本文
平成20年度県内市町村普通会計決算(速報)
平成21年9月30日に報道発表した資料です。
1 決算規模
県内市町村(政令市を除く64市町村)の平成20年度普通会計決算は、歳入総額が9,552億円、歳出総額9,204億円となり、前年度と比較して、歳入が145億円(1.5%)、歳出が15億円(0.2%)増加した。
歳入については、地方交付税が増加したことに加え、平成20年度国の補正予算により国庫支出金が増加したこと、歳出については、人件費等が減少した一方で、積立金、補助費等及び扶助費が増加したことが、歳入・歳出の増加の主な原因となっている。
2 決算収支
(1)平成20年度における歳入歳出差引額(形式収支)は、348億円の黒字である。
(2)上記の形式収支から、明許繰越等のため翌年度に繰り越すべき財源を控除した実質収支は、206億円の黒字である。
(3)実質収支が赤字の市町村は、大牟田市のみである。
3 歳入の状況
平成20年度の歳入総額は9,552億円で、繰入金(△52億円、△19.2%)、各種交付金(△37億円、△10.8%)等が減少したものの、国庫支出金(200億円、18.6%)、地方交付税(78億円、3.4%)が増加したこと等により、前年度 (9,407億円)と比較して、145億円(1.5%)増加した。
なお、使途が特定されず、どの経費にも自由に充てることができる一般財源は前年度と比較して、64億円(1.1%)増加したが、歳入全体に占める構成比は、60.8%となり、前年度の61.1%から0.3ポイント低下した。
主な歳入の状況は次のとおり。
(1) 地方税は、金融危機に伴う景気の悪化の影響等により市町村民税の法人税割が△32億円(△15.3%)の減となった一方で、市町村民税の所得割が退職者所得の増や平成19年度からの税源移譲の効果等により19億円(1.8%)の増、新築家屋の増加等により固定資産税の家屋分が27億円(2.1%)の増となったこと等により、前年度と比較して、12億円(0.4%)増加した。
(2)各種交付金は、地方消費税交付金が△13億円(△5.6%)の減となったこと等により、前年度と比較して△37億円(△10.8%)減少した。
(3) 地方特例交付金等は、住宅借入金等特別税額控除による個人住民税の減収を補てんするため減収補てん特例交付金が創設されたこと等により、前年度と比較して16億円(77.0%)増加した。
(4) 地方交付税は、地方再生対策費の新設等により普通交付税が69億円(3.5%)の増、特別交付税が8億円(2.7%)の増となったことにより、前年度と比較して78億円(3.4%)増加した。
(5)国庫支出金については、平成20年度国の補正予算による定額給付金事業に係る国庫支出金の増等により、前年度と比較して200億円(18.6%)増加した。
(6) 繰入金については、平成19年度において大規模な基金繰入が行われたため、前年度と比較して△52億円 (△19.2%)減少した。
(7) 地方債については、臨時財政対策債が△17億円(△6.3%)減少したこと等により、前年度と比較して△13億円(△1.8%)減少した。
4 歳出の状況
平成20年度の歳出決算額は9,204億円で、人件費(△68億円、△4.0%)、物件費(△23億円、△2.1%)、公債費(△20億円、△1.6%)が減少したものの、積立金(50億円、30.4%)、補助費等(45億円、4.3%)、扶助費(38億円、2.3%)が増加したこと等により、前年度(9,188億円)と比較して、15億円(0.2%)増加した。
性質別に見た歳出の状況は次のとおりである。
(1) 義務的経費(人件費、扶助費及び公債費)
扶助費が増となったものの、人件費及び公債費が減となったことにより、前年度と比較して△50億円(△1.1%)の減少となった。
人件費は、各団体において策定された集中改革プランに基づく退職者の不補充等による職員数の削減等により△68億円(△4.0%)減少した。
扶助費は、生活保護費や児童手当・保育所経費等に係る児童福祉関係経費の増等によって38億円(2.3%)増加した。
公債費は、地域総合整備事業債に係る元利償還金が減となったこと等により△20億円(△1.6%)減少した。
(2) 投資的経費(普通建設事業費、失業対策事業費及び災害復旧事業費)
各事業費とも減少したことにより、前年度と比較して、△36億円(△3.2%)減少した。
普通建設事業費は、安全安心な学校づくり交付金を活用した事業の実施等により補助事業費が17億円(4.3%)の増となったものの、前年度大規模な事業があった単独事業費の減等により、普通建設事業費全体としては△19億円(△1.8%)減少した。
失業対策事業費は、平成18年度の産炭地域開発就労事業終了後の暫定事業の縮減により△9億円(△25.9%)減少した。
災害復旧事業費は、大きな災害がなかったため△9億円(△42.4%)減少した。
(3) その他の経費(物件費、補助費等、積立金、繰出金及びその他)
物件費は、委託料が減となったこと等により、前年度と比較して△23億円(△2.1%)減少した。
補助費等は、平成20年度の国の補正予算を受け実施された定額給付金事業等により、前年度と比較して45億円(4.3%)増加した。
積立金は、財政調整基金等の積み立てが多額であったため、前年度と比較して50億円(30.4%)増加した。
繰出金は、後期高齢者医療事業会計(※)の導入により、国民保険事業会計・老人保健医療事業会計への繰出額は減少したが、後期高齢者医療事業会計と併せた3会計への繰出額の計が8億円(1.6%)増加したこと及び下水道事業への繰出額が4億円(1.8%)増加したこと等により、前年度と比較して15億円(1.7%)増加した。
〔※ 後期高齢者医療事業会計について〕
平成20年4月1日に後期高齢者医療制度(運営について、保険料徴収は市町村が行い、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が行う)が創設されたことに伴い、後期高齢者医療事業に係る収支が、独立した公営事業会計として取り扱うこととされた。
(参考)後期高齢者医療事業会計決算の状況(64市町村+広域連合)
〈歳入合計〉5,116億円 〈歳出合計〉5,014億円
〈歳入歳出差引〉103億円
5 経常収支比率の状況
経常収支比率は、経常的な経費に充てる一般財源に経常一般財源がどの程度充当されたかによって財政構造の弾力性を判断する指標である。
この比率が100%を超えると、人件費、扶助費、公債費を中心とする経常的経費に充てる一般財源が地方税や普通交付税などの毎年度収入することが見込まれる使途が限定されない経常一般財源だけでは賄えなくなり、臨時的な歳出に対して、弾力的に対応できなくなる。
平成20年度の経常収支比率(単純平均)は、93.8%で、前年度(95.5%)と比べて1.7ポイント減少したが、これは、人件費、補助費、物件費等の経常的経費に充てた一般財源が△0.1%(△7億円)減少した一方、普通交付税、地方特例交付金等の経常一般財源等について0.7%(39億円)増加したためである。
経常収支比率が100%以上の市町村は、前年度の15市町村から9市町村に減少した。
6 健全化判断比率の状況
平成19年6月に公布された「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」は、地方公共団体の財政の健全性に関する比率の公表の制度を設け、当該比率に応じて、地方公共団体が財政の早期健全化や公営企業の経営の健全化等を図るための計画を策定する制度を定めるとともに、当該計画の実施の促進を図るための行財政上の措置を講ずることによって、地方公共団体の財政の健全化に資することを目的としている。
地方公共団体の財政の健全性に関する比率としては、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率の4つの財政指標が健全化判断比率として定められ、また、公営企業の経営の健全化を判断する比率として、資金不足比率が定められている。
これらの比率については、平成19年度決算から議会に報告し、公表することが義務付けられており、また、平成20年度決算からは、健全化判断比率のいずれかが悪化し、早期健全化基準以上である場合には、財政健全化計画を議会の議決を経て策定し、公表することや、公営企業の資金不足比率が悪化し、経営健全化基準以上である場合には、経営健全化計画を議会の議決を経て策定し、公表すること等が義務付けられている。
平成20年度決算に基づく健全化判断比率(速報値)の状況は、次のとおりである。
(1)実質赤字比率
実質赤字比率は、一般会計等における歳出に対する歳入の不足額(実質赤字額)を地方公共団体の一般財源の標準的な規模を表す標準財政規模の額で除したものである。
この比率が高くなるほど、累積赤字が増大しているということでその解消が困難となり、より多くの歳出削減策や歳入の増加策が必要となる。また、赤字の解消期間も長期間にわたる可能性が高くなり、その団体の財政運営は極めて深刻な事態に陥る。
平成20年度決算において実質赤字額が生じた団体は、大牟田市のみである。大牟田市は、平成13年度以降、8年連続の赤字(△9.7億円)となったが、平成19年度(△10.6億円)と比較して実質赤字額は縮小している。市では、平成23年度末までに累積赤字の解消を目指す財政健全化計画を策定し、平成20年8月に公表している。
当該計画では、人件費の削減、市債発行の抑制、税率改定(法人市民税均等割、軽自動車税)、遊休資産の売却(ネイブルランド及び旧市民会館の跡地)等に取り組むこととしている。
(2)連結実質赤字比率
連結実質赤字比率は、地方公共団体のすべての会計の赤字額と黒字額を合算(連結実質赤字額)して、標準財政規模で除したものである。
この比率が一定以上の団体は、赤字が多額となっている会計が存在し、その会計の問題が、その団体全体の財政運営からみて大きな問題となっていることを示している。
平成20年度決算において連結実質赤字額が生じた団体は、川崎町のみである。川崎町は、一般会計等は黒字(2.2億円)であるが、国民健康保険事業会計(△6.3億円)で赤字(△3.3億円)となっている。病院事業の赤字を解消したことにより、平成19年度(△6.0億円)と比較して連結実質赤字額は縮小している。
(3)実質公債費比率
実質公債費比率は、地方公共団体の一般会計等の支出のうち、義務的経費である公債費(地方債の元利償還金)や公債費に準じた経費(準元利償還金)を標準財政規模を基本とした額で除したものの3カ年の平均値である。
公債費や公債費に準じた経費は、削減したり、先送りしたりすることができないものであり、一度増大すると短期間で削減することは困難となる。実質公債費比率が高まると財政の弾力性が低下し、他の経費を節減しないと収支が悪化し赤字団体となる可能性が高まることとなる。
県内市町村の実質公債費比率の平均(単純平均)は、前年度から0.2ポイント増の12.7%であり、県内市町村で比率が最も高い団体は久山町(21.7%)である。
(4)将来負担比率
将来負担比率は、地方公共団体の一般会計等が将来的に負担することになっている実質的な負債に当たる額(将来負担額)を把握し、この将来負担額から負債の償還に充てることができる基金等を控除の上、標準財政規模を基本とした額で除したものである。
将来負担額は、地方公共団体が発行した地方債残高のうち、一般会計等が負担することになるものに限らず、土地開発公社や損失補償を付した第三セクターの負債等も含め、決算年度末時点において想定される地方公共団体の将来負担を把握するものである。
将来負担比率が高いほど、当該団体の一般財源規模に比べ将来負担額が大きいということであり、今後実質公債費比率の増大等により財政運営が圧迫されるなど、問題が生じる可能性が高くなる。
将来負担比率の早期健全化基準は、350%である。
県内市町村の将来負担比率の平均(単純平均)は、前年度から8.0ポイント減の62.2%であり、県内市町村で比率が最も高い団体は久山町(198.5%)である。
7 その他
(1)地方債現在高の状況
平成20年度末の地方債現在高は1兆69億円となり、臨時財政対策債及び合併特例事業債を除いて全体的に減少しており、前年度末(1兆417億円)と比較して、△348億円(△3.3%)減少した。
(2)積立金現在高の状況
平成20年度末の積立金の現在高は、3,096億円となり、前年度末 (3,051億円)と比較して45億円(1.5%)増加した。
基金別にみると、財政調整基金の現在高は1,003億円(57億円、6.1%)、減債基金の現在高は360億円(10億円、2.9%)、その他特定目的基金の現在高は1,734億円(△22億円、△1.3%)となっている。
8 まとめ
平成20年度の県内市町村(政令指定都市を除く)の決算は、歳入は平成15年度以来5年ぶりの増、歳出は平成13年度以来7年ぶりの増となり、また経常収支比率は平成17年度以来3年ぶりに改善したが、金融危機に伴う景気の悪化などにより、今後も厳しい財政運営を迫られることが予想される。
そうした状況の中、財政指標の整備とその開示の徹底を図るとともに、財政指標が一定水準以上に悪化した場合に財政の早期健全化や再生を義務付けること等を内容とする「地方公共団体財政健全化法」が制定され、平成21年4月1日から全面施行された。この法律では、監査委員、議会及び住民のチェックによる財政運営の透明化と財政の健全化を図ることが期待されている。
市町村においては、現下の厳しい地域経済の状況や市町村財政を取り巻く状況を的確に捉え、中長期的視点に立った計画的な財政運営を行うことが必要である。また、事務事業の見直しや組織の簡素化、定員・給与の適正化など、行財政改革を一層推進し、節度ある財政運営を行うことが求められる。