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2020 夏号 SUMMER 通巻599号 令和2年6月19日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

コロナ禍の最前線

 

看護師 加治大輔(かじ だいすけ)さんの写真

看護師
加治大輔(かじ だいすけ)さん

福岡東医療センター 院長 中根博(なかね ひろし)さんの写真

福岡東医療センター 院長
中根博(なかね ひろし)さん

 

 福岡東医療センターは、福岡県内に12ある感染症指定医療機関の一つです。県内では唯一、エボラ出血熱などの危険性が極めて高い一類感染症にも対応できる第一種感染症指定医療機関として、今回のコロナ禍の中でも多くの患者を受け入れています。最前線で対応に当たられているお二人にお話を伺いました。

─どのような症状の方を受け入れていますか?

中根院長:保健所や医療機関からの紹介で軽症の方から、人工呼吸器が必要な重症の方までを受け入れています。多いときで20人以上の患者が入院したときもありました。一般外来とは別に、発熱外来を設けている他、緊急搬送された方に対して専用の初診室で診察を行うなど、他の患者に感染が広がらないよう細心の注意を払っています。

─受け入れに当たってはどんな準備をされましたか?

中根院長:当病院では、毎年定期的に県や保健所、検疫所と一類、二類感染症が発生した場合の訓練を行ってきました。また、病院独自の感染症対策として、防護服の着脱訓練や、患者に特殊なことが起きた場合の対応などを練ってきました。そのため、現場は比較的混乱することなく受け入れ体制が整いました。ただ、もともと少人数の受け入れを想定していたので、今回のような患者の急増は想定外でした。

─現場の診療対応で大変だったことは?

中根院長:流行初期は、当病院をはじめ、感染症指定医療機関に患者が集中しました。日中は、外来への受診や電話での問い合わせが殺到し、夜間は、夕方にPCR検査結果が判明した患者の入院の受け入れに当たりました。そのため、担当の感染症内科医たちは一日中対応に追われ、睡眠時間も十分確保できず、みるみる疲弊していくのが分かりました。そこで、災害時などに対応できるよう専門的な訓練を受けたDMAT(災害派遣医療チーム)の呼吸器外科の医師を中心に、看護師や事務職員でメンバーを構成する対策本部を院内に設置しました。そして、入院患者の状態や、受け入れ可能なベッド数などの情報を小まめに共有し、チーム一丸となってコロナ対策に取り組みました。PCRの検体採取などは、リハビリテーション科など他部署の医師や、大学病院から派遣してもらった医師に対応してもらいました。現在も対策本部が中心となって、県と連携して入退院する患者の調整を図っています。

加治看護師:ウイルスに対する特効薬がないことが医療従事者と患者を心細くしていると思います。また、人工呼吸器や透析を必要とする患者を一度に複数受け入れたときは、とても大変でした。

─病院独自の取り組みで良かったことは?

中根院長:スタッフが不安を抱くことがないように、医療用マスクやガウンなどの防護具の備蓄状況や、病院の対応方針などの情報を、随時院内で共有していることです。加えて、院内には心療内科医、精神科医が在籍しており、スタッフがいつでもカウンセリングを受けることができる体制も整備しました。

加治看護師:一般病棟を閉鎖して、そこに従事していたスタッフを動員するなど、看護部長が中心となって勤務シフトを組み直しました。そのおかげで現場の看護師の負担はずいぶんと軽くなりました。患者との接触時間が長くなると感染リスクも高くなります。また、少ない人数で対応を続けると注意がおろそかになってしまいます。人員に余裕ができたことは、とても助かっています。また、防護具の不足も看護師たちにとってはかなりのストレスになります。一時期、不足しがちなこともありましたが、事務の皆さんが頑張って調達してくれて、今は安定した数が確保されています。

防護服を着用して診療する様子1

防護服を着用して診療する様子2

検温の様子

感染外来棟の外観写真

 

─県民の方にメッセージを

加治看護師:近隣の皆さまを含め、多くの方からの励ましのお言葉や、医療物資の寄付などをいただき感謝しています。「3密を避ける」「マスクの着用」「手洗い」「手指の消毒」などの基本的な感染対策で十分に感染を防ぐことができますので、引き続きこの徹底をお願いします。

中根院長:新型コロナウイルスは手ごわい相手であり、私たち医療従事者はなんとか打ち勝つことができるよう努力しています。十分な医療提供体制を維持していくためには、感染者を増やさないことが何より重要です。県民の皆さまには、一日でも早く収束を迎えられるよう感染対策を確実に行っていただきたいです。また、自分や家庭、周りの方々を守る行動を続けていただき、コロナ禍をみんなで乗り越えていきましょう。

病院スタッフの皆様への寄せ書き