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福岡県情報公開審査会答申第119号

更新日:2015年4月14日更新 印刷

「県道岡垣宮田線の区域決定図面の非開示決定処分に対する異議申立て」の答申内容を公表します。

答申

1 審査会の結論

 福岡県知事(以下「実施機関」という。)が、平成18年2月2日17道維第70号-31で行った公文書非開示決定(以下「本件決定」という。)は妥当である。

2 本件文書及び本件決定の状況

 異議申立てに係る対象文書(以下「本件文書」という。)は、平成6年4月1日付けで路線認定された県道岡垣宮田線の区域決定図面(縮尺15万分の1の縦覧用路線図を除く。)である。

 本件文書の開示請求に対し、実施機関は、区域決定図面には当時の道路台帳図面を使用したため、それ以外は作成しておらず存在しない、また、当時の道路台帳図面は差し替えにより現在は存在していないとして、福岡県情報公開条例(平成13年福岡県条例第5号。以下「条例」という。)第11条第2項の規定により本件決定を行った。

3 異議申立ての趣旨及び経過

(1)異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、実施機関が行った本件決定を取消すとの決定を求めるものである。

(2)異議申立ての経過

ア 平成18年1月18日付けで、異議申立人は、実施機関に対し条例第6条の規定に基づき本件文書の開示請求を行った。

イ 平成18年2月2日付けで、実施機関は、本件文書について不存在を理由に本件決定を行い、その旨を異議申立人に通知した。

ウ 平成18年4月8日付けで、異議申立人は、本件決定を不服として実施機関に対し、異議申立てを行った。

4 異議申立人の主張要旨

(1)道路台帳図面を区域決定図面に使う場合、その図面には区域決定の告示に記載された道路区域の起点・終点の地番、最大・最小幅員の位置を書き込む必要があり、道路台帳図面をそのまま区域決定図面としては使用できない。

(2)縦覧用図面についても、書き込みがされた図面が必要である。仮に道路台帳図面を縦覧に使用したのであれば、常設の道路台帳図面とは区別して保存する必要があり、これを破棄することはありえない。

(3)福岡県の文書規程では、県道の区域決定の事蹟は永年保存とされている。道路台帳図面を区域決定図面として使用し、一般の縦覧に供したのならば当時の図面を永年保存しているはずである。 

(4)区域決定図面は、道路管理において最も重要な図面であり、公務員の文書管理責任が問われる非開示決定処分である。開示請求の対象は道路区域を決定した部分を示す区域決定図面であり、道路台帳図面そのものではない。

5 実施機関の説明要旨

(1)県道岡垣宮田線における平成6年4月1日付けの区域決定は、県道の路線網再編に伴うもので再編前後において県道としての道路区域に異同はないため、新たに区域決定図面を作成しておらず、当時の道路台帳図面を使用し、これを一般の縦覧に供した。

(2)従って、本件公文書は、「平成6年4月1日時点で調製・保管されていた県道岡垣宮田線の道路台帳図面」であるが、当時の道路台帳図面の写しを区域決定図面として保存する措置はとっていない。

(3)県道岡垣宮田線の道路台帳図面は、本件区域決定後、数度の記載事項修正が行われ、その都度、新たに調整された図面に差し替えられているため、現在の道路台帳図面は平成6年4月1日時点のものとは内容を異にしている。

(4)従って、本件公文書は存在しない。また、差し替えを行った旧図面についてはその都度廃棄し、保存していない。

6 審査会の判断

(1)本件文書の性格について

 県道の道路管理者である実施機関は、道路法(昭和27年法律第180号。以下「法」という。)第18条に基づき、路線認定の公示の後、遅滞なく、道路の区域を決定して、これを公示し、かつ、これを表示した図面を一般の縦覧に供しなければならないとされている。

 実施機関は、平成6年4月1日付けで路線認定された県道岡垣宮田線の区域決定(以下「本件区域決定」という。)において、当時の道路台帳図面を区域を表示した図面として使用し、一般の縦覧に供したとして、本件文書は当時の道路台帳図面であると特定している。

これに対し、異議申立人は、法第28条に基づく道路管理者が調製し、保管する道路台帳図面と、法第18条に基づく区域決定図面とは道路台帳図面を使用したとしても別のものであり、また、区域決定図面には、道路管理例規に則って道路区域の着色と起点・終点の地番、最大幅員・最小幅員の場所が明確に記載されていなければならないと主張している。

 このことから、異議申立人が開示請求している本件文書とは、実施機関が特定した本件区域決定当時の道路台帳図面そのものではなく、道路区域に関し必要な事項が記載され、区域決定の決裁文書に通常は添付されている図面と同様の図面を指すものである。

(2)本件文書の不存在について

 区域決定の一般的な事務処理では、土木事務所から提出された区域決定要求書を受けて、道路維持課が区域決定を行っている。その際の区域決定図面は、区域決定要求書に添付されている土木事務所が作成した図面である。また、縦覧に供する図面としては、土木事務所が保管している図面が用いられ、区域決定図面と縦覧に供する図面は同じ内容のものである。

しかしながら、本件区域決定は、平成6年の主要地方道の見直しによる、県道の路線網再編に伴い行われたもので、再編前後において県道としての道路区域に異同がないとして、土木事務所からの区域決定要求を受けず、既存の道路台帳図面を使用して、道路維持課が区域決定の事務処理を行ったものである。

 既存の道路台帳図面を使用した理由について、実施機関は当審査会に対し、本件区域決定については従前から道路施設等が設置され、道路として供用していた範囲を対象としており、新たに区域を決定するものではないことから、道路台帳図面とは別の図面を新たに作成する必要はなかったと説明している。

 これに対し、異議申立人は、道路台帳図面とは別のものである本件文書を保管していないとは到底考えられず、何らかの隠したい情報があるため保管していないと実施機関が主張しているものと考えられると述べている。

 そこで、当審査会では、本件文書が現在保管されているか、本件区域決定当時に作成されていたかどうかを確認するため、土木部道路維持課、直方土木事務所、北九州土木事務所及び宗像土木事務所に出向き、文書の現地調査を行った。

 まず、本件区域決定に係る決裁文書(道路維持課が保管する「平成5年度路線認定」ファイル中の「路線認定・廃止・名称等の変更・区域決定の告示について」(平成6年3月23日決裁))について見分したところ、路線認定に係る図面として縮尺15万分の1の路線図は添付されていたものの、本件文書とみられるような図面は保管されていなかった。また、本件決裁文書には、区域決定図面が別に添付され、または別の場所に保管されていることを示す記載もなかった。

 本件決裁文書においては、本件区域決定である「県道岡垣宮田線」の外、15路線の路線認定及び区域決定も一緒に行われているが、それらの区域決定図面も添付されていなかった。その他、本件区域決定に関連する文書ファイルや決裁文書を当時の文書分類表を参考に、文書が保管されているキャビネットや倉庫内を点検したが、本件文書は見当たらなかった。

 以上のことから、本件文書が現在保管されているとは認められず、また、本件区域決定の事務手続きの状況から、当時の道路台帳図面以外に作成された図面はないと認められる。

(3)区域決定図面として使用した道路台帳図面の保存について

 実施機関は、平成6年4月1日時点で調製・保管されていた県道岡垣宮田線の道路台帳図面を区域決定図面として使用したが、文書事務における区域決定図面として、道路台帳図面とは別に保存措置をとっていなかったと説明している。

 これに対し、異議申立人は、区域決定図面を保存しなければ、その後の区域変更の告示の際に、道路の幅員とその延長の変更前と変更後の違いを明らかにすることはできないと指摘している。

 本件区域決定の決裁文書に路線図以外の図面が添付されていないため、本件区域決定において当時どのような道路区域の決定がされたのか、その内容が現時点では分からない状態になっていることは、区域決定の決裁文書を長期保存としている趣旨にそぐわないものである。

 異議申立人は、道路区域の決定は道路管理上最も重要な行政行為であり、その区域決定図面は道路管理例規に則って道路区域の着色、起点・終点の地番、及び最大幅員・最小幅員が明確に記載される必要があること、縦覧用図面にはそのような書き込みがされていなければ決裁がおりなかったことは明らかであることを主張しているが、当審査会は、実施機関が行った非開示決定の妥当性を判断するものであり、道路区域の決定の事務処理がどのように行われるべきであるかについてまで判断することは、権限の範囲外であると考える。

 なお、当審査会は、実施機関が本件区域決定において当時の道路台帳図面を区域決定図面として使用したのであれば、その決裁文書には、当時の道路台帳図面の写しを添付して保存しておくことが、文書管理として適切であったと考える。

(4)非開示決定に関する実施機関の説明について

ア 本件区域決定に使用した図面について

 当審査会の現地調査では、本件区域決定の決裁文書に区域決定図面が添付されていなかったため、その理由について実施機関に説明を求めたところ、実施機関は、本県区域決定では福岡県が道路管理者として管理権を既に行使していた範囲を対象として道路区域を決定し、図面に表示した範囲を道路として区域決定した訳ではないので、区域決定には必ずしも図面は必要ではなく、それ故図面が添付されていないとし、図面はあくまで縦覧に供するため使用したものであるとの説明があった。これは、実施機関が、公文書非開示決定通知書等において、本件区域決定には当時の道路台帳図面を使用したとする説明と矛盾するように思われる。

 また、縦覧用にのみ図面が必要であるかのような説明は、縦覧が区域決定した内容を知らせる手続きであり、区域決定では図面を使用していないにもかかわらず縦覧には図面を使用できるとは、通常考えられないし、また、当審査会が現地調査した土木事務所には、縦覧に関する文書ファイルや決裁文書が見あたらず、縦覧の事務手続きの中で図面を決定しているものではない事実とも矛盾するものである。

 このように、実施機関の説明には一貫性がなく、不適切なところが見受けられる。

イ 本件区域決定当時の道路台帳図面について

 実施機関は、県道岡垣宮田線の道路台帳図面は本件区域決定後、数度の記載事項修正が行われ、その都度、新たに調製された図面に差し替えられたため、当時のものは現在存在していないと説明しているが、当審査会が現在の道路台帳図面を見分したところ、71枚の図面中、19枚の図面は差し替えが行われておらず、当時の図面が現在も使用されていた。

 このように、現在保管されている道路台帳図面の中には、実施機関が本件区域決定に使用したと説明する、当時の道路台帳図面の一部が存在しているにもかかわらず、当時の道路台帳図面のすべてが不存在であると受けとられるような説明をしていることは、開示請求に対する対応として不十分である。

(5)結論

 以上のように、非開示決定に関する実施機関の説明には、適切さを欠くところが見られるが、異議申立人が開示請求した本件文書については、当審査会の現地調査や実施機関からの口頭説明から不存在であることを確認しており、実施機関が本件文書は不存在であるとした非開示決定は妥当である。  

 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 

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