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2020 秋号 AUTUMN 通巻600号 令和2年9月18日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

特集 伝統工芸世代

風土の暮らしに寄り添いながら、愛され、
受け継がれてきた伝統工芸。
時代の変化とともに新しい姿を見せています。

 
 

KURUMEKASURI

久留米絣

糸を括(くく)ることで生み出す柄、「かすれ」の温もり

 
久留米絣が生まれていく様子

括りをした経糸(たていと)、緯糸(よこいと)が一つに整えられて久留米絣が生まれていく

 

 江戸時代の後期に久留米の女性・井上伝(いのうえ でん)によって創案され、筑後地方に伝わる綿織物・久留米絣。伊予絣(愛媛県)、備後絣(びんごかすり)(広島県)とともに日本三大絣の一つに数えられています。夏は涼しく、冬は暖かいという綿素材ならではの着心地の良さ、着るほどに増す風合(ふうあ)い。その魅力は30もの工程を、手間をかけて製作するからこそ生み出されます。

 絣のデザインをイメージして作る「図案」。その図案を元に、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の本数を決め、柄を描く部分を糸で括ります。染色すると糸で括った部分だけが染まらずに白地のまま残り、これが織られることで、独特なかすれを伴った模様が形作られます。「糸の伸縮や織りの中で生まれる柄の『かすれ』。これこそが久留米絣の魅力」と話すのは広川町で120年以上続く「野村織物」の4代目野村周太郎(のむら しゅうたろう)さん。「家業を継ぐなら早い方がいい」と大手企業を退社したのが20年前。「絣を普段着にしていた世代は、絣の魅力を知っている。だから今も着続けてくれている。これからは若い人にもその魅力を知ってほしい」と伝統的な柄だけでなくシンプルな柄やポップな色合いの製品も手掛けています。

 「野村織物」は、糸の括り以外の全ての工程を自社で行っていることが最大の強み。「新しいことに常に挑戦したい」と毎年50以上ものデザイン性を重視した新しい柄を生み出しています。また、伝統的な技法を守りつつ、現代風にアレンジしたもんぺやスカートを次々に提案するなど、温もりのある久留米絣を今日も作り続けています。

野村織物有限会社
所在地 広川町新代1745
電話0943-32-0018
ファクス0943-32-1098

整経(せいけい)作業の様子

生地にするのは一度に12反分。840本を束ねた経糸が約160メートルの長さに整経(せいけい)される

「野村織物」作業場の様子 「野村織物」の4代目野村周太郎(のむら しゅうたろう)さんの写真
括りをして染色する様子

白い木綿糸は柄に合わせて括りをして染色

博多祇園山笠の長法被の写真

博多祇園山笠の長法被も久留米絣。町名の漢字を表現するのは至難の技

もんぺやスカートの写真

久留米絣の肌触りの良さを生かしたもんぺやスカート