです、この地域で、この福岡でしっかりと輝いて活躍していただく。このことが私としては一番思いにありました。その結果、たくさんの多様な、有能な人材の皆さんが集まってくれる。またそれぞれ、今まで埋もれていた能力が掘り起こされて仕事ができるようになるとか、そういうことはあると思いますけど、単に労働力を補うとなどいう観点からの思いは、課題としてはありますけど、自分としては小さかった。むしろ、本当に女性の皆さんが活躍する分野が、もっと幅広く、もっとあるはずです。それを僕たちはもっとチャンスを広げなくちゃいけないし、なぜこの分野は女性進出が少ないのか、あるいは女性が活躍するというのはどういうことなのかとか、そういうことをもっと女性の皆さん同士で話もしてもらいたいし、そんな思いが非常に強かったですね。

(読売新聞)半導体についてなんですけれども、知事が先ほどおっしゃったように、県内はやはり土地がない、もう土地が空いていないという……。

(知事)そうですね。半導体の前工程の工場の誘致に当たっては、やはり水の問題も、もう皆さん御存じのように、熊本もそうですけど、伏流水を使う。非常に純水に近い、非常に良質な水を大量に必要とするということがございます。だから、土地だけでは駄目で、やっぱり水問題がある。そこが福岡も非常に難しいところがありまして、ダムが造られて、福岡市も今はあまり水不足と言われないけれども、ついこの間まで水不足、水不足と言われていたわけですよ。筑後川からも導水をする。しかし、一方で、筑後川の水は有明の海を守る水でもある。これをむやみに取るわけにもいかない。こういう色々な条件がありますから、非常に産業の誘致、工場の誘致というのは、さらに言えば電力の問題もあるわけです。こういう条件が整った土地というものを我々は用意していかなければいけない。

(読売新聞)そうしますと、TSMCが第2工場を熊本に造るという大きなニュースが入ってきているのですが、こういう流れを福岡県としてどうやって最大限生かしていくかというのは、多分、予算の考え方じゃないかなと思うんですけれども、例えば最新の研究を支援するだとか、あるいは、今400社ある企業をどう支援していくかというところがやっぱり福岡県としては主眼になっていくということですか。

(知事)そうですね。まず、我々の地域の優れた技術をお持ちの半導体関連の企業、この皆さんの人材も確保し、また、最先端の研究開発の支援をしていく。このことによってしっかりと育てていきたいと思います。

 それと、TSMCさんからの受注も実際非常に増えてくると思います。そういうことにも対応していく体制を各企業はつくっていかなければいけないと思いますので、そういうところも支援をしていきたいと思います。

(読売新聞)産後ケアのところですが、昨年度の予算で病児保育を無料化した結果、希望者がすごく増えて予約が取りにくいという問題が発生しました。産後ケアもそんなにまだ施設が多いわけではないのではないかということもあって、もちろん利用料負担を減らすこともそうですけど、その受皿を増やすということも必要じゃないかと思うんですが。

(知事)病児保育はそうだったですね。以前を思い出すと、かねてから、病児保育の施設も身近なところで要りますよね、だからやっていただけませんかという働きかけを診療所や保育所などにやってきたということがあります。ただ、やっぱり経営もあるわけですよ。お客さんが来るか来ないかも分からないし、非常に少ない一方で、施設はともかく、やっぱり人を置かなければいけないということで、なかなか数が増えなかった。しかし、無償化することで経済負担が軽減されたので、潜在的な需要が掘り起こされた。このことによって「じゃあやってみようか」という施設も出てきていますので、こういったところがそういう病児保育サービスをやっていただけるような制度をつくったと。

 産後ケアも、今おっしゃったように、実際、まだ国の補助制度を活用している市町村が1桁台で非常に少ないんですね。だから、今回の我々のプラットフォームを活用していただく市町村がどれだけ出てくるか。また、それによって今おっしゃったような状況も想定されるのであれば、またこのことに対してしっかりと市町村とも連携して対応していく必要があると思っています。

(西日本新聞)半導体の話に戻るんですが、TSMCが熊本で大規模な工場を造った結果、やはり福岡と熊本は近いし、人材の奪い合いとかにもなってくると思うんですけど、今回の予算にあるガールズテックプログラムとか八女工業高校への燃料電池自動車の配備による人材育成というのは、やはり県内の優秀な人材の県外への流出を防ぎたいという狙いもあったりするんですか。

(知事)もちろん我々の地域で若い皆さんに働いていただきたい、定着をしていただきたいという思いはありますけれども、基本的にその分野の人材はなかなか、特に女性の場合その分野に進む方が少ないというのがずっとありまして、中学生、高校生の段階から、理系、また、ものづくりの分野に対する興味・関心を持っていただきたい、これが基本です。その上で、「よし、ここで勉強しよう」となったら、福岡県には理系の大学はいっぱいあるわけです。九大、九工大、久留米工業大学等々あります。そういったところで勉強していただき、それが今おっしゃったように、まさに地元での就職に結びついてくれれば、それは我々としては大変うれしいことだと思います。

 

(RKB)以前の会見でもお話しいただいたと思うんですが、久留米のボナックについて、破産申請が先日なされたということですけど、改めて、事業を共同で進めてきた県としての受け止めを伺えればと思います。

(知事)ボナック社とは以前から、核酸の技術、核酸医薬を用いた新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発について、県もボナックに協力して開発に取り組んだところです。しかし、残念ながら、国のAMEDの評価において、動物試験において効果が見られないということで、この研究開発の事業が終了したわけです。

 ボナック社は核酸医薬の分野のテクノロジー、技術は優れたものを持っておられまして、これをコロナの治療薬に用いようと。しかも、副作用の少ない薬をつくるということで、非常に革新的な取り組みであると思うわけですけれども、残念ながらその目的が達せなかったというのは、本当に残念なことであると思っています。

 創薬はもちろんですが、スタートアップ、あるいはベンチャーは、非常に挑戦的な取り組みをされるわけです。この中で、やはり全てが成功には結びつかない。先般ボストンに行ったとき、MITでビル・オーレット教授のお話を聞きましたが、MITも毎年900件のスタートアップが出てくる。しかし、そのうち600件、3分の2は失敗であると。しかし、この失敗の中から学ぶ、そして失敗の中から立ち上がっていくということ、これを認めなければいけないし、失敗の中から学んで、また立ち上がって成功を目指していくことが重要である。それがスタートアップなんだというお話を伺いました。優れた技術をボナックは持たれているわけですから、またそういう技術を生かして、新たなチャレンジに取り組んでいただければと思います。

 

(西日本新聞)教育長の人事ですが、今回、教育行政のトップを替えることによる波及効果とか、狙いとか、何で寺崎さんを選ばれたのか、人選の理由を知事の言葉でお願いできたらと。

(知事)吉田教育長から後進に道を譲りたいというお申出がありまして、我々も後任の方を、吉田さんの御意見もお伺いしながら考えました。

 非常に吉田さんもよくやっていただいたので、その成果をぜひ引き継ぎ、またさらに、今回の予算の中でも様々、不登校問題も申し上げましたけれども、やはり学校現場、教育現場、また、スポーツの地域移行の問題もあり、様々な課題があります。このことは、やっぱり子供たちをど真ん中に置いて解決を図っていく必要があると思います。

 そういったことを考えたときに、寺崎さんは、まず中学校教員として20年間の学校現場での御経験をお持ちです。その上で、県教育委員会の事務局に入られて、体育スポーツ健康課長、それから、教育監や副教育長を御経験されており、そういったことを見ても、教育行政というか、教育現場に非常に携わってきて貢献をしていらっしゃるという実績をお持ちであると。そしてまた人物も、非常に温厚篤実な方であり、まさにイノベーションというか、色々なことについても非常にポジティブな方であると私は思っています。また、学校関係者の方からの信頼も厚いとお聞きしておりまして、教育長として適任の方であると判断をしたところであります。

(西日本新聞)公立の教諭を経て県の教育長、公立中学校の教諭ということは、教諭から県の教育長になるというのは珍しいんですか。

(人事課)全国ではどのような状況であるかは把握しておりませんが、県の中では非常に珍しいケースです。

(西日本新聞)県内では珍しいということですが、初と言っていいんですか。

(知事)ちょっとそれは調べて、教育委員会にもちょっと聞いてみます。

 

(人事課)教員出身の教育長は、過去に1例だけ実績があります。寺崎氏が新教育長として任命されれば、2例目になります。

 

(終了)