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社会福祉法人貴寿会に対する改善勧告について

発表日:2024年2月20日 11時00分 印刷
担当課:
介護保険課
直通:
092-643-3251
内線:
3171
担当者:
大安(だいあん)

 標記法人に特別監査を行った結果、不適正な支出及び法人運営が認められたため、法人に対し令和6年2月20日に社会福祉法第56条第4項に基づく改善勧告を行ったのでお知らせします。​

1 法人の概要

 

法人名:社会福祉法人貴寿会 (設立日 平成12年2月7日)

所在地:田川郡糸田町字松ケ迫4003-3

運営施設:ケアハウス貴寿苑(軽費老人ホーム)

2 特別監査期間

監査期間:令和5年7月~令和6年1月(現地訪問調査7回)

監査の経緯:令和5年6月に県に対し、当該法人から、前理事長(理事長就任期間:令和3年6月29日~令和5年3月31日)による使途不明金、社会保険料の滞納、理事会に諮らずに介護報酬のファクタリング契約を行う等の問題行為が発覚したとの報告があったため。

改善勧告日:令和6年2月20日

3 不適正な支出及び法人運営の内容

 

(1)経理事務関係

 経理事務において、以下の不適正な支出及び事務処理が認められた。

ア 内部牽制体制の不備

 通帳と通帳印の管理及びインターネットバンキングの利用において、複数人によるチェック体制を整備していなかったこと。

イ 不適正な支出による法人への損害発生

 法人の経理規程第26条において、金銭の支払いは、受領する権利を有する者からの請求書、その他取引を証する書類に基づいて行う旨定められているが、インターネットバンキングによる振込や預金の引出しにより、支出証拠書類のない、支出目的不明の不適正な支出が多数行われ、法人に損害が発生していること。

  ・証拠書類のない不適正な支出:3億4,801万1,064円

  ・証拠書類のない目的不明の入金:2億2,057万9,000円

  ・法人の損害額(差し引き):1億2,743万2,064円 

ウ 不適正な契約締結事務

 契約締結の伺いがない契約、複数の見積書がない契約、契約書の存在が不明な契約及びそれらの契約に基づく支出、法人口座から引き出す際の支出目的と実際の使途が異なる支出があったこと。

エ 会計責任者の支出承認に係る口頭承認による運用

 経理規程第26条において、金銭の支払いを行う場合は会計責任者の承認を得て行わなければならないと定められているが、口頭で承認されており、事後的な検証ができない運用となっていたこと。

オ 預金残高確認事務の未実施

 預金残高証明書が改ざんされ、実際の通帳残高と異なっていたこと。経理規程第30条及び第40条に基づき、会計責任者は毎月出納職員から通帳と帳簿の残高の照合結果の報告を受けその確認を行うとともに、毎月資金の実在を確かめなければならないが、行われていなかったこと。

カ 法人印の不適正な管理

 社会福祉法人貴寿会の法人代表者印が事務所外に持ち出され、理事会の承認を受けていない借入契約書に押印されていたこと。

キ 社会保険料の滞納

 令和4年8月から令和5年3月にかけて社会保険料を滞納していること。

 

(2)法人運営関係

 独立行政法人福祉医療機構からの1億2千万円の借入に際し、理事会による借入の承認を受けていないなど以下の不適正な法人運営が認められた。

ア 虚偽の議事録の作成

 議事録は法人の意思決定が適正に行われたことの証明となる重要な書類であるにもかかわらず、開催していない理事会の議事録を作成し開催したように装っていたこと。また理事会又は評議員会を開催している場合においても欠席者を出席者と記載していたこと。

イ 理事会の未承認

 決算書類及び評議員会に提案する理事候補者議案は、理事会の承認を受けなければならないが、アのとおり実際には理事会が開催されておらず、承認を受けていなかったこと。 

ウ 独立行政法人福祉医療機構からの借入に係る理事会の未承認

 A 法人が多額の借入を行う際には理事会の承認が必要であるが、独立行政法人福祉医療機構からの1億2千万円の借入に際し、アのとおり実際には理事会が開催されておらず、承認を受けていなかったこと。

 B Aの借入時に補正予算議案を作成し、収入及び支出の状況を踏まえた借入の必要性について理事会で審議を行う必要があるが、行われていなかったこと。

エ 介護報酬請求権の譲渡契約に係る理事会の未承認

 令和3年9月に介護報酬請求権を債権買取会社に譲渡する契約(ファクタリング契約)を行っているが、重要な財産の処分として理事会の議決を得ていなかったこと。また契約時に契約締結伺いが作成されていなかったこと。

オ 職務の執行状況報告の未実施

 法人の定款第17条に基づき、理事長は毎会計年度4か月を超える間隔で2回以上職務執行状況を理事会に報告しなければならないが、行っていなかったこと。  

4 改善勧告の内容

 

 経理規程に基づき適正に事務を行うとともに、発生した法人の損害金について関係者に請求すること。また預金残高の確認は通帳原本により行うこと。  

 法人印について、事務所内において厳正に管理すること。

 社会福祉法及び定款に定める手続きに従い適正な法人運営を行うこと。また、評議員会を連続して欠席する評議員がみられるが、評議員会は法人運営の基本的事項を決定するとともに、法人運営を監督する重要な機関であることから、全員出席できるよう日程調整を行うこと。

 特別監査の際に、個人間で社会福法人貴寿会の売買が行われた旨の説明があったが、社会福祉法人制度において、個人に法人の持分はなく、地域の公的資源である社会福祉法人を個人間で売買する形で金銭の授受を行う行為は極めて不適切な行為であること。

 理事会及び評議員会において、3(1)及び3(2)に記載する事項の発生原因の究明を行うとともに、内部牽制体制を整備し再発防止策を講じること。

参考

 

​○ 改善勧告の根拠条文

 社会福祉法第56条第4項

 所轄庁は、社会福祉法人が、法令、法令に基づいてする行政庁の処分若しくは定款に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該社会福祉法人に対し、期限を定めて、その改善のために必要な措置(役員の解職を除く。)をとるべき旨を勧告することができる。

○ ファクタリング契約

 事業者が保有している債権を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約とされている。