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2016 冬号 WINTER 通巻585号 平成28年12月20日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

木材の地産地消で森を元気に!

県土面積の約半分を森林が占める福岡県。建築材料として利用されるスギ・ヒノキ林の70パーセントが利用期を迎えています。福岡県では、植える・育てる・収穫するといった「健全な森林のサイクル」を保つため、県産材の利活用を通して木材の地産地消に積極的に取り組んでいます。

健全な森林のサイクルとその効果

 
森林のサイクル 植える・育てる・収穫する・使う
  • 豊かな水源の確保
  • 森林のCO2吸収力の向上
  • 洪水や土砂災害の防止
  • 農山村地域の活性化 など
 
 

育てる未来へ受け継ぐ、資源のバトン

 

 健全な森林のサイクルを保つ、その最前線は、スギやヒノキを伐採・植林する林業です。「日本の豊富な森林資源をもっと生かすために、まずは多くの人に県産材の魅力について興味を持ってほしい」と、福岡県八女森林組合の白木健太郎(しらき けんたろう)さんは話します。「数十年前に先代が植えて大切に育んだ木を、自分の世代が収穫し、次の世代のためにまた新たに木を植える」、そんな “資源のリレー”への責任とやりがいを胸に、日々作業に取り組んでいます。

福岡県八女森林組合林産課の皆さんと、班長の白木健太郎さん(写真左)

樹齢約50年のスギを収穫する現場。福岡県八女森林組合林産課の皆さんと、班長の白木健太郎さん(写真左)

 

加工する県産材の魅力を、大川から発信

 

 「日本有数の家具の産地・大川の有する高度な木工技術とデザイン力を生かした県産材の活用・PRに努めています」と話すのは(一財)大川インテリア振興センター理事長の土井彌一郎(どい やいちろう)さん。センターでは、2年前から地元企業と協力し、県と共催で県産材を活用した家具の展示会を開催しています。

 「香りの良さなど、スギ・ヒノキ材ならではの良さがある。これからはもっとブランドイメージを高める工夫が必要」と話すのは、参加企業の1つである木彩工房(きさいこうぼう)の小島嘉則(こじま よしのり)さん。家具メーカーの皆さんも「コストや加工技術などの理由から、県産材の活用はまだ発展途上ですが、情熱を込めたものづくりで、消費者にもその魅力を伝えていきたい」と熱い思いを語ります。

家具メーカーの皆さんと、土井彌一郎さん(写真前列左)

「試行錯誤を重ね、県産材活用のノウハウを蓄積してきました」と話す家具メーカーの皆さんと、土井彌一郎さん(写真前列左)

八女産スギ材ベンチの写真

八女産のスギ材のベンチ。脚にはCLT※パネルを使用。丈夫で寸法の変化の少ないCLTは、県産材の活用促進に期待されている

※CLT=Cross Laminated Timber
ひき板を並べ、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料

 

使う地域資源を生かした豊かな教育環境

 

 木のぬくもりが溢れる校舎で、元気いっぱいに学ぶ子どもたち。「第2回福岡県木造・木質化建築賞 木質化の部」で大賞を受賞した嘉麻市立嘉穂小学校では、嘉麻産のスギ材がふんだんに用いられています。県平均を上回る森林率約60パーセントの同市では、市内5小学校が統合されるに当たり、「地元の豊かな自然に触れながら学べる場を」と、校舎の木質化に踏み切りました。品質の高い大量の地元産材を確保するため、地元の森林組合の協力の下、建築発注の2年前から木材を調達。木質化によるぬくもりの創出と合わせ、全校児童が一緒に給食の時間を過ごせる「ランチルーム」を設置し、クラスや学年を越えたコミュニケーションを後押しするなど、さまざまな工夫が見られます。保護者をはじめ地域の人にも好評で、「自分と同じ土地で育った木が使われている校舎に、子どもたちも愛着を持ってくれているのでは」と、同校・大庭智子(おおば ともこ)教諭。地元産材と地域愛に包まれた空間は、今日も子どもたちの成長を優しく見守ります。

掃除をする児童の様子

掃除もランチタイムも全校児童で。日々、ふるさと産の木材と触れ合っている

嘉穂小学校の外観写真

嘉穂小学校の取り組みは今後の大規模木質化の参考になるものとして、賞選考の際に高く評価された

 
多目的スペースの写真

教室と廊下の間に設けられた多目的スペースは、学習に活用できるだけでなく、外気温の影響を緩和する働きもある

 
6年生の吉田柚子(よしだ ゆうこ)さん(写真右)と久保山朔灯(くぼやま さくと)さん(写真中央)、大庭智子教諭の写真

「木がたくさん使われていて居心地がいい」と話す、6年生の吉田柚子(よしだ ゆうこ)さん(写真右)と久保山朔灯(くぼやま さくと)さん(写真中央)、大庭智子教諭

「吉」は、つちよし

 
 

福岡県工業技術センター インテリア研究所

 インテリアや木質製品に関する研究開発・技術相談・強度試験などを通して県内中小企業を支援しています。2014年度福岡デザインアワードで大賞を受賞した「ぐっポス」や、薄板を用いた木製容器「木匠(もくたくみ)シリーズ」など、県産材を用いた商品開発にも力を入れています。

所在地 大川市上巻405-3
電話0944-86-3259
ファクス0944-86-4744

「ぐっポス」の写真

八女産のスギやヒノキを使用した「ぐっポス」。筆記時にペンを持たない側の手で握ることで良い姿勢が維持できる

 

 私たちの安全・安心、そして快適な生活を支えてくれる森林。その機能を最大限に生かすためにも、木材の地産地消は必要なのです。県産材は家具や建築物以外でも、紙製品やおもちゃなどに幅広く活用されています。

「福岡の森の木になる紙」の写真

県産材を原料とした「福岡の森の木になる紙」
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kininarukami.html