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この会見録は発言をそのままではなく、文章とする際読みやすいように整理したものです。
この知事記者会見録の模様は、 ふくおかインターネットテレビ で動画配信しています。
(知事)皆様、こんにちは。臨時の記者会見ということで、報道各社にはお集まりをいただきまして誠にありがとうございます。
大きなうれしいニュースが入ってまいりました。トヨタ自動車と日産自動車が電池工場を福岡県に新設します。
トヨタ自動車株式会社とプライムアースEVエナジー株式会社、このプライムアースのほうは、10月1日からトヨタバッテリー株式会社になるとお伺いしています。本県が造成をしている苅田港の新松山臨海工業団地の第2期分譲地、平米数にして約27万7,000平方メートルの全敷地をトヨタ自動車が取得し、プライムアースEVエナジーが工場を建設し生産を行うという計画です。
この新松山の臨海工業団地は、苅田港のまさに中にあるわけです。それから、北九州空港、東九州自動車道の苅田北九州空港インターチェンジに本当に近く、まさに陸海空に直結した交通の結節点です。さらに、巨大地震による津波を想定して、工業用地に影響がない護岸の高さを備えており、災害に対する事業継続性も備えております。
トヨタ自動車からは、このような交通の利便性の高さ、またBCPの観点及び近隣にトヨタ自動車九州株式会社の苅田工場と小倉工場があるためトヨタグループの既存工場へのアクセスがよいといった理由から、この団地がトヨタグループの電池生産拠点として適切であるとの評価をいただいたものです。
新松山臨海工業団地では、赤のエリアが今回分譲したところです。この北側の黄色の部分が第3期の分譲地でございまして、面積的にこの第2期と同規模になります。この用地整備を進めています。我々は、新松山の臨海工業団地が持つ利便性や安全性、こういった魅力、強みを生かし、さらなる企業誘致を進めてまいります。
では、このトヨタの九州新工場で何をつくるのかということです。次世代電池のパフォーマンス版とされるものを生産します。
EVは1回の充電で走れる距離が短いというのが弱みだと言われています。現行の電池と比べて、航続距離やコスト、それから充電に要する時間の面でパフォーマンス性が高い次世代電池を、九州新工場では2028年の生産開始を予定されています。このパフォーマンス性能の高い次世代電池の生産拠点として我が福岡の地が選ばれたことを大変うれしく思っています。
次に、日産自動車です。日産自動車は、2028年に軽電気自動車に搭載する予定のLFPバッテリーを開発・量産する計画を明らかにされました。このLFPバッテリーは、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーであり、いわゆる普通のバッテリーはコバルトやニッケルといったレアメタルを使っていますが、このLFPバッテリーはこういったレアメタルを使っていません。この新しいバッテリーを開発・量産するための新工場を福岡県内に建設する予定とされています。具体的な立地場所は、今、日産自動車で土地の取得に向けた協議を行っており、現時点で私たちから公表できる情報はございません。誠に申し訳ございませんが、御理解ください。
今、トヨタと日産の今回の電池工場の概要について説明しました。この絵には三つのグリーンの図、連環が描いてあります。「自動車」「半導体」「水素」の分野において、一昨年から「グリーン」をキーワードとした「グリーン成長プロジェクト」を推進しています。
「先進モビリティ」「グリーンデバイス」「グリーン水素」の先進拠点となることを目指しており、経済と環境の好循環を実現に向けた取り組みを進めています。普通、経済と環境はぶつかるというイメージがありますが、そうではなく、経済と環境の好循環をつくっていこうということです。こういう取り組みを進めていると御理解ください。
この中で、まず半導体、デバイスにおいて、本県はグリーンデバイス開発・生産拠点構想を打ち出しています。カーボンニュートラル時代の製造業を支える半導体デバイスでありますグリーンデバイスの一大開発・生産拠点の構築を目指しています。
「強み」という項に書いてあるように、我が福岡県には、世界トップレベルのパワー半導体等を製造する企業を含む約400社の半導体関連企業が立地しています。人材育成では半導体リスキリングセンターを昨年8月にオープンし、目標は1年で5,000人と置いていましたが、既にeラーニングも含め、7,000名に近い方が受講されています。さらに三次元半導体研究センターも糸島に持っています。半導体の微細化競争はすさまじいものがあり、極限に来つつあるわけです。そうなると、あとは積み重ねるしかない。単純に言うと三次元、立体化するしかありません。この三次元の半導体をつくるというのは、非常に難しく、設計、試作、そして評価・解析、これを一貫して行える公的なセンターを日本で唯一、我が福岡県は持っています。これも既に延べ260社以上の企業が4,000件ぐらいの研究開発をされた実績を持っています。また、我が福岡県内には、九州大学、九州工業大学等をはじめ、理工系の大学や高専が多く立地しており、高度な技術系人材を育成する素地があります。このような福岡県独自の強みを持っています。
そして、九州全体の動きを見ますと、前工程においての世界最大手のTSMCが熊本県の菊陽町に進出されました。そして、先般、報道されましたが、北九州市の若松区の学術研究都市、この16ヘクタールの土地について、台湾、高雄にある後工程世界最大手のASEが土地の売買の仮契約を結ばれました。これについて、今、ASEのプロジェクトを確実なものにしていこうということで、我々も北九州市と協力しながら取り組みを進めているところです。また、このASEについては、具体的に発表できる段階になったところで皆様方にも発表させていただきたいと思っています。
こういった前工程のTSMC、後工程のASE、両者が我が九州に進出をしますと、まさに製品としての半導体が完成します。この新生・シリコンアイランド九州の実現に大きな一歩となります。
今、半導体に話が行きましたが、自動車産業は今、脱炭素化の流れの中にあり、またCASEとお聞きになったことがあると思いますが、自動運転等を含む技術革新のことで、100年に一度の大変革期の中にあります。この自動車産業の中で、EVや水素燃料電池車、FCVなどの電動車、あるいは自動運転、こういった技術が進んでいきますと、半導体が、今のエンジン車に搭載されるものと比べても、飛躍的にたくさん必要になるわけです。つまり、TSMC、それからASE、いずれにしても大きなお得意様がこの北部九州、福岡にあるということです。
半導体はEVの「筋肉」と「頭脳」と「目」を担います。EVの省エネ性能を左右する「筋肉」、これはパワー半導体を生産する三菱電機やロームアポロです。それから車載コンピューターの「頭脳」となるロジック半導体を生産するTSMCや後工程を担うASEができるわけです。そして、自動運転となりますと「目」が要ります。この画像センサーを生産するのは、ソニーセミコンダクタなどのソニーグループ。福岡に設計拠点、熊本に生産拠点があります。こういった半導体企業が集積しています。つまり、自動車を、これからの先進モビリティーを造っていくためには、こういう高度な性能を持った半導体が不可欠であるということです。
そして、次に、蓄電池は何なのかというと、EVの「心臓」、つまり、エネルギーです。電気という血液を流し続ける心臓です。
トヨタ自動車、日産自動車の蓄電池工場が新たに福岡県に立地することによって、EVやFCVの「筋肉」や「頭脳」や「目」、そして心臓を担う世界有数のサプライチェーンが誕生することとなります。
私は、従来の生産台数というものを増やしていこうという考え方から、脱炭素化やCASEへの対応、こういったものに重点を置く、グリーンをキーワードとした自動車産業グリーン先進拠点プロジェクトを令和4年に打ち出させていただきました。トヨタと日産のバッテリー工場が本県に立地すれば、経済安全保障上の意義に加え、地元企業の皆様の取引拡大や新規参入、あるいは関連企業のさらなる福岡県への集積が図られると期待されます。まさに自動車産業グリーン推進拠点プロジェクトの大きな前進であると考えられます。
我々の地域には四つのカーメーカーが立地しています。また、自動車関係は600を超えるサプライヤーが福岡県内に集積しています。基幹産業として本県の経済を支えてきた自動車産業を、世界に選ばれ、未来に向けて成長を続ける先進モビリティーの一大生産拠点へと前進させたいと思っています。このためにも、トヨタ自動車グループと日産自動車の新工場の円滑な建設と操業のスタートに向け、しっかりとサポートしてまいる考えです。
私からは以上です。
(毎日新聞)今、知事から企業の取引拡大、企業誘致への期待もありましたが、この日産とトヨタの工場の新設によって、税収や雇用拡大も期待されるかと思います。その辺についてお願いできますか。
(知事)当然、立地する自治体には、固定資産税が入ります。また、我々のところは、トヨタ、日産のみならず、関連企業の企業活動が活性化することによって、法人事業税、法人県民税といった県税の主力である法人2税の増収が期待できます。さらに雇用も結局は税収につながるわけです。今のところまだ雇用の予定人数等は発表されていませんが、かなり大きな工場になり、数千人規模の雇用が期待できると思います。新たな雇用が創出され、若い人たちが、働く場所ができることで、福岡の各地域に住み、そして、子どもを産み・育てていくことができる、そういう地域ができてくると思います。そしてまた、当然、所得の面でも向上が図られ、こういった面では個人県民税に反映されてくると思います。
(毎日新聞)今、知事から、雇用の規模はまだ分からないというお話がありましたが、工場の規模や投資額、その辺も入ってはいないのでしょうか。
(企業立地課)経済産業省から、本日、補助金の採択結果が公表されています。そこに記載されている数字としまして、例えば、トヨタグループについては、総投資額が2,450億円と記載されていますが、これは福岡に限ったものではなく、この内訳は、詳細が明らかになっていないという状況です。それから、日産自動車に関しては、総事業費としては1,533億円と経済産業省から公表されていますが、この部分についても、そのうちのどのぐらいが福岡県なのかということは明らかになっていない状況です。
(毎日新聞)数百から数千億円の規模が投資されるということですが、日産は時期がまだ明らかになっていませんが、2028年までに軽電気自動車に搭載する予定ということは、それまでにできるということなのでしょうか。
(知事)そうですね。両社とも、2028年中の供給開始ということを目指して進められるとお伺いしています。
(毎日新聞)それまでに工場ができるということですね。
(企業立地課)トヨタはそういった方向で、日産は、まだそこも明らかになっていないというようなところです。
(読売新聞)国の補助金が今日決定したということですが、県からも何か立地交付金などを決定していますか。
(知事)はい。これは去年、県議会にもお諮りし、御同意をいただいていますが、企業誘致において、立地交付金というのが非常に大きな魅力を発揮します。こういったことから今年の4月に立地交付金制度の見直しを行い、先進的な、我々が指定する特例産業については、これまで限度額が10億円でしたが、最大50億円までの立地交付金をお渡しできる制度にしています。今回も、今まさに投資額についてお尋ねがありましたが、そういう設備投資の金額等が明らかになってきたら、我々もそれに応じて、立地交付金について業者に提供をすることになっています。
(西日本新聞)日産は協議中ということで、恐らく民間地なんだろうというふうに思いますが、これに対して県が後押しというか、何か県の役割みたいなものが日産に関してはあるんでしょうか。
(知事)今、色々日産で土地や価格、工場を建てるということであれば、その他の条件についても確認をされていると承知しています。我々も協力する点があればもちろん協力してまいりますし、色々なお尋ねがあっているところはこれまでもお答えはしてきたところですが、今の段階では、日産で独自に交渉を行われていると承知しています。
(西日本新聞)トヨタの新松山臨海工業団地ですが、これはそもそも造成した段階からトヨタありきというふうに県は進めてこられたのか、過程の中でトヨタの名前が上がってきたのでしょうか。
(知事)最初からトヨタありきでは全くありません。これは港湾事業のため、県土整備部の港湾課の所管になりますが、港湾課で公募し、その中でトヨタに手を挙げていただいたということです。
(西日本新聞)改めて、今回、自動車の国内ツートップが県内に新工場をということで、企業誘致のインパクトの部分ですが、知事にとって、我々が分かりやすくイメージすると、どのくらいのインパクトなのかというのは。いつ以来とか、何か比較できるようなものがあれば。大きいとは分かりますが、その辺を何か端的に言っていただけると。
(知事)本県の自動車産業の始まりは、日産自動車を亀井光知事のときに苅田に誘致されたことです。そこからトヨタ、ダイハツも自工場をお造りになり、北部九州が自動車の一大拠点になりました。今、我々のところは150万台を超える154万台という生産能力を持っています。これが今、大きな転換点に来ているわけです。脱炭素化、CASEという、100年に一度といわれる、自動車という産業自体も変換点に来ている。ここで、今回このような、まさに先進モビリティー産業の拠点となるための一歩が記されるということは、新たな自動車産業の幕開けになる、新時代の幕開けになると考えており、先輩が築かれてきた自動車産業というものの基盤がまた新しい時代に突入にしていくと思います。そういう意味では非常に大きなインパクトを持っていると捉えています。
(読売新聞)トヨタだけならまだしも、日産もということで、EV電池工場が福岡県になぜ集積を選ばれたかというと、結局それは、EV電池は経済安全保障的にも国内で造ったほうがいいということで、完成工場がある福岡に造りたいという企業側の狙いみたいなのがあったと、今回2社ともそれがあったということでしょうか。
(知事)詳しく両社からなぜということについて今の段階でお伺いはしていませんが、自動車は一つの製品です。モビリティーを造るということです。それで、先ほど半導体の話もしましたが、この半導体が国内において、安心して確保できる体制がこの九州においてつくられたことが一つ大きな要素であると思います。
それとまた、我々のところは既にエンジン車においてそういう製造能力を持っており、ラインがたくさんつくられています。そして、それに携わってこられた職員の皆様や、ものづくりに携わってこられた方々がたくさんいらっしゃいます。これが今からEVやFCVに転換していくため、我々にはものづくりの基盤があるということです。これが大きな要素だったのではないかと思います。
(読売新聞)今おっしゃった、もともと基盤がある、それが転換していくということは、今までのサプライヤーさんが作ってきた従来のエンジンとか、そういうラインが要らなくなるというか、思いっきりEV、脱炭素に転換するというところで、従来のサプライヤーさんへの支援というのも大事になるのではないかと思いますが。
(知事)おっしゃるとおりです。これは私も知事になって以降すぐ取りかかっていますが、EVシフトというものをにらんで、電動車分野、電動化分野、こちらのほうにシフトしていただけるよう、今までも九州経済産業局と一緒に取り組んでまいりました。出前電動化道場や、セミナーの開催、展示会への参加の支援、それから電動化に要する部品の製品開発の支援、色々な取り組みを強化してきました。今回、徐々にEV等にシフトしていくとなると、やはり影響を受ける会社があります。調査したところ、県内には自動車関連企業が約600社あります。この中で、エンジン関連や吸排気系の部品を製造している企業は約80社であり、それぞれの会社の規模、考え方、ニーズも異なります。こういった企業に対してきめ細かく、電動化支援コーディネーター、CASEのプロモーター、自動車産業のアドバイザー、こういった皆様に行っていただいて、そして新しい電動車、先進モビリティーに必要となる部品の製造業に新たに参入していただく、そしてまた取引を拡大していただく、これを個別丁寧に支援してまいりたいと思います。
(毎日新聞)今、知事が企業への支援ということをおっしゃいましたが、冒頭、工場が稼働されるまで、円滑に工場が新設されるように県としてもサポートしていきたいというお話があったかと思いますが、今後、円滑に進むために課題になることはどういうことがほかにあるとお考えでしょうか。
(知事)想定されるのは、色々な規制です。消防法もありますし、許認可の手続があります。こういったことも円滑に進むように手助けやアドバイスをさせていただきます。また、工業用水や特別高圧電力の問題も必要であれば、整備について支援をさせていただきます。それから、先ほどから人材の話もしています。かなりの人材を必要とするため、雇用の確保についても県が支援をする必要が出てくると考えています。そのような課題について、県がワンストップの窓口として役割を果たしてまいりたいと思っています。
(西日本新聞)今までつくったことがない蓄電池、九州においては電池工場ができるわけですが、そこにどれだけ地場が参入できるかというのが、知事が先ほどおっしゃっているとおり大事なことだと思います。例えば、エンジンから電気自動車へシフトするのであれば、市場規模というのは広がるのでしょうか。そのあたり、県はどのように見ておられるんでしょうか。
(知事)一つには、自動車は耐久年数があり、買換えを図っていくため継続的に需要が出てきます。それから、両社とも、国内のみならず世界をマーケットとした戦略を持っていると思いますので、そういった中で、優れた製品、先進モビリティーを開発して、世界の競争の中で闘い、勝っていこうという戦略を持っていると思います。そういう意味では市場は広がっていくと考えているところです。
(西日本新聞)カーメーカーの市場は広がっていく、競争に勝てると思いますが、私がお聞きしたいのは、今、ほとんどハイブリッド車やエンジン車に対して部品を供給している地場企業たちが、EVシフトしたときに、生産台数が増えず、ただ内容として質的な転換だけするのであれば、市場規模はそこまで大きくなるのか、ならないのか。EVというのは部品点数が3分の1になるという話もあるので、今の地場の裾野というところの市場規模というのは縮まっていくのか、それとも広がっていくのか、その辺りはどうなんでしょうか。
(知事)サプライヤーが、我々のところには600社あり、直接的にエンジンや吸排気系の部品を供給しているのは、このうち80社です。それ以外は、EVになっても変わってこないボディーや色々なそのほかのところです。今、エンジン関係で仕事をされているところはまず、新しい分野に入っていただき、新たな製品の開発の支援、新しい商売を切り開いていただけるように、我々は支援してまいりたいと思います。それがまた、トヨタ、日産の両社が造られるすばらしい車、モビリティーを生み出していく力になっていくと思います。そうすると、先ほどおっしゃったような国際競争、世界の中での競争にも打ち勝てるような非常に優れたモビリティーができると思います。単にトヨタ本社、日産本社だけの力ではなく、やはり一体となった力が必要です。
(西日本新聞)そうすると地場にとっては、ビジネスチャンスというよりも、この変革をカーメーカーと一緒に地場が支えて乗り切っていかなければならないみたいな、一つの大きな波が来ているということでしょうか。
(知事)そのような一種の危機感を持って臨むということも必要であると私たちはかねてから申し上げております。しかし、今回のこの動きは、やはり大きなビジネスチャンスであると捉えるべきだと思います。もし、先進モビリティーの製造拠点に福岡県が選ばれなければ、今おっしゃったように、結局自動車の製造は衰退していくわけですが、そうではないと。この福岡で新しい車を、新しいモビリティーを造っていくということを日産にも、トヨタにもおっしゃっていただいたことは、やはり大きなビジネスチャンスであり、さらにこのビジネスチャンスを生かして事業を拡大していく、このことを我々も中小企業の皆様と共に力を合わせて進めてまいりたいと思います。
(朝日新聞)この数年ずっと北部九州でのEVシフトやCASEへの対応というのに取り組まれてこられた中で、やっと県内にEV電池自体を造る工場ができるというところで、今考えていらっしゃる次の課題や、これから次に取り組んでいかなければいけないと考えていらっしゃること、EV電池に限らず、大きなところで何か考えていらっしゃることがあればお伺いします。
(知事)先ほど三つのグリーンを示しました。このようなものづくりには電気や熱、エネルギーが要ります。これをどうするかということです。そして石炭火力は、脱炭素化の2050年カーボンニュートラルの流れの中で限界が見えています。では、それを今からどうしていくのかということになったときに、我々は新エネルギーとしての水素の大規模供給拠点を福岡県内に造ろうと取り組んでいます。非常にエネルギーの拠点が至近な場所にできるということも産業の面においては非常に大きいと思います。結局、八幡製鐵所ができたのは、地震がないから選ばれたというのもありますが、やはり石炭があったわけです。石炭があり、コークスの熱で日本の重工業というのはつくられてきました。今からの製鉄は、既に日本製鉄も電気炉を発表されたように、今からは石炭を燃やしてというのは難しく、石炭を燃やすにしても、非常に効率的にCO2を極力減らしていく努力を電力会社は求められます。こういう中で水素や水素のキャリアとしてのアンモニアの果たす役割というのは非常に大きいため、我々はこの水素の拠点というものを今進めています。
(読売新聞)今年7月に始まったEVバッテリーのリサイクルについての話は、たしか日産等が入っていらっしゃったと思いますが、それについても非常に追い風になると思いますがいかがでしょうか。
(知事)車載用バッテリーのリサイクル、リユースのシステムをつくるということは非常に大きなインパクトをトヨタ、日産、両社から受け止められたと承知しています。地方自治体がこのような一つのエコシステムを構築する取り組みについて大変驚かれたと同時に期待をされました。やはり今からは、バッテリーがどんどん出てくる一方でごみも出てきます。ごみがごみのままでいいのかということをしっかりと検査してリユースする、あるいはその中のレアメタルを取り出してリサイクルする、この仕組みのモデルをつくろうという福岡県の取り組みについては、トヨタ、日産からも高く評価をされ、参画いただいています。そして今、このプロジェクトには数十社が参画を表明されており、非常に大きな意味のある取り組みになっています。そのこともこの立地に当たって勘案をしていただいた一つの要素であったかもしれません。
(読売新聞)EV電池を生産して、その後にまた資源循環をしていくという未来というか、先まで見据えたことを考えていける可能性が広がったということでしょうか。
(知事)そうですね。先ほどの日産は、軽自動車用の電池にレアメタルを使わないものを開発していますが、今の大勢はレアメタルを必要とします。このレアメタルは結局、廃バッテリーが海外に出て、また海外から高い値段で、今、日本は輸入しているという状態にあります。これを我々のところで循環させることができれば、非常にコストの面も抑えられるわけです。
(日本経済新聞)率直な感想を伺いたいんですが、トヨタと日産が来ますよというのを伺ったとき、県知事はどんなお気持ちでしたか。ガッツポーズな感じでしょうか。
(知事)軽く言ってはいけませんが、まさに「よっしゃ」という感じでした。そして大歓迎をしています。先ほどから各社熱心に聞いていただいているように色々な切り口、角度、まだこれからの課題ももちろんあります。そういう中ではありますが、我々が進めている大きな三つのグリーンのプロジェクト、この連環というものを考えたときにも、グリーン成長プロジェクト全体の大きな前進になり、わけても、自動車のグリーン先進拠点プロジェクトの形が見えてきたと思いますので、大変歓迎しています。
(終了)