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平成22年度県内市町村普通会計決算(速報)
平成23年10月13日に報道発表した資料です。
1 決算規模
県内市町村(政令市を除く58市町村)の平成22年度普通会計決算は、歳入総額が、1兆604億円、歳出総額1兆219億円となり、前年度と比較して、歳入が231億円(2.2%)、歳出が183億円(1.8%)増加した。
歳入については、地方交付税及び臨時財政対策債が増加したこと、歳出については、扶助費及び普通建設事業費等が増加したことが、歳入・歳出の増加の主な原因となっている。
2 決算収支
(1) 平成22年度における歳入歳出差引額(形式収支)は、385億円の黒字である。
(2) 上記の形式収支から、明許繰越等のため翌年度に繰り越すべき財源を控除した実質収支は、316億円の黒字である。なお、実質収支が赤字の市町村はない。
3 歳入の状況
平成22年度の歳入総額は1兆604億円で、地方税(△39億円、△1.4%)、繰入金(△143億円、△56.5%)等が減少したものの、地方交付税(201億円、8.2%)、臨時財政対策債(176億円、45.8%)が増加したこと等により、前年度 (10,372億円)と比較して、231億円(2.2%)増加した。
なお、使途が特定されず、どの経費にも自由に充てることができる一般財源は前年度と比較して、152億円(2.6%)増加し、歳入全体に占める構成比も56.0%となり、前年度の55.8%から0.2ポイント上昇した。
主な歳入の状況は次のとおり。
(1) 地方税は、市町村民税の法人税割が20億円(17.4%)の増、固定資産税の家屋分が15億円(2.5%)の増となったが、市町村民税の所得割が△69億円(△6.4%)の減となったほか、固定資産税の償却資産分が△9億円(△4.1%)の減となったこと等により、前年度と比較して△39億円(△1.4%)減少した。
(2) 各種交付金は、自動車取得税交付金が△9億円(△25.8%)の減となったこと等により、前年度と比較して△10億円(△3.5%)減少した。
(3) 地方特例交付金等は、特別交付金の廃止により△8億円(皆減)の減となったが、子ども手当の開始に伴い児童手当及び子ども手当特例交付金が10億円(76.0%)の増となったこと等により、前年度と比較して2億円(4.3%)増加した。
(4) 地方交付税は、雇用対策・地域資源活用臨時特例費の創設等により普通交付税が185億円(8.6%)の増、特別交付税が16億円(4.9%)の増となったことにより、前年度と比較して201億円(8.2%)増加した。
(5) 国庫支出金については、平成21年度以前の国の補正予算に係る交付金について、経済対策臨時交付金及び公共投資臨時交付金の減等により、前年度と比較して△43億円(△2.4%) 減少した。
(6) 繰入金については、財政調整基金及び減債基金の取崩しの減等により、前年度と比較して△143億円(56.5%) 減少した。
(7) 地方債については、一般単独事業債が△26億円(△11.9%)の減となった一方、臨時財政対策債が176億円(45.8%)の増となったこと等により、前年度と比較して214億円(26.2%)増加した。
4 歳出の状況
平成22年度の歳出決算額は1兆219億円で、補助費等(△326億円、△23.3%)、人件費(△67億円、△4.2%)等が減少したものの、扶助費(399億円、22.1%)、普通建設事業費(82億円、6.4%)が増加したこと等により、前年度(1兆36億円)と比較して、183億円(1.8%)増加した。
性質別に見た歳出の状況は次のとおりである。
(1) 義務的経費(人件費、扶助費及び公債費)
人件費及び公債費が減となったものの、扶助費が増となったことにより、前年度と比較して295億円(6.3%)増加した。
人件費は、退職者の不補充等による職員数の削減等により△67億円(△4.2%)減少した。
扶助費は、子ども手当の創設等により児童福祉費や生活保護費が増となったこと等によって、399億円(22.1%)増加した。
公債費は、地域総合整備事業債等に係る元利償還金が減となったこと等により△37億円(△3.0%)減少した。
(2) 投資的経費(普通建設事業費、失業対策事業費及び災害復旧事業費)
失業対策事業費及び災害復旧事業費は減少したが、普通建設事業費がこれらの減少額を上回って増加したことにより、前年度と比較して、75億円(5.5%)増加した。
普通建設事業費は、小中学校の校舎耐震化工事の実施等により補助事業費が52億円(9.9%)、学校給食センター整備事業、電算システム適正化事業、火葬場整備事業等の実施等により単独事業費が41億円(5.9%)とそれぞれ増加しており、普通建設事業費全体としては82億円(6.4%)増加した。
失業対策事業費は、平成18年度の産炭地域開発就労事業終了後の暫定事業の縮減により△0.6億円(△2.4%)減少した。
災害復旧事業費は、平成22年7月に豪雨等による災害が発生したが、平成21年7月の災害ほど被害が発生しなかったため、△6億円(△8.3%)減少した。
(3) その他の経費(物件費、補助費等、積立金、繰出金及びその他)
物件費は、委託料、賃金等が増となったこと等により、前年度と比較して5億円(0.4%)増加した。
補助費等は、定額給付金事業の終了等により、前年度と比較して△326億円(△23.3%)減少した。
積立金は、前年度と比較して112億円(46.6%)増加した。
繰出金は、国民健康保険事業会計への繰出額が29億円の増、介護保険事業会計への繰出額の計が13億円の増、後期高齢者医療事業会計への繰出額の計が12億円の増となったこと等により、前年度と比較して47億円(5.1%)増加した。
5 経常収支比率の状況
経常収支比率は、経常的な経費に充てる一般財源に経常一般財源がどの程度充当されたかによって財政構造の弾力性を判断する指標である。
この比率が100%を超えると、人件費、扶助費、公債費を中心とする経常的経費に充てる一般財源が地方税や普通交付税などの毎年度収入することが見込まれる使途が限定されない経常一般財源だけでは賄えなくなり、臨時的な歳出に対して、弾力的に対応できなくなる。
平成22年度の経常収支比率(単純平均)は、87.7%で、前年度(92.0%)と比べて4.3ポイント減少したが、これは、分子である人件費、物件費等経常的経費に充てた一般財源が30億円(0.6%)増となった一方、分母である普通交付税、地方特例交付金等経常一般財源等については312億円(5.4%)増加したためである。
経常収支比率が100%以上の市町村は、前年度3市町あったが、今年度はない。
6 健全化判断比率の状況
平成19年6月に公布された財政健全化法においては、地方公共団体の財政の健全性に関する比率として、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率の4つの財政指標が健全化判断比率として定められている。
これらの比率については、議会に報告し、公表することが義務付けられており、また、健全化判断比率のいずれかが悪化し、早期健全化基準以上である場合には、財政健全化計画を議会の議決を経て策定し、公表すること等が義務付けられている。
平成22年度決算に基づく健全化判断比率(速報値)の状況は、次のとおりである。
(1)実質赤字比率
実質赤字比率は、一般会計等における歳出に対する歳入の不足額(実質赤字額)を地方公共団体の一般財源の標準的な規模を表す標準財政規模の額で除したものである。
この比率が高くなる場合、その年度における歳入の、歳出に対する実質的な不足額が増大し、歳入と歳出の不均衡が拡大していることになる。その解消には、従来より多くの歳出削減策や歳入増加策が必要となるため、赤字の解消期間も長期間にわたる可能性が高くなり、その団体の財政運営は困難な事態に陥る。
実質赤字額が生じた県内市町村はない。
(2)連結実質赤字比率
連結実質赤字比率は、地方公共団体のすべての会計の赤字額と黒字額を合算して算出された連結実質赤字額を、標準財政規模で除したものである。
一般会計等が黒字であるにも関わらず、この比率が高くなっている場合、その団体の会計のうち一部の会計において赤字額が増大しており、その団体全体の財政運営において問題が生じていることを示している。
連結実質赤字額が生じた県内市町村はない。
(3)実質公債費比率
実質公債費比率は、地方公共団体の一般会計等の支出のうち、義務的経費である公債費(地方債の元利償還金)や公債費に準じた経費(準元利償還金)を標準財政規模を基本とした額で除したものの3ヶ年の平均値である。
公債費や公債費に準じた経費は、削減したり、先送りしたりすることができないものであり、一度増大すると短期間で削減することは困難となる。実質公債費比率が高まると財政の弾力性が低下し、他の経費を節減しないと収支が悪化し、赤字団体となる可能性が高まることとなる。
県内市町村の実質公債費比率の平均(単純平均)は、準元利償還金のうち組合等が行う地方債償還に充てるための負担金・補助金が減少したこと等により、前年度から0.7ポイント減の11.4%。県内市町村で比率が最も高い団体は糸島市(18.3%)である。
(4)将来負担比率
将来負担比率は、地方公共団体の一般会計等が将来的に負担することになっている実質的な負債に当たる額(将来負担額)を把握し、この将来負担額から負債の償還に充てることができる基金等を控除の上、標準財政規模を基本とした額で除したものである。
将来負担額は、地方公共団体が発行した地方債残高のうち一般会計等が負担することになるものに限らず、土地開発公社や損失補償を付した第三セクターの負債等も含め、決算年度末時点において想定される地方公共団体の将来負担を把握するものである。
将来負担比率が高いほど、当該団体の一般財源規模に比べ将来負担額が大きいということであり、今後実質公債費比率の増大等により財政運営が圧迫されるなど、問題が生じる可能性が高くなる。
県内市町村の将来負担比率の平均(単純平均)は、負債の償還に充てることができる基金の残高が増加したこと等により、前年度から11.3ポイント減の44.0%。比率が最も高い県内市町村は中間市(143.9%)である。
7 その他
(1)地方債現在高の状況
平成22年度末の地方債現在高は9,841億円となった。臨時財政対策債及び旧合併特例事業債等は増加しているが、全体的に減少しており、前年度末と比較して、△52億円(△0.5%)減少した。
(2)積立金現在高の状況
平成22年度末の積立金の現在高は、3,456億円となり、前年度末と比較して284億円(9.0%)増加した。
基金別にみると、財政調整基金の現在高は1,209億円(149億円、14.0%)、減債基金の現在高は410億円(53億円、14.9%)、その他特定目的基金の現在高は1,837億円(83億円、4.7%)といずれも増加した。
8 まとめ
平成22年度の県内市町村(政令指定都市を除く)の決算は、歳入、歳出とも平成20年度以降3年連続の増となり、また経常収支比率も3年連続して改善したが、これは地方交付税の増額による面も大きく、また、景気の先行きに楽観はできないことから、今後も厳しい財政運営を迫られることが予想される。
市町村においては、現下の厳しい地域経済の状況や市町村財政を取り巻く状況を的確に捉え、中長期的視点に立った計画的な財政運営を行うことが必要である。また、事務事業の見直しや組織の簡素化、定員・給与の適正化など、行財政改革を一層推進し、節度ある財政運営を行うことが求められる。