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2016 夏号 SUMMER 通巻583号 平成28年6月20日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

特集 ふくおかの夏を彩る伝統工芸

 

天然樟脳(しょうのう)

 

内野樟脳

所在地 みやま市瀬高町長田1863-1
電話/ファクス 0944-62-2985

樟脳作りの機械

守り続けてきた
百五十年の結晶

 森林の中にいるような清涼感あふれるやさしい香りが特徴で、結晶は防虫・芳香剤として、精油はアロマとして注目を集めている『天然樟脳』。合成樟脳の普及などにより、全国的にも生産者が減少しましたが、県内では唯一、江戸時代から150年続く内野樟脳(みやま市)で作られています。

 内野樟脳では、今でも伝統製法を採用。九州産の樟(くす)を木片状にした後、甑(こしき)で合計約30時間蒸し、その蒸気を冷却して成分を抽出するなど、全工程に最低でも10日は要します。約6トンの樟からできる樟脳はわずか約25キログラム。先代である亡き夫からその技と思いを受け継いで奮闘する内野和代(うちの かずよ)さんは、「天然樟脳の良さを理解してくれる愛用者の声が仕事を続ける何よりの原動力。ただ、大量生産ができないのでお待たせしてしまうこともある。それが心苦しい」と話します。

 「マニュアルは一切ない。自分の五感が頼り」という天然樟脳づくり。作り手にとっての一番の魅力は「品物に自信が持てること」と内野さんは言います。その言葉の一つ一つに、五代目樟脳師としての矜持(きょうじ)が感じられます。

樟脳の塊

工場見学に訪れた小学生が「白く輝く香りの宝石」と称した樟脳の塊

 
天然樟脳と樟脳オイル

左:福岡だけでなく、全国のショップで販売されている天然樟脳と樟脳オイル。「もっと広く樟脳のことを知ってもらうきっかけになるように」と、4年前に包装デザインを刷新。モダンなパッケージが特徴

右:檀 典良(だん のりよし)さん(写真右)は、内野さんとともに樟脳づくりに取り組むよきパートナー

檀 典良(だん のりよし)さん(写真右)は、内野さんとともに樟脳づくりに取り組むよきパートナーの写真
 
 

工程

 
円盤切削機で、樟を細かく砕き木片(チップ)にする様子

明治時代から使われている円盤切削機で、樟を細かく砕き木片(チップ)に
 

大きな蒸し器である甑に入れて敷き詰める様子

大きな蒸し器である甑に入れて敷き詰め、竃(かまど)に火を入れ合計約30時間かけて蒸留

樟脳成分

木片を蒸す際に発生する蒸気を水で3日間かけて冷却。樟脳成分を抽出する
 

 
 
県が誇る物産が写真と映像でも紹介されている様子

県が誇る物産が写真と映像でも紹介されている

 
国・県指定の工芸品がずらり並ぶ様子

国・県指定の工芸品がずらり。小学生の社会科見学や海外の方の見学も受付
※要事前申し込み