本文
「ハラスメント」 されていませんか? していませんか?
職場の様々なハラスメントは、働く人が能力を十分に発揮することの妨げになることはもちろん、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける等の人権に関わる許されない行為です。
企業にとっても、職場秩序の乱れや業務への支障が生じたり、貴重な人材の損失につながり、社会的評価にも悪影響を与えかねない大きな問題です。
※厚生労働省パンフレット「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!(令和5年11月作成 パンフレットNo.15)」より。このページはこの「パンフレット」に基づきます。
まず、最初に、
職場におけるハラスメント防止のために事業主が行うべきことは、法律に基づき、厚生労働大臣の指針(※)に定められています。
事業主は、次のことを必ず行わなければなりません。
■ 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
■ 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
👉 事業主には、相談窓口の設置が義務付けられています。
労働者の皆さまは、まずは、事業所の相談窓口での相談をお勧めします。
■ 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
■ 併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
※このほか、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、 その原因や背景となる要因を解消するための措置が含まれます。
※厚生労働大臣の指針
●事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上 講ずべき措置等についての指針
(令和2年厚生労働省告示第5号)
●事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等について の指針
(平成18年厚生労働省告示第615号)
●事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき 措置等についての指針
(平成28年厚生労働省告示第312号)
●子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が 図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針
(平成21年厚生労働省告示第 509号)
ハラスメントの種類
様々なハラスメントがあるようですが、法律で明確な定めのある、
職場のパワーハラスメント(パワハラ)、
職場のセクシュアルハラスメント(セクハラ)、
職場の妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
について触れさせていただきます。
パワーハラスメント(パワハラ)
労働施策総合推進法(※)第30条の2
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる
1 優越的な関係を背景とした言動であって、
2 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
3 労働者の就業環境が害されるものであり、
1から3までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。
法律は職場のパワーハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。
事業主に相談したこと等を理由とする不利益も禁止されています。
※労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
パワーハラスメントの6つの類型と例
代表的な6つの類型と例を示しますが、個別の状況等によって判断が異なることもあります。
優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です。
1 身体的な攻撃(暴行・傷害)
・殴打、足蹴りを行う。相手に物を投げつける。
2 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
・人格を否定するような言動を行う。
・業務の遂行について、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。
・他の労働者の面前で大声での威圧的な叱責を繰り返し行う。
3 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
・自身の意に沿わない労働者に対し、仕事を外し、長期間にわたり別室に隔離したりする。
・一人の労働者に対し、同僚が集団で無視し、職場で孤立させる。
4 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる。
・新卒者に必要な教育を行わずに対応できない業績を課し、達成できなかったことに厳しく叱責する。
5 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。
・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない。
6 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする。
・労働者の性的指向・性自認や病歴等の機微な個人情報を了解を得ずに他の労働者に暴露する。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
男女雇用機会均等法第11条(※)
職場におけるセクシュアルハラスメントは、職場において行われる、
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることです。
職場におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。
職場におけるセクシュアルハラスメントには、対価型と環境型があります。
※雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
対価型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、 降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等の不利益を受けることです。
典型的な例
・事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、労働者を解雇すること。
・出張中の車中で上司が労働者の腰、胸等に触ったが抵抗されたため、不利益な配置転換をすること。
・事業主が日頃から労働者の性的な事柄を公然と発言していたが、抗議されたため降格すること。
環境型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。
典型的な例
・事務所内で上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、苦痛に感じて就業意欲が低下していること。
・同僚が取引先で労働者の性的情報を意図的、継続的に流布し、苦痛に感じ仕事が手につかないこと。
・労働者が抗議しても同僚が業務パソコンでアダルトサイ トを閲覧し、苦痛で仕事に専念できないこと。
職場の妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
男女雇用機会均等法第11条の3及び育児・介護休業法第25条(※)
職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、職場において行われる 上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・ 出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることです。
妊娠の状態や育児休業制度等の利用等と嫌がらせとなる行為の間に因果関係があるものがハラスメントに該当します。
ちなみに、次のものが該当します。
マタニティー(母性、妊娠の)ハラスメント=マタハラ
パタニティー(父性の)ハラスメント=パタハラ
ケア(介護)ハラスメント=ケアハラ
業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しません。
職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントには、制度等の利用への嫌がらせ型と状態への嫌がらせ型があります。
※「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
制度等の利用への嫌がらせ型
「男女雇用機会均等法」又は「育児・介護休業法」が対象とする制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。
「男女雇用機会均等法」が対象とする制度等
○産前休業 ○妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置 ○軽易な業務への転換 ○育児時間 等
育児・介護休業法が対象とする制度又は措置
○育児休業(産後パパ育休を含む) ○子の看護休暇 ○介護休暇 等
典型的な例
・産前休業の取得を上司に相談したら、「休みを取るなら辞めてもらう」と言われた。
・時間外労働の免除を上司に相談したら、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われた。
・育児休業の取得を上司に相談したら、「男のくせに取るなんてあり得ない」と言われあきらめた。
・介護休業の請求を周囲に伝えたら、同僚から「迷惑だ。自分なら取得しない」と言われ苦痛に感じた。
状態への嫌がらせ型
女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。
典型的な例
・上司に妊娠を報告したら「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。
そして、最後に、
さわりの部分のみをご紹介させていただきました。
詳しくは、最初にご紹介しました厚生労働省パンフレットをご参考ください。
「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!
ハラスメントについては、当事者の言動をまとめてではなく、日々記録することが大切です。
当所の相談に限らず、録音はテープを起こして紙面に書いて相談されることをお勧めします。
※証拠としての優位性はケースバイケースのようです。
※裁判も、専門家によっても見解が異なるようです。