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年次有給休暇を活用しましょう
1.年次有給休暇とは? ~基本的な権利を理解しましょう~
年次有給休暇とは、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。
これは、法律(労働基準法第39条)で定められた権利であり、パートやアルバイトなどの雇用形態や名称にかかわらず、一定の条件を満たす労働者に与えられます。
(1) 付与される条件
年次有給休暇が付与される条件は以下の2つです。
ア.雇い入れの日から6か月継続勤務していること
イ.その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
(2) 付与日数
条件を満たした労働者に付与される年次有給休暇の日数は以下のとおりです。
週の所定労働時間や継続勤務年数によって付与日数は異なります。
継続勤務日数 | 6月 | 1年6月 | 2年6月 | 3年6月 | 4年6月 | 5年6月 | 6年6月以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
週の所定労働時間が30時間以上又は週所定労働日数が5日以上(週以外の期間を単位として所定労働日数が定められている場合は、年間所定労働日数が217日以上)の労働者の場合、(1)の条件を満たした労働者には10日の年次有給休暇が付与されます。10日が付与された日から1年を経過した日に、(1)のイ.と同様の条件(最初の年次有給休暇が付与されてから1年間の全労働日の8割以上出したこと)を満たせば、11日の年次有給休暇が付与されます。その後同様に要件を満たすことにより、上の表1に示す日数が付与されます。
週所定労働日数 | 年間所定労働日数 | 雇入れの日からの継続勤務年数 | ||||||
6月 | 1年6月 | 2年6月 | 3年6月 | 4年6月 | 5年6月 | 6年6月以上 | ||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者については、表1の場合よりも少なく、比例的に付与されます。具体的には、上の表2のとおりとなります。
なお、年次有給休暇1日分の時間は、1日の所定労働時間と同じになります。
2.年次有給休暇に関するルールと注意点
(1) 労働者の時季指定権
年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えなければなりません。
労働者は、事前に年次有給休暇を取得する日を申し出る(時季指定する)だけでよく、使用目的は問われません。
(2) 使用者の時季変更権
使用者は、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与ることが事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、他の時季に年次有給休暇を与えることができます。
ただし、時季変更権の濫用は許されません。「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、年次有給休暇取得者が特定の日に集中して代替要員の確保が困難である場合など、請求された日に年休を与えると事業全体が正常に運営できないという客観的な事情がある場合に限られ、単に忙しいというだけでは時季変更権を行使できません。また、年次有給休暇の取得自体を拒否することはできません。
(3) 年5日の年次有給休暇の確実な取得
使用者は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日について取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
取得時季については労働者の希望に沿ったものとなるよう、労働者の意見を聴取しなければなりません。
(4) 計画的付与制度
就業規則に規定し、労使協定を締結することにより、使用者は労働者に、計画的に休暇取得日を割り振ることが可能です。
この場合でも、労働者が自由に請求・取得できる年次有給休暇を最低5日は残す必要があります。
(5) 年次有給休暇の繰越
年次有給休暇の請求権は付与日から2年間で時効となります。付与された年に取得しなかった年次有給休暇は、翌年に繰り越して取得することができます。
(6) 時間単位での取得
労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できます。なお、日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択することができます。
(7) 年次有給休暇の賃金
年次有給休暇に対して支払うべき賃金については、下記のいずれかの算定方法から選択し、就業規則に定めておく必要があります。ただし、ウを選択する場合には労使協定の締結が必要です。
ア 平均賃金
イ 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
ウ 健康保険法上の標準報酬日額(標準報酬月額÷30)に相当する金額
(8) 不利益取扱いの禁止
法律は、年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱い(精皆勤手当や賞与の減額、不利な人事考課など)を禁止しています。
3.その他~年次有給休暇に関するQ&A
Q:退職予定ですが、退職日までのすべての勤務日に年次有給休暇を取得しても消化しきれない年次有給休暇が残ります。そこで、会社の休日である日曜日にも年次有給休暇を取得したいのですが可能でしょうか?
A:「休日※」とは、労働契約上、労働提供義務のない日をいいます。一方、「休暇」とは、労働提供義務のある日についてその義務を免除するものです。もともと労働提供義務がない休日に年次有給休暇を取得することはできません。
※使用者は週1日又は4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。これを法定休日といいますが、法定休日以外に、祝日や盆、年末年始などを独自に休日としている会社もあります。
Q:退職する際に、残った年次有給休暇を買い取ってもらえますか?
A:会社に買い取り義務はありませんが、労使間の合意があれば可能です。
年次有給休暇の買い取りは原則としてできません。年次有給休暇は労働者の心身をリフレッシュさせる目的で与えられるもので、買い取りにより実際に休ませないことは法の趣旨に反することになるためです。
ただし、労働者にとって不利にならないときに限り、買い取りができる場合があります。例えば、退職時に残っている年次有給休暇を買い取るなど、労働者の年次有給休暇取得を阻害することにならない場合です。
その他、法律で定められた日数を上回る年次有給休暇や時効になった年次有給休暇も買い取りが可能です。
ただし、いずれの場合も会社に買い取りの義務があるわけではないので、実際に買い取りが行われるか否かは、労使の合意によることになります。
Q:前年から繰り越した年次有給休暇がありますが、繰越分と今年付与分のどちらから消化すべきでしょうか?
A:就業規則や当事者間での合意があれば、それを優先すべきですが、そのような明確な定めがなければ、繰り越し分から消化されたと推定すべきであるとされています。もし、当年のものから消化するという運用をするのであれば、少なくとも就業規則には明記しておくべきでしょう。
Q:契約途中で週所定労働日数の変更があった場合の付与日数は、変更前、変更後のどちらを基に決まるのでしょうか。
A:年次有給休暇の付与日数は、年次有給休暇が発生する日(「基準日」といいます。)における契約上の所定労働日数により判断します。従って、基準日時点での契約内容が変更後であれば、変更後の所定労働日数を基に付与日数が決定されます。
例えば、4月1日に1日6時間、週4日勤務で雇用契約を締結、8月1日から1日の勤務時間はそのままで週3日勤務に変更となった場合、10月1日(勤務開始後6か月経過した日)の基準日時点では週所定労働日数は3日なので、付与される年次有給休暇は5日になります。
↓ こちらもご参照ください ↓
(年次有給休暇に関するQ&Aが掲載されています)
確かめよう労働条件~労働条件に関する総合サイト~(厚生労働省)内
事業者のためのお役立ちサイト スタートアップ労働条件(厚生労働省)内
年次有給休暇は、労働者の心身をリフレッシュさせ、生活の質を向上させるための大切な権利です。
使用者にとっても、従業員のモチベーションと生産性向上、企業や事業所のイメージ向上に繋がります。
計画的な取得と取得しやすい環境づくりで、労使双方にメリットのある年次有給休暇の活用を促進しましょう。
↓ 年次有給休暇の取得促進については、以下のサイトもご参照ください ↓