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2020 冬号 WINTER 通巻601号 令和2年12月18日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

ふくおか花図鑑

(りん)ギク

輪ギクの写真

ふっくらとした純白の花を咲かせる輪ギク。福岡県は、輪ギクの生産量が全国第2位

 

緻密に連なる花びらが美しい、日本を象徴する花

 桜と並ぶ日本を象徴する花の一つで、古くから日本人に深く愛されてきたキク。花もちがよく、切り花として2週間から1カ月ほど楽しむことができます。県内では、八女市や広川町などでの栽培が盛んです。日照時間が短くなると花芽(はなめ)を付ける性質を生かし、現在は、夜間に光を照らして開花時期を調整する「電照(でんしょう)栽培」で一年中出荷が可能に。

 「キクは繊細な花。水や温度、日照時間の管理だけでなく、大輪の花を咲かせるための芽摘(めつ)み作業にも手が掛かります」と話すのは、八女市で輪ギクを栽培している大塚隆徳(おおつか たかのり)さん。輪ギクとは1本の茎に花が一輪付いているキクのこと。1本当たり約30から40個もの脇芽(わきめ)を摘み取り、栄養分を中央の花1つに集中させる芽摘み作業は、1ハウス当たり1週間以上かかる大変な仕事です。

 「20数年作っても、まだまだ分からないことばかり。その年の気候に合わせて試行錯誤しながら品質を高めています」と大塚さん。ハウス内に整然と並ぶ出荷間近の輪ギクを見ながら、「咲く前のきれいに並んでいる蕾(つぼみ)を見るのが一番好きですね。生産者だけの特別な瞬間です」とうれしそうに微笑みます。

ハウス内部の写真

夜間に光を照らし、花芽を付けるのを遅らせることで、出荷時期を調整する

輪ギクの蕾の写真

輪ギクは蕾の状態で出荷される

大塚隆徳さんの写真

「毎日ハウスに入って観察することが大事」と話す大塚さん

 
 

洋マム

洋マムの写真

優雅でかわいらしい見た目のディスバッドマム

 

多彩な用途で活躍。近年人気の華やかなキク

 仏花(ぶっか)としてなじみ深い輪ギクの他、洋マムが近年だんだんと人気を集めています。洋マムは日本のキクがヨーロッパなど海外で品種改良されたものが始まりで、咲き方によってディスバッドマムとスプレーマムに区別されます。ピンクや赤、緑など、色味もカラフルで、ブライダルやフラワーアレンジメントなど幅広い用途で使用されています。

 「輪ギクと同じように芽摘み作業によって、一輪の花に育てるのがディスバッドマム。一方、スプレーマムは芽摘みをせずに脇芽からもたくさんの花を咲かせます。ディスバッドマムは、8割ほど花を開かせて出荷するので、花が傷つかないように一つ一つにネットを被せる作業に手が掛かります」と話すのは、広川町で輪ギクや洋マムを栽培している山下泰信(やました やすのぶ)さん。「納得がいく、品質の良いものができたときが一番うれしい。キクの新しい美しさを、ぜひ実感してもらえたら」と、さらなる用途拡大に期待を込めます。

 日本で大切に受け継がれてきた高貴な輪ギクと、色とりどりの華やかさを持ち合わせた洋マム。小さな花びらをいくつも咲かせる華麗な姿は、今も昔も人々の心を魅了し、癒やしを与えています。

山下泰信さんの写真

「葉っぱも傷つきやすいので1枚1枚の扱いに神経を使います」と話す山下さん

ディスバッドマムの写真

ディスバッドマムは8割ほど花が開いた状態で出荷される

スプレーマム(左)とピンポンマム(右)の写真

スプレーマム(左)と丸い形が特徴のピンポンマム(右)