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学校教育における在日外国人の人権に関する指導上の指針
平成10年12月3日策定、平成11年1月7日発表 福岡県教育委員会
福岡県は、わが国とアジアの国や地域との重要な交流の拠点として、古くから朝鮮半島や中国大陸との人、物、文化の交流が盛んに行われてきた。さらに、今日の著しい国際化の進展に伴い、研修や勉学あるいは仕事のため、多数の外国人が本県を訪れ、生活している。また、本県に在住している外国人の中には、歴史的経緯から居住することとなった在日韓国・朝鮮人が多くを占めている。
本県は、個性豊かで創造的活力に満ちた県を築き、豊かな県民生活を実現するとともに、人権文化の構築に向けた人権施策の総合的推進を図り、外国人に開かれた地域社会の形成をめざしている。
福岡県教育委員会においては、従来から基本的人権の尊重を基本として、学校教育、社会教育を通じて同和問題をはじめとする様々な人権問題の解決に取り組んできたところであるが、在日外国人に対し、ことばをはじめ文化や習慣の違いなどからくる偏見や差別がいまだに存在していることは否定できない。また、在日韓国・朝鮮人に対し、歴史的経緯などからくる偏見や差別が依然として存在していることは、人権教育上の重要な課題である。
このような基本的認識を踏まえ、次代を担う児童生徒が国際社会の一員としての自覚を持ち、文化や習慣の違いと歴史的な事実を正しく理解し、互いの人権を尊重し、認め合って共に生きていく意識と態度を培うための教育を充実することが必要である。
今後、各学校における在日韓国・朝鮮人をはじめとする在日外国人の人権に関する教育指導においては、学校や地域の実情を踏まえながら、次の事項に留意しつつ、児童生徒の発達段階に応じた取組を行うものとする。
1 基本的人権の尊重に徹した教育の推進
基本的人権尊重の精神に徹し、人種・民族の違いなどを理由とする差別を解消し、すべての人権の基盤である人間の尊厳を大切にした教育を推進する。
さらに、生命を尊重し、他者を思いやるなどの豊かな人間性を育てるとともに、正しい事実認識に立った公正な判断力を養い、偏見や差別をなくす意志と実践力を培う教育を推進する。
2 多様な文化を尊重し、共生の心を醸成する教育の推進
多様な価値観を理解し、他者と協調する資質や能力の育成を基本としながら、異なった歴史や文化に対する正しい認識を深め、多元的文化や多様性を尊重する共生の心を醸成する。
3 教職員研修の充実と全教育活動を通した指導の推進
全教職員が在日外国人に対する理解を深め、実践的指導力を高めるための研修を充実させるとともに、児童生徒が在日外国人に対する理解を深め、お互いに認め合い、高め合う人間関係をつくり出すことができるよう、すべての教育活動を通した指導の工夫改善に努める。