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児童虐待とは
児童虐待とは
児童虐待とは、児童を監護する保護者が児童の健やかな心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与える行為のことをいいます。
※児童:満18歳に満たない者をいいます。
保護者:親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいいます。
虐待の禁止
児童虐待は、子どもの基本的人権を侵害する行為であり、児童虐待防止等に関する法律において、何人も児童に対し、虐待をしてはならないと明記され、禁止されています。
虐待の種類
児童虐待は、子どもに加えられる行為によって次の4つに分類されますが、これらは単独で起きるばかりではなく、重複していることが多くあります。
1 身体的虐待
なぐる、ける、溺れさせる、異物を飲ませる、火傷をさせる、冬や夜間に戸外に閉め出すなどの生命に危険を及ぼす行為。
2 性的虐待
子どもへの性交、性的暴行、性的行為の強要・教唆など。性器や性交を見せる、わいせつな写真などの被写体となることを強要する行為など。
3 ネグレクト(保護の怠慢・拒否)
適切な食事を与えない、下着などを長期間不潔なままにする、極端に不潔な環境の中で生活をさせる、病気になっても病院に連れて行かない、学校に通学させない、乳幼児を家に残したまま度々外出したり、車の中に放置するなど子どもの健康状態や安全を損なう行為をすること。また、子どもを遺棄すること。
4 心理的虐待
言葉による脅かしや脅迫、子どもの心を傷つけることを繰り返し言ったり、子どもを無視したりする行為。また、子どもに拒否的な態度を示すこと、他の兄弟とは著しく差別的な扱いをすること。子どもの目の前で配偶者等に暴力をふるうこと。
虐待が発生する要因
要因1 保護者
保護者が生活全般にわたり著しくルーズである場合や、対人関係の形成がうまくできない場合、また、誤った育児観をもっている場合等の場合には、虐待に結びつくことがあると言われています。また、保護者が子ども時代に大人から十分な愛情を受けることなく育った場合には、子どもの気持ちや要求を読み取りにくく、子どもを愛する方法が分からないために虐待につながりやすいことも指摘されています。
生まれた子どもが未熟児である場合や発達に遅れがあると保護者が感じている場合にも、自分の子どもと他の子どもとの成長を比較することから発生する焦燥感から虐待に至る場合があるといわれています。
また、望まぬ妊娠により親となった場合や、乳児期などに母子分離を余儀なくされた場合にも、保護者が子どもに愛情を持てずに虐待に至る場合があります。さらに育児に関する自覚や育児知識が不十分なままで若くして親になった場合も虐待が生じやすいと言われています。
要因2 家庭・家族関係
夫婦の不和や経済的困窮など家族関係が不安定な状況にあり、家庭内のストレスが解消できず保護者の精神的安定を保つことが難しい場合、虐待を生じやすいと考えられています。また、育児不安や育児疲れによりストレスを生じたり、父親が育児に協力的でない場合などにも母親の育児負担が増加し、虐待につながる場合があります。
要因3 社会環境
核家族化の進行に伴い、子育て等の知識や経験が継承されにくくなったことや、少子化が進み子育てを身近に観察する機会が大幅に少なくなったこと等により子育てにとまどいや不安を生じ、虐待へ至る場合があります。
また、近隣とのつながりが弱く、保護者が子育てについて誰にも相談できずに孤立してしまうことも、ストレスの増加につながり、結果として虐待を引き起こす要因となります。そして、虐待をしてしまう保護者は周囲から攻められることを怖れ、ますます社会から孤立するという悪循環に陥る傾向にあります。
虐待が子どもに与える影響
身体的影響
打撲、火傷、骨折などの外傷や衛生状態の悪さによる不潔さ、皮膚疾患、性的虐待による妊娠、性感染症などの影響が見られます。時として死に至ったり、重い障害を残すこともあります。また、栄養障害や愛情が与えられないこと、ストレスにさらされ続けること等により、低身長や低体重などの成長障害が生じることがあります。
知的発達への影響
身体的虐待の後遺症として、知的発達の障害が現れることがあります。
また、ネグレクトによって、年齢相応の基本的な生活習慣が身に付いていなかったり、成長に必要な関わりや語りかけ等の年齢相応の知的刺激が得られないために知的発達が妨げられることがあります。
情緒や行動面への影響
虐待による心的外傷として、集中力や落ち着きのなさ、反抗的行動、暴力的行動などの情緒障害や行動上の問題が出ることがあります。また、保護者から人格を否定されるような言動を絶えず浴びせかけられることにより「自分は存在価値のない人間だ」と思ったり、さらに深刻な状況になると、助けを求める意欲さえなくし自虐的になる等、性格の歪みを引き起こすこともあります。