特集
フクオカ古民家再生プロジェクト
日本らしい原風景を生かして文化を紡ぐ
太宰府天満宮に仕えた絵師・吉嗣家(よしつぐけ)の邸宅として大正時代に建てられた古民家「古香庵(ここうあん)」を、一部現代風のリノベーションを加えてレストラン+宿泊施設として再び活用したホテルカルティア太宰府。「私たちの使命は、当時の雰囲気、趣を今に伝えるだけでなく、文化として未来へ紡ぐこと」。三宅智大(みやけともひろ)支配人は、古民家に宿る文化までを未来へ伝えたいと意欲を見せます。
中でもひときわ目立つのは庭の石畳の先に残された立派な蔵。しっかりとした土壁の扉の先には、忙しい日常を忘れられる空間が広がっています。「古民家を生かすためにも利用することを意識しますね」と支配人。「使わないままだと建物は風化してしまいます。できるだけ多くのお客様にご利用いただけるよう努力しています」。ポイントは”利活用“。古民家には人の息吹が必要と聞けば大いに納得です。
太宰府天満宮のお膝元、全国有数の観光地として知られる太宰府。日中はたくさんの観光客で常に賑わっていますが、朝や夜の厳かな雰囲気の太宰府を知っている人は多くありません。長い歴史のある太宰府に泊まることで、古き良き文化や風習をより近くに感じてもらいたいと話す支配人。古民家の再生を通して、地域活性化への期待が大きく膨らみます。
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[住所]太宰府市宰府3-3-33
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[電話]0120-210-289(総合受付11:00~20:00)
ワーケーションをきっかけに地域に人が集う仕組みづくりへ
フルーツの里として多くの人が訪れるうきは市。その農村地に建てられた築約140年の古民家が、今年7月にコワーキングスペース※やレストランを連携させた宿泊施設「ごえん」に生まれ変わりました。
「空き家古民家は大切な地域資源。その資源を活用して、地域に必要とされる『古いけれど新しい』施設を造りたいと思いました」と語るのは、全国古民家再生協会の理事であり、「ごえん」の改修を手掛けた、川口智廣(かわぐちともひろ)さん。
最近は、デジタル技術の発展により、場所に縛られない働き方を選択する人が増えています。宿泊施設と働ける場所をつくることで、観光のみを楽しんで帰る人が多かったうきは市にも、豊かな自然の中で働き(ワーク)ながら、休暇(バケーション)を楽しむ、ワーケーションという新しい滞在を望む人が訪れるようになりました。
古民家の再生を通して、地域に人が集い、地域が活性化する、そんな新しいまちづくりが行われています。
「ごえん」の外観と内装。
予約からチェックイン・アウトまでIoT※で無人管理ができるようシステム化されている。
うきは市には他にも古民家宿泊施設が続々誕生
「FLATFORM UKIHA」の外観と内装。
築約70年の古民家を再生したコワーキングスペース「FLATFORM UKIHA(フラットフォーム うきは)」。施設の隣には人気のフレンチレストランも
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FARM STAY 御幸通り ごえん
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[住所]うきは市浮羽町浮羽792
[電話]0943-73-7078(うきは福富古民家まちづくり協議会)
FLATFORM UKIHA
[住所]うきは市浮羽町浮羽756
[電話]0943-73-7522
こうじが生み出す新たな魅力。地域や人が元気に
浦野醤油醸造元(うらのしょうゆじょうぞうもと)は豊前市にある創業約150年のしょうゆ・みそを製造する小さなこうじ蔵。1907(明治40)年に建てられたこの蔵は、旧中津街道宿場町の面影を伝える重要な建造物として、2021年に国の登録有形文化財として登録されました。
以前はこうじ蔵として、商品の製造が中心でしたが「地域住民の集まる憩いのスペースにしたい」という若女将・浦野敦子(うらのあつこ)さんの思いのもと、2021年の夏に改装。昔からの欄間(らんま)や柱は残したまま、蔵の一部をカフェスペースにし、甘酒やこうじを使ったスイーツの提供や塩こうじやみそ作りのワークショップを始めました。
若い世代に興味を持ってもらえるよう、SNSでカフェの情報を発信。カフェを目当てに、遠くから来られるお客さんも多く、販売しているしょうゆやみそを手に取られることも。
カラフルで目を引く「にじいろ甘酒」はラベルに「豊前」の文字が入り、使用する素材はすべて福岡県産だそう。「カフェを通して、豊前を、そして福岡県を多くの人に知ってもらえるきっかけになれば」と浦野さん。蔵の小さな改装は、地域を元気にすることにもつながっています。
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[住所]豊前市八屋1341-1
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[電話]0979-83-2326
[定休日]日祝日
古民家と出会い 新たな人生へ活力
キッチンカーでピザ屋を開業していた有松位(ありまつたかし)さん。脳梗塞を患ったことを機に、雑貨屋を経営していた妻の幸美(ともみ)さんと一緒に店舗兼住宅にできるような家を探したところ、築90年を超える古民家に出会い、一目惚れ。古民家ならではの魅力を生かすためにあえてリノベーションを行わず、造りをそのまま再利用したカフェと雑貨の店をオープンしました。
「古民家に出会って私たちの人生も再生しました」。笑顔のご夫妻が手作りする日替わりランチやハンバーガーが人気です。
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[住所]鞍手郡鞍手町新北1147-4
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[電話]080-2940-0960
[定休日]木曜日ほか