みやま市東部に位置する、清水山。その中腹にある清水寺は天台宗の開祖、伝教大師(最澄)によって開かれた古刹(こさつ)です。
画僧雪舟によって造園されたと伝わる本坊庭園は、山水画の世界を表わしたような自然の風景を巧みに取り入れた庭園です。正面の愛宕山と左右の山を借景に取り入れた美しさに加え、庭園の中央に「心」の字を模した池を配置し、2カ所の滝から流れる水が池に注がれています。この滝の流れの醸し出す水の音の響きはこの庭園に静寂と安らぎを感じさせてくれます。
春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉と一年を通じて楽しみは尽きませんが、住職の鍋島隆啓(なべしまりゅうけい)さんは何よりその魅力を、「観る人の心を癒すこと」と語ります。
五感をフルに生かし、流れる水音や野鳥の声に耳を澄ます。すると風景の見え方も変わり、庭の方から語り掛けてくる、と。
「この庭を見て自然の素晴らしさを感じたら、それは自分も素晴らしい存在であると気付いているのです。なぜなら人も自然の一部。ここはそんな生きる力を取り戻す場所なのです」。
心静かに眺めていたい。自然と一体となったこの庭は、きっとさまざまなことを教えてくれるでしょう。
本坊の縁側に座り庭園を眺めていると、いつの間にか「無」の心になっていることに気付く
本坊の表にある美しいコケもまた、
風情がある
本坊からさらに奥へ進むと現れる、
本堂や三重ノ塔まで足を伸ばしてみるのもおすすめ
英彦山系の山々、周防灘(すおうなだ)の海と、自然に囲まれた長閑(のどか)な風景が広がる築上町に、明治から昭和にかけて、炭鉱や錫(すず)、金などの鉱山経営で繁栄を極めた藏内氏の庭園があります。
実業家としての接客の場、もてなしの空間として造営された広大な庭園は、明治39年に主屋とともに完成しました。
旧藏内氏庭園の見どころは、大きな園池を中心に、二連の反橋(そりばし)、奥に造られた石組の枯滝(かれたき)にあります。当初は、これらが一番美しく観賞できる場所に、応接間を造り、来客をもてなしていました。
会社の繁栄に伴い、大きな接客施設が必要となり、建物を大増築。大勢をもてなせる大広間や煎茶の嗜(たしな)みもあることから茶室も増築しました。その際に大切にしたのが、やはり庭の眺め。大広間からは山並みを借景に庭全体が見渡せ、庭にせり出した茶室は池を近くに感じるなど、部屋ごとに多彩な景色を楽しめるよう工夫されています。「どの部屋も床の間の前に座ったところからの眺めが絶景であるように設計されており、施主の好みも見えてきます」と見どころを語る髙尾さん。
庭園をはじめ建物の細部にまでこだわった、藏内氏のもてなしの思いを堪能できます。
旧藏内氏庭園の魅力を案内してくれた築上町教育委員会の髙尾栄市(たかおえいいち)さん
さまざまな技法を取り入れた中庭も見応えがある
よく見ると金具の部分やガラス製のシェードにも透かしの家紋が入ったオリジナルの照明
庭園側からの眺めもまた違った美しさ
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