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福岡県と(株)QTnetによる産官共同研究 「行政事務における生成AI技術の利活用」の成果について~生成AIサービスの『質問と回答のミスマッチ』を解消! 業務効率を改善する革新的手法『ユーザー誘導型グラウンディング』を創出~

発表日:2025年12月10日 14時00分 印刷
担当課:
企画・地域振興部情報政策課
直通:
092-643-3194
内線:
2507、2510
担当者:
前田、澤

 福岡県と(株)QTnetは、双方が持つ行政事務と生成AIに関する知見を基に、生成AIを活用した行政事務効率化に関する共同研究を、令和7年8月から実施していたところですが、その結果、生成AIチャットサービスが持つ技術的課題に対処するための新たなアプローチとして、革新的な手法「ユーザー誘導型グラウンディング」の創出に至りました。
 福岡県では、組織内部で利用する「福岡県生成AIチャットサービス」に、本手法を用いたサービスを実装することにより、職員の情報探索や問い合わせ対応に要する時間と労力を大幅に削減し、行政事務全体の効率化を目指すとともに 将来的にはこの技術を活用し、外部からの問い合わせ対応を自動化するなど、より質の高い行政サービスへの応用を検討していきます。

1 生成AIとその拡張技術「RAG」の課題:なぜ期待通りの回答が得られないのか?

 生成AIと組織が持つ独自情報(例:規則、マニュアル、問答集など)を組み合わせた仕組みが近年注目を集めています。これはRAG(検索拡張生成)と呼ばれる技術で、大規模言語モデル(LLM)が、学習データに含まれない組織固有の情報や専門知識を参照し、その内容に基づいて回答を生成することで、LLM単体では対応できない独自情報への回答を可能にすることを目指しています。
 RAGの導入は自治体等でも進んでいますが、活用の現場においては、生成AIサービスに質問しても期待通りの回答が得られない「ミスマッチ」がしばしば発生するという課題がありました。
 このミスマッチの要因の一つとして、AIがユーザーの質問意図を正確に把握できず適切な情報を参照できないことに起因するものが挙げられますが、特に行政事務の現場においては、法律や制度に関する用語が特殊かつ厳格に用いられる傾向が多いことから、AIによる情報参照の難易度が高くなり、結果として曖昧な、あるいは的外れな回答が生成されるという状況が頻発していました。

1 生成AIとその拡張技術「RAG」の課題:なぜ期待通りの回答が得られないのか?

2 ユーザー誘導型グラウンディングについて:ミスマッチを解消する新たなアプローチ

 新手法「ユーザー誘導型グラウンディング」は上記のような課題、特にAIがユーザーの質問意図を正確に把握できず適切な情報参照が困難であるという状況に対処するための新たなアプローチとして創出されました。
 この「ユーザー誘導型グラウンディング」は、AI(RAGシステム)が質問への回答を生成する前段階で、参照すべき情報源の候補を複数提示し、質問者が自身の意図に最も合致するものを能動的に選択・誘導することで、AIが根拠とする情報を明確にする手法です。これにより、AIは利用者の意図に即したより正確で信頼性の高い回答を生成することが可能となり、事務処理の効率化やハルシネーションのリスク低減といった効果が期待されます。

2 ユーザー誘導型グラウンディングについて:ミスマッチを解消する新たなアプローチ

3 本手法の活用により期待される効果について:情報探索や問い合わせ対応

 本手法を用いることにより、生成AIチャットサービスでの回答精度が大幅に向上しサービス利用者の作業時間の短縮やストレスの軽減につながることが期待されます。
 福岡県では、現在利用している「福岡県生成AIチャットサービス」に本手法を活用した機能を実装することにより、問い合わせに対する電話応対や、事務処理に必要な情報の探索に職員が要している時間・労力を縮減するとともに、将来的には、メール送信などのメッセージング機能を組み合わせることで、問い合わせ対応の自動化を実現することを目指す等、行政事務の効率化に向けた取り組みを今後進めていきます。

*新手法を活用した、今後の取り組みイメージ

3 本手法の活用により期待される効果について:情報探索や問い合わせ対応