福岡県には、地域で大切に継承されてきた祭りが数多くあります。
昨年、ユネスコ無形文化遺産に登録された「博多祗園山笠行事※」「戸畑祗園大山笠行事※」は、人々の交流と絆を深め、地域の維持に貢献していることが高く評価されました。
世代を超えて受け継がれる魅力とは何か。
それぞれの祭りに携わる方々の思いを通してご紹介します。
※博多祗園の「祗」のつくりは「氏」。戸畑祗園の「祗」は「ネ(しめすへん)」に「氏」
聖一国師(しょういちこくし)が、1241年疫病退散(えきびょうたいさん)を祈願したことが起源とされる博多祗園山笠※。7月になると福岡市内各所に公開される優美な「飾(かざ)り山笠(やまかさ)」と、「舁(か)き山笠(やまかさ)」を担ぐ博多の男たちの躍動する姿で、博多の街は祭一色となり「活気」に満ちあふれます。博多祗園山笠振興会※・豊田侃也(とよだ かんや)会長は博多祗園山笠行事※が受け継がれる理由を全員の心が一つになる「息が合う」と気概の「意気」という言葉で表現します。「『舁(か)き棒(ぼう)』は表は少し高く、見送りは少し低くなっているので、背丈や筋力が違っても『舁(か)き手(て)』は自分に合った位置で力を発揮できる。それが皆で息を合わせ無事に回り止めを駆け抜けた瞬間の喜びにつながるんです」。
舁き山を釘一本使わず組み上げる技を継承する山大工、博多祗園山笠振興会※・名越正志(なごし まさし)副会長も、今回の登録決定を受けたときの心境を、「長老から子ども、女性たちまで、地域が一丸となって先達から守り継いできた伝統を次世代に受け継ぎたい」という思いを強くしたと振り返ります。
これからも世界が認めた博多っ子の粋(いき)な心意気で人々に感動を与え、熱く走り続けます。
※博多祗園の「祗」のつくりは「氏」
祭りのクライマックスでもある7月15日早朝の追(お)い山(やま)では舁き山が、次々と博多の街を疾走。走る飾り山と呼ばれる上川端流(ながれ)でフィナーレを迎える
筥崎宮(はこざきぐう)参道先にある箱崎浜で7月1日は当番町のみが、9日は全流が行う清めの神事「お汐井取(しおいと)り」
博多祗園山笠振興会※
会長
豊田侃也さん
豊田侃也さんが、1950年発足の千代流に参加したのは5歳のとき。無形文化遺産登録の知らせを受けたときは「追い山の一番太鼓を耳にしたときと同じくらいの凛(りん)とした心持ちだった」
※博多祗園の「祗」のつくりは「氏」
博多祗園山笠振興会※ 副会長
山大工
名越正志さん
「山があるから、今の自分がある」と、名越正志さん。「舁き手の疾走が『動』の魅力とすれば、人形師や山大工といった匠の技が結集した山は『静』の魅力。じっくり鑑賞してほしい」
※博多祗園の「祗」のつくりは「氏」
戸畑の夏を彩る戸畑祗園大山笠※。昼に12本の大幟(のぼり)を立て練り歩く「幟大山笠」が、夜には「提灯(ちょうちん)大山笠」へと姿を変える全国でも珍しい祭りです。戸畑祗園大山笠振興会※の後藤雅秀(ごとう まさひで)会長は「幟大山笠の飾り物を外した台座に309個の提灯が一気に組み上がる様子は他の祭りにはない見どころの一つ」と話します。
武者絵(むしゃえ)などの刺繍を施した絢爛豪華(けんらんごうか)な幕類は、幟大山笠全体に典雅な雰囲気を纏(まと)います。また、笛、鉦(かね)、太鼓、銅拍子(どうびょうし)などを使って演奏される「戸畑祗園囃子※(ばやし)」も、次の世代へ大切に受け継がれています。行事の一週間前には「戸畑祗園ばやし研究競演会※」が開催され、地域の年配者から指導を受けた小学生がお囃子を披露します。
「今の、そして先の世代の子どもたちが大山笠を見て成長し、自分も参加したいと自然に感じてもらうことが大切」と後藤さん。数世代にわたり参加してきた林清助(はやし せいすけ)さんも「時代が変わっても、地域みんなで伝統や絆を守り継いできた。それがユネスコ無形文化遺産登録につながったと思う」と話します。
※戸畑祗園の「祗」は「ネ(しめすへん)」に「氏」
200余年の歴史を持つ北九州市戸畑区の伝統行事。祭りの期間は毎年7月第4土曜日を中日とする3日間で、中日に開催される大山笠競演会では4つの大山笠(東、西、中原、天籟寺(てんらいじ))が一堂に会する
昼は幟山笠で、金糸(きんし)などで刺繍を施した格調高く華麗な姿を披露
戸畑祗園大山笠振興会※
会長
後藤雅秀さん
「今回の登録は先人たちの努力のおかげ」と後藤雅秀さん。「戸畑の誇りとして後々の世代まで引き継いでいくとともに、提灯の明かりが北九州を明るく照らし、市の活性化にもつながれば」と話す
※戸畑祗園の「祗」は「ネ(しめすへん)」に「氏」
菅原神社(天籟寺大山笠宿)
総代会長
林 清助さん
「地元の人と新しく地域に仲間入りした人の絆を深める役割も担ってきた」という大山笠。世界に注目される祭りになることを願って、「ぜひ多くの人に見にきてほしい」と林清助さん
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