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グラフふくおか 2013秋号 AUTUMN 通巻572号平成25年9月20日発行(季刊) 発行 福岡県 県民情報広報課

写真:グラフふくおか(2013 秋号)
写真:グラフふくおか2013秋号表紙

表紙紹介:久留米市 鍋島緞通(なべしまだんつう)

300年の歴史を紡ぐ 日本最古の綿緞通

写真:鍋島緞通

株式会社 鍋島緞通
福岡県久留米市御井町2388-11
☎0942-43-8141

 格調高い艶(あで)やかな柄で知られる鍋島緞通は、木綿糸を用いた手織りの敷物です。その歴史は古く、江戸時代中期、肥前国佐賀郡扇町の古賀清右衛門が長崎での貿易を通じてその技術を習得したといわれています。
 「当時、鍋島緞通は鍋島藩御用品と将軍家献上品として重宝され、民間では使用が禁止されていました。明治以降、一般家庭への販売が許可され、一時は売買が盛んになりましたが、その後衰退。私たちは昭和29年に久留米市に移転し、伝統の灯(ともしび)を絶やさないようその技術を守り続けています」と織元の吉島政之輔さんは語ります。
 基本は畳一畳の大きさ。205本の経糸(たていと)を織機にかけ、色のついた緯糸(よこいと)を絡ませ結んでいきます。目通しと呼ばれるこの作業を8万4千回繰り返し、完成までに約2カ月かかります。「鍋島緞通は、蟹牡丹(かにぼたん)や宝相華(ほうそうげ)といった古典柄を継承しています。よく見ると、鍋島藩の時代の名残として、かぶとの柄が隠れていたりするんですよ」と吉島さん。
 木綿糸を用いているため、日本の高温多湿な気候にも適し、その柔らかな肌触りが魅力の鍋島緞通。県知事指定特産工芸品として知られ、インテリアとして愛用されています。誕生から300年、職人のたゆまぬ努力と技術の継承により、人々にぬくもりを伝えています。

写真:吉島政之輔さん(1)「伝統の技と日本文化を継承するという使命を感じて仕事しています」と語る吉島政之輔さん