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グラフふくおか春号ロゴ

2020 春号 SPRING 通巻598号 令和2年3月19日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

久留米〜八女〜星野〜うきは周遊 道中のスナップ写真1 久留米〜八女〜星野〜うきは周遊 道中のスナップ写真2
 

新茶の里から耳納山地を越える

久留米〜八女〜星野〜うきは周遊105キロメートル

フクオカの新しい魅力を見つける CYCLE FUKUOKA

Photo by Atsushi Tanno

今回は、八女茶の里と筑後の魅力を探る旅。
サイクリストであり写真家の丹野篤史(たんの あつし)さんが、福岡県の広域サイクリングルートを基にして、久留米から、八女〜星野〜うきはを周回するルートを作成。
ライドを行ったのは、福岡に魅せられて東京から移住した自転車歴20年のサイクリスト。筑後の豊かな風景、自転車の魅力を聞きました。

 

輪行(りんこう)※ でフクオカの奥深くへ

 今回は、福岡から久留米まで輪行で移動。輪行は、フクオカの魅力を深く知る格好の手段。離れた目的地までの時間と体力を温存でき、走る自由度を広げてくれる。スタートとゴールを西鉄久留米駅とすると、筑後路を走るのにちょうどよく、まだ知らなかった奥深い筑後を訪ねることができた。

豊かな自然、そして出会い

 僕はライドを楽しむとき、できるだけ幹線道路を避けて走る。その方がその土地の普段の姿に触れることができるから。その土地の風景や暮らし、人の営みを感じることで、初めてその土地を知ることができる気がする。

 今回、印象に残ったのは八女中央大茶園。細い林道を抜けると、丘陵を一面に覆う茶畑が突如現れるという衝撃。そして、うきはの「つづら棚田」。鳥の声しかしない耳納(みのう)山地の尾根を越えて眼下に現れた、険しい谷の斜面を何百枚もの棚田が覆う圧倒的な風景。この深い山の奥に、僕の知らない何百年も続く人の営みがあることを実感すると、自分の存在の小ささ、そして未熟さを思い知らされる。でも、それもまた心地よい。自転車にまたがり、ペダルをこいで汗をかき、生身の体でそこにたどり着いたからこそ彼らの暮らしの奥にある人の力に気付くことができる。

 そして自転車の旅ならではの、偶然の出会いも。たまたま見掛けたみそ汁屋でだご汁を出してくれたおばあちゃん。「汗をかいたらこれを食べて」と、梅干しを持たせてもらった。その満面の笑顔にどれだけ元気をもらえたか。その土地の言葉で声を掛けてくれる温かさが、不意にこの地を訪れた僕を、少しでも受け入れてくれた気がして安心するのだ。

自転車は自由に

 どの道をどんなペースで行くのか。あの峠を越えるのか、この坂を下るのか。どんな景色を眺め、何を感じるのか。自転車の一人旅は全て自分で決めることができる。

 坂を登ってしんどい思いをするのも、その先で気持ち良い思いをするのも自分。それはとても自由な時間。自転車に乗り始めて20年。この自由さに気付いてから僕は大きく変わった気がする。6年前、東京から福岡へ移住したのも、このまちと自然の距離が近いことが大きな理由だった。まちからすぐに抜け出して、自分らしくライドできる幸せを感じている。

※輪行:公共交通機関を使用して自転車を運ぶこと

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