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平成21年度県内市町村普通会計決算(速報)
平成22年9月28日に報道発表した資料です。
1 決算規模
県内市町村(政令市を除く58市町村)の平成21年度普通会計決算は、歳入総額が 1兆372億円、歳出総額1兆36億円となり、前年度と比較して、歳入が821億円(8.6%)、歳出が832億円(9.0%)増加した。
歳入については、地方交付税及び臨時財政対策債が増加したことに加え、平成21年度国の補正予算等により国庫支出金が増加したこと、歳出については、人件費等が減少した一方で、補助費等、普通建設事業費及び扶助費が増加したことが、歳入・歳出の増加の主な原因となっている。
2 決算収支
(1)平成21年度における歳入歳出差引額(形式収支)は、336億円の黒字である。
(2)上記の形式収支から、明許繰越等のため翌年度に繰り越すべき財源を控除した実質収支は、245億円の黒字である。
(3) 実質収支が赤字の市町村は、大牟田市のみである。
3 歳入の状況
平成21年度の歳入総額は1兆372億円で、地方税(△101億円、△3.4%)、地方譲与税(△7億円、△6.4%)等が減少したものの、国庫支出金(495億円、38.8%)、地方交付税(85億円、3.5%)、臨時財政対策債(137億円、55.2%)が増加したこと等により、前年度 (9,552億円)と比較して、821億円(8.6%)増加した。
なお、使途が特定されず、どの経費にも自由に充てることができる一般財源は前年度と比較して、24億円(△0.4%)減少し、歳入全体に占める構成比も55.8%となり、前年度の60.8%から5.0ポイント低下した。
主な歳入の状況は次のとおり。
(1) 地方税は、世界同時不況の影響等により市町村民税の法人税割が△63億円(△35.8%)の減、所得割が△19億円(△1.8%)の減となったほか、固定資産税の家屋分が△19億円(△3.0%)の減となったこと等により、前年度と比較して101億円(△3.4%)減少した。
(2) 各種交付金は、地方消費税交付金が14億円(6.4%)の増となった一方、自動車取得税の減税等により自動車取得税交付金が△17億円(△31.8%)の減となったこと等により、前年度と比較して△5億円(△1.6%)減少した。
(3) 地方特例交付金等は、自動車取得税交付金の減収の一部を補てんすることとなったことにより減収補てん特例交付金が7億円(52.5%)の増となったこと等により、前年度と比較して5億円(13.2%)増加した。
(4) 地方交付税は、地域雇用創出推進費の創設等により普通交付税が79億円(3.8%)の増、特別交付税が6億円(1.8%)の増となったことにより、前年度と比較して85億円(3.5%)増加した。
(5)国庫支出金については、平成20年度及び平成21年度国の補正予算による定額給付金事業、地域活性化臨時交付金事業等により、また、生活保護費負担金等の増等により、前年度と比較して495億円(38.8%)増加した。
(6) 繰入金については、久留米市のガス事業清算特別会計からの43億円の繰り入れ等により、前年度と比較して31億円(14.2%)増加した。
(7) 地方債については、合併特例事業債が△45億円(△23.4%)の減となった一方、臨時財政対策債が137億円(55.2%)増加したこと等により、前年度と比較して101億円(14.1%)増加した。
4 歳出の状況
平成21年度の歳出決算額は1兆36億円で、人件費(△33億円、△2.0%)、公債費(△4億円、△0.3%)が減少したものの、補助費等(302億円、27.7%)、普通建設事業費(226億円、21.5%)、扶助費(94億円、5.5%)が増加したこと等により、前年度(9,204億円)と比較して、832億円(9.0%)増加した。
性質別に見た歳出の状況は次のとおりである。
(1) 義務的経費(人件費、扶助費及び公債費)
人件費及び公債費が減となったものの、扶助費が増となったことにより、前年度と比較して58億円(1.3%)増加した。
人件費は、各団体において策定された集中改革プランに基づく退職者の不補充等による職員数の削減等により△33億円(△2.0%)減少した。
扶助費は、生活保護費や障害者自立支援給付等に係る社会福祉費の増等によって、94億円(5.5%)増加した。
公債費は、地域総合整備事業債等に係る元利償還金が減となったこと等により△4億円(△0.3%)減少した。
(2) 投資的経費(普通建設事業費、失業対策事業費及び災害復旧事業費)
各事業費とも増加したことにより、前年度と比較して、289億円(26.6%)増加した。
普通建設事業費は、緑地保全事業、遺跡整備事業等のほか、大規模な校舎改築等工事の実施等により補助事業費が108億円(26.2%)、防災行政無線整備事業、交流体験広場整備事業、物産館整備事業等の実施等により単独事業費が119億円(20.5%)、それぞれ増加しており、普通建設事業費全体としては226億円(21.5%)増加した。
失業対策事業費は、平成18年度の産炭地域開発就労事業終了後の暫定事業を継続しており、ほぼ横ばいである。
災害復旧事業費は、平成21年7月の豪雨等による災害が発生したため、63億円(541.3%)増加した。
(3) その他の経費(物件費、補助費等、積立金、繰出金及びその他)
物件費は、委託料、備品購入費等が増となったこと等により、前年度と比較して93億円(8.6%)増加した。
補助費等は、平成20年度から引き続く定額給付金事業等により、前年度と比較して302億円(27.7%)増加した。
積立金は、特定目的基金等の積み立てが多額であったため、前年度と比較して27億円(12.5%)増加した。
繰出金は、国民保険事業会計・老人保健医療事業会計への繰出額は減少したが、後期高齢者医療事業会計と併せた3会計への繰出額の計が12億円(2.4%)増加したほか、介護保険の保険事業勘定への繰出額が10億円(4.3%)増加したこと等により、前年度と比較して24億円(2.7%)増加した。
5 経常収支比率の状況
経常収支比率は、経常的な経費に充てる一般財源に経常一般財源がどの程度充当されたかによって財政構造の弾力性を判断する指標である。
この比率が100%を超えると、人件費、扶助費、公債費を中心とする経常的経費に充てる一般財源が地方税や普通交付税などの毎年度収入することが見込まれる使途が限定されない経常一般財源だけでは賄えなくなり、臨時的な歳出に対して、弾力的に対応できなくなる。
平成21年度の経常収支比率(単純平均)は、92.0%で、前年度(93.8%)と比べて1.8ポイント減少したが、これは、分子である、人件費、物件費等経常的経費に充てた一般財源がほぼ前年度並み(0.2億円(0.0%)増)となった一方、分母である、普通交付税、地方特例交付金等経常一般財源等については107億円(1.9%)増加したためである。
経常収支比率が100%以上の市町村は、前年度の9から3に減少した。
6 健全化判断比率の状況
平成19年6月に公布された財政健全化法においては、地方公共団体の財政の健全性に関する比率として、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率の4つの財政指標が健全化判断比率として定められている。
これらの比率については、議会に報告し、公表することが義務付けられており、また、健全化判断比率のいずれかが悪化し、早期健全化基準以上である場合には、財政健全化計画を議会の議決を経て策定し、公表すること等が義務付けられている。
平成21年度決算に基づく健全化判断比率(速報値)の状況は、次のとおりである。
(1)実質赤字比率
実質赤字比率は、一般会計等における歳出に対する歳入の不足額(実質赤字額)を地方公共団体の一般財源の標準的な規模を表す標準財政規模の額で除したものである。
この比率が高くなる場合、その年度における歳入の、歳出に対する実質的な不足額が増大し、歳入と歳出の不均衡が拡大していることになる。その解消には、従来より多くの歳出削減策や歳入増加策が必要となるため、赤字の解消期間も長期間にわたる可能性が高くなり、その団体の財政運営は困難な事態に陥る。
平成21年度決算において実質赤字額が生じた団体は、大牟田市のみである。大牟田市は、平成13年度以降、9年連続の赤字(△3.8億円)となったが、平成20年度(△9.7億円)と比較して実質赤字額は縮小している(単年度黒字額5.9億円)。
市では、平成23年度末までに累積赤字の解消を目指す財政健全化計画を策定し、平成20年8月に公表している。当該計画では、人件費の削減、市債発行の抑制、税率改定(法人市民税均等割、軽自動車税)、遊休資産の売却(ネイブルランド及び旧市民会館の跡地)等に取り組むこととしている。
(2)連結実質赤字比率
連結実質赤字比率は、地方公共団体のすべての会計の赤字額と黒字額を合算して算出された連結実質赤字額を、標準財政規模で除したものである。
一般会計等が黒字であるにも関わらず、この比率が高くなっている場合、その団体の会計のうち一部の会計において赤字額が増大しており、その団体全体の財政運営において問題が生じていることを示している。
平成21年度決算において連結実質赤字額が生じた団体は、川崎町のみである。川崎町は、一般会計等は黒字(3.3億円)であるが、国民健康保険事業会計(△7.0億円)を主な要因として赤字(△1.8億円)となっている。病院事業の収支状況が改善(+1.0億円)したことにより、平成20年度(△3.3億円)と比較して連結実質赤字額は縮小している。
(3)実質公債費比率
実質公債費比率は、地方公共団体の一般会計等の支出のうち、義務的経費である公債費(地方債の元利償還金)や公債費に準じた経費(準元利償還金)を標準財政規模を基本とした額で除したものの3カ年の平均値である。
公債費や公債費に準じた経費は、削減したり、先送りしたりすることができないものであり、一度増大すると短期間で削減することは困難となる。実質公債費比率が高まると財政の弾力性が低下し、他の経費を節減しないと収支が悪化し、赤字団体となる可能性が高まることとなる。
県内市町村の実質公債費比率の平均(単純平均)は、準元利償還金のうち組合等が行う地方債償還に充てるための負担金・補助金が減少したこと等により、前年度から0.6ポイント減の12.1%である。県内市町村で比率が最も高い団体は久山町(20.3%)である。
(4)将来負担比率
将来負担比率は、地方公共団体の一般会計等が将来的に負担することになっている実質的な負債に当たる額(将来負担額)を把握し、この将来負担額から負債の償還に充てることができる基金等を控除の上、標準財政規模を基本とした額で除したものである。
将来負担額は、地方公共団体が発行した地方債残高のうち、一般会計等が負担することになるものに限らず、土地開発公社や損失補償を付した第三セクターの負債等も含め、決算年度末時点において想定される地方公共団体の将来負担を把握するものである。
将来負担比率が高いほど、当該団体の一般財源規模に比べ将来負担額が大きいということであり、今後実質公債費比率の増大等により財政運営が圧迫されるなど、問題が生じる可能性が高くなる。
将来負担比率の早期健全化基準は、350%である。
県内市町村の将来負担比率の平均(単純平均)は、将来負担額のうち地方債残高が減少したこと等により、前年度から7.2ポイント減の55.3%である。県内市町村で比率が最も高い団体は久山町(166.1%)である。
7 その他
(1)地方債現在高の状況
平成21年度末の地方債現在高は9,893億円となり、臨時財政対策債及び合併特例事業債を除いて全体的に減少しており、前年度末(1兆69億円)と比較して、△176億円(△1.7%)減少した。
(2)積立金現在高の状況
平成21年度末の積立金の現在高は、3,171億円となり、前年度末 (3,096億円)と比較して75億円(2.4%)増加した。
基金別にみると、財政調整基金の現在高は1,060億円(58億円、5.7%)、減債基金の現在高は357億円(△3億円、△0.7%)、その他特定目的基金の現在高は1,754億円(20億円、1.2%)となっている。
8 まとめ
平成21年度の県内市町村(政令指定都市を除く)の決算は、歳入、歳出とも平成20年度に引き続き2年連続の増となり、また経常収支比率も2年連続して改善したが、これは国の経済対策による面も大きく、また、景気の先行きに楽観はできないことから、今後も厳しい財政運営を迫られることが予想される。
市町村においては、現下の厳しい地域経済の状況や市町村財政を取り巻く状況を的確に捉え、中長期的視点に立った計画的な財政運営を行うことが必要である。また、事務事業の見直しや組織の簡素化、定員・給与の適正化など、行財政改革を一層推進し、節度ある財政運営を行うことが求められる。