本文
令和6年人事委員会勧告
令和6年「福岡県の職員の給与等に関する報告及び勧告」の概要
本年の給与勧告のポイント
月例給、ボーナスともに引上げ
1.民間給与との較差10,190円(2.78%)の解消を図るため、若年層に特に重点を置きつつ、全て
の職員を対象に給料表を引上げ改定
[1類(大卒)] 225,600円(+23,200円) [3類(高卒)] 194,500円(+23,600円)
2.民間の支給割合に見合うよう、期末・勤勉手当(ボーナス)を0.10月分引上げ
(年間支給月数4.50月分 → 4.60月分)
給与制度のアップデート
1.人材確保や組織パフォーマンス向上の観点から、職務や職責をより重視した給料表へ改定
2.配偶者に係る扶養手当の廃止及び子に係る手当額の引上げを段階的に実施
1 人事委員会勧告制度の基本的な考え方
本委員会は、地方公務員法に基づき、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように、民間事業所の従業員の状況、国及び他の地方公共団体の職員の状況等を考慮した上で、労働基本権制約の代償措置として、職員の給与等に関し、報告及び勧告を実施
2 民間給与との比較に基づく給与改定等
(1)職員給与と民間給与との比較
企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上の県内の民間事業所2,199事業所から500事業所を無作為に抽出して調査を行い、把握した民間給与と職員給与を比較
ア 月例給
民間と県職員の本年4月分給与の額について、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴を同じくする者同士を対比させ比較。職員給与が民間給与を10,190円(2.78%)下回る。
民間給与(A) |
職員給与(B) |
公民較差(A-B) 〔(A-B)/B×100〕 |
376,514円 |
366,324円 |
10,190円 〔2.78%〕 |
※職員給与:行政職給料表適用職員のうち、行政職俸給表(一)の適用を受ける国家公務員に相当する職員(平均年齢41.0歳、平均経験年数19.3年)の平均給与月額
イ 期末・勤勉手当(ボーナス)
昨年8月から本年7月までの直近1年間の民間の支給実績(支給割合)と職員の年間の支給月数を比較。職員の支給月数が民間の支給割合を0.09月分下回る。
民間の支給割合(A) |
職員の支給月数(B) |
差(A-B) |
4.59月分 |
4.50月分 |
0.09月分 |
(2)給与改定の内容(令和6年4月1日から実施)
ア 月例給
公民較差の状況及び人事院勧告における俸給表の改定内容を勘案して、給料表を改定。若年層に特に重点を置きつつ、全ての職員を対象に給料表を引上げ
改定額 |
改定率 |
10,180円 | 2.78% |
[参考]職員(行政職)の初任給
給料月額 |
引上げ額 |
|
1類(大卒) | 225,600円 | +23,200円 |
3類(高卒) | 194,500円 | +23,600円 |
イ 期末・勤勉手当(ボーナス)
民間の年間支給割合に見合うよう、0.10月分引上げ
・4.50月分 → 4.60月分(引上げ分は期末手当及び勤勉手当に均等に配分)
[参考] 職員(行政職)の年間給与(月例給+ボーナス)の平均額
改定前 |
改定後 |
増減額 |
6,121,182円 |
6,330,543円 |
209,361円(3.42%) |
3 社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(給与制度のアップデート)
(1)給料表(令和7年4月1日から実施)
人事院勧告において、職務や職責をより重視した俸給体系として示された国家公務員の俸給表の改定に準じ、本県における人材確保や組織パフォーマンス向上の観点から職員の給料表を改定する。
(2)扶養手当(令和7年度から段階的に実施)
国の見直しに準じて、配偶者に係る手当を廃止し、子に係る手当額の引上げを行う。
なお、本県の実情を考慮し、所要の経過措置を講ずることが適当である。
(3)地域手当
国や他の都道府県等の動向に留意しつつ、支給割合を県内一律としてきたこれまでの経緯や本県の実情を踏まえ、検討を行っていく必要がある。
4 意見
(1)人材の確保及び育成について
県行政において、より効果的・効率的な業務遂行や質の高い行政サービスの一層の向上が求められる中、職員には、自身の力を最大限発揮し、全体の奉仕者としての強い使命感と揺るぎない高い倫理意識をもって困難な諸課題に立ち向かうことが強く求められている。
一方で、職員採用の受験者数は減少傾向が続いており、職務経験を持つ職員の増加や個人の仕事に対する価値観の多様化など、職員採用及び職員を取り巻く情勢は大きく変化している。
人材の確保及び育成は、持続可能な組織の礎である。このため、有為な人材から「魅力ある職場」として福岡県庁が選ばれ、職員の成長を後押しすることで、組織パフォーマンスの向上につなげ、ひいては高水準の県民サービスの提供につながる好循環を確実なものにしていくことが必要である。
1.有為な人材の確保
本県における職員採用試験の受験者数は10年前の7割程度の水準まで減少しており、人材の確保は危機的な状況にある。
こうした中で、今後も多様な受験者層から高い志を持った有為な人材を確保していくため、福岡県の職員として働くことを希望する人材が受験しやすくなるような取組や採用チャネルの多様化を進める必要がある。
具体的には、選考方法の見直し、早期試験の創設、職務経験者試験の技術分野への拡充といった採用試験の見直しについて、検討・実施していく。
2.誰もが活躍できる「魅力ある職場」の実現
ア 人材育成の総合的な取組の推進
福岡県庁が有為な人材から選ばれる「魅力ある職場」となるためには、若年層から高齢層まですべての職員が、向上心を持ち続け、自身の望むキャリアを形成し、生き生きと働けることが重要である。
このためには、すべての職員がやりがいや成長を実感しながら業務に取り組んでいくことができるよう、職種や職層に応じ、計画的に人材育成に取り組んでいく必要がある。
イ 女性の活躍推進
任命権者においては、組織の活力向上及び政策方針決定過程への参画拡大を図るため、特定事業主行動計画に基づき女性職員の登用を行っており、一定の成果をあげているところである。
女性の活躍を推進することは誰もが働きやすい社会の実現に寄与するものであり、計画に基づき、女性職員の活躍をより一層推進していく必要がある。
ウ 人事評価を通じた人材育成の推進
任命権者は、引き続き、評価者である管理職員のスキル向上などに努め、職員の理解と納得感を高めながら、より効果的な人材育成となるよう、今後とも人事評価制度に適切に取り組んでいく必要がある。
エ 新任係長の人材育成
係長は、県職員としてのキャリア形成におけるファーストステップとなる役職であり、係長の育成は将来の県組織を牽引する人材の育成につながる。係長が生き生きとやりがいを感じながら働く姿は、若年層の職員のキャリア形成に良い影響を及ぼしていくものと考える。
任命権者においては、新任係長の人材育成及びサポート体制の充実に取り組み、チーム全体のパフォーマンス向上につなげていくことが重要である。
(2)働き方改革の推進と勤務環境の整備等について
ア 長時間労働の是正等
長時間労働の是正には、組織を挙げて強い姿勢で取り組む必要がある。
任命権者においては、定例的な業務により恒常的に長時間労働となっている場合と、災害対応等のように突発的に長時間の時間外勤務を命ぜざるを得ない場合とを区別した上で、その要因の整理・分析を行い、職員の負担軽減につながる取組を一層進めていく必要がある。
イ 教職員の働き方改革
教育の質を維持し、更に向上させていくためには、教職員が児童・生徒と十分に向き合う時間の確保・充実が必要不可欠であり、教職員が一丸となって働き方改革に取り組むことが重要である。
県教育委員会においては、現在実施している取組の結果を検証し、効果的な取組を強力に推し進めるとともに、市町村教育委員会に対して、教職員の働き方改革が推進されるよう働きかけていくべきである。
校長等の管理職員が率先して業務の見直しや効率化・合理化を進め、教職員の勤務時間の適正化や負担軽減を行うことが極めて重要であり、加えて、学校組織のリーダーとして、教職員が働きやすい職場環境づくりを実行する役割が求められている。
また、県及び市町村教育委員会が主体となって、管理職員が学校内のマネジメントに注力できる体制を整備することも重要である。
ウ 多様な働き方の推進及び仕事と生活の両立支援
働き方に関する選択肢の拡充は、職員のワーク・ライフ・バランスの推進に寄与するものであり、任命権者においては、現行の制度について、その活用状況や職員のニーズを踏まえ、国や他の都道府県、民間労働法制の動向にも留意しながら、引き続き検討し充実を図る必要がある。
エ ハラスメント防止対策
管理職員をはじめとする全ての職員は、誰もがハラスメントの行為者となり得ることを十分理解した上で、他者を尊重して、ハラスメントのない職場づくりに取り組む必要がある。
また、近年、社会問題化しているカスタマーハラスメントについても、職員の負担軽減を図ることで、本来の職務に注力できるよう、引き続き組織として対応するよう取り組む必要がある。
オ メンタルヘルス対策
職員の心の健康の保持増進は、質の高い行政サービスを提供するために必要不可欠である。
管理監督者においては、メンタルヘルス不調を生じた職員の早期発見・早期対応に取り組むことが重要である。 また、任命権者においては、円滑な職場復帰のための支援などに着実に取り組んでいく必要がある。
カ 会計年度任用職員制度の適切な運用
会計年度任用職員が意欲を持ち、安心して働くためには、勤務環境や勤務条件の確保は重要であり、任命権者においては、適切な制度運用がなされるべきである。
休暇の日数、期間について、本県の任期の定めのない常勤職員との均衡を考慮し、不合理な取扱いとなっているものについては、早急に是正する必要がある。
(3)公務員倫理の徹底について
県民の信頼を回復するためにも、職員一人ひとりが、自らの行動が県全体と県職員全体の信用に大きな影響を与えることを自覚し、公務内外を問わず行動を厳しく律する必要がある。
任命権者においては、これまで以上に職員の綱紀の保持及び服務規律の確保について、徹底を図る必要がある。また、管理監督者は、職員の勤務態度や生活の異変を察知できるよう、風通しの良い職場づくりに取り組むことが重要である。