ひと昔前、
伝統工芸品は人々の暮らしに欠かせないものでした。
今では普段使いをする家庭も減ったように感じますが
実際に使ってみると、理にかなった使いやすさや
風土に合った機能、
それを生み出す職人の技の素晴らしさに気付かされます。
地域の素材を生かした伝統工芸品は、
人々の暮らしの中で使われ、
生き生きと輝き、日々の暮らしに潤いを与えます。
今回は、県内で作られる数々の伝統工芸品の中から、
一部を紹介します。
11月2日(金曜)から4日(日曜)、
第35回伝統的工芸品月間
国民会議全国大会 福岡大会
〜KOUGEI EXPO〜が開催されます。
この機会に、卓越した技と
地域が生み出した機能美を
暮らしの中に取り入れて
みませんか?
街中でスマホをのぞき込む。「博多献上」があしらわれた博多織もこんな光景になじむ伝統工芸品として新しいスタイルが提案されている
Hakataori
承天(じょうてん)寺の開祖と言われる聖一国師(しょういちこくし)と共に宋へ渡った博多の商人・満田弥三右衛門(みつた やそうえもん)が、帰国の際に織物技術を持ち帰った1241年から今年で777年。博多織は福岡県で一番歴史のある伝統工芸品です。博多織は丹念に織り込まれる絹糸が美しく、緻密に整えた経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を織り込んで作り上げる生地は見事です。仏具の「独鈷(どっこ)」と「華皿(はなざら)」を表した文様と、親子の強い絆を表す「縞(しま)」を配した「博多献上」の柄は、地域固有のデザインとしても知られます。着物文化で長く愛されてきた技術やデザインは、時代を超えて小物やバッグ、ステーショナリーなどにも生かされるようになりました。変わらぬ博多織の美しさと技術が、日常の暮らしの中でも輝きます。
経糸と緯糸がリズミカルに織られていく工房。博多織が生まれる現場は活気に満ちています
「伝統は革新の連続。最新の技術があってこそ継承されていきます」と、博多織工業組合副理事長の讃井勝彦(さぬい かつひこ)さん
問い合わせ
博多織工業組合 電話092-409-5162 ファクス092-409-5086
トートバッグやブックカバー、スマホケースも。いつでも持ち歩きたい博多織製品の数々
Aganoyaki
“やきもの戦争”とも呼ばれる「文禄・慶長の役」の後、豊前国・小倉藩によって福智山麓に窯が開かれました。400年以上の歴史を持つ上野焼は、江戸時代初期に茶人・小堀遠州(こぼり えんしゅう)が愛した茶陶として「遠州七窯(えんしゅうなながま)」の一つと全国に伝えられます。多彩な色合いと格調高い器が人気の上野焼ですが、身近な「食」の現場で生かしたいと奮闘している店もあります。福岡市東区のレストラン「mamagoto(ママゴト)」では、コース料理の全てを上野焼で提供します。食事を楽しむイメージを共有して5つの窯元と作った皿と器は、3種ずつ15種類にも。季節の移ろいを楽しむように皿の上の盛り付けも日々変わるそう。地元の食材を生かしたフレンチが描かれる上野焼、歴史をつないでおいしい笑顔に変えていく新しい舞台が始まっています。
「もっと自由に、もっと楽しく」。料理をおいしく楽しむのが店主・辻󠄀塚幸祐(つじつか ゆきひろ)さんのモットー
力強い土の皿が大胆な表現を演出します
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mamagoto 所在地 福岡市東区筥松3-12-20 電話・ファクス092-629-8272
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上野焼協同組合 電話・ファクス0947-28-5864
Kakegawa
イ草そのものをギュッと、長い茎のまま重ねるように緻密に織り上げる掛川。少ない経糸の線がデザインにリズムを刻みます。使用するのは高さ160センチメートル以上ある立派な九州産イ草のみ。夏に刈り取ったイ草を泥染めして乾燥し、必要な色に手染めしてさらに乾燥。こうして収穫から約1年後にようやく掛川の素材として使うことができるのです。柳川、大川、大木など筑後の夏を彩ってきた伝統工芸品は、織り上げられたデザインが多彩に空間を演出。爽やかな香りも心地よく、床に敷けば夏は涼しく、冬は温かくくつろぐことができます。
「九州のイ草は茎がしっかりとしていて高品質です」と語る掛川職人の石橋勝義(いしばし かつよし)さん。デザイナーとしても作品を発表している
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福岡県花筵(かえん)協同組合 電話0944-32-1010 ファクス0944-32-1363
協力:いぐさブティック草 所在地 大川市中木室23-1 電話・ファクス0944-87-7432
暮らしの中にイ草のあるスタイルを提案する掛川
座布団やランチョンマットなど、小物のニーズにも応える
Shuro Boki
棕櫚箒は日常使いこそふさわしい生活用品。ヤシ科の常緑樹であるシュロの皮をさばき、水洗いしてほこりを落とし、また乾燥。その工程を何度も繰り返し、手作業で仕上げた箒は美しく滑らか。まずは座敷で使い、次に板の間で、古くなったら土間や庭先でと、20年から30年は使い続けられるといいます。細くしなりのあるシュロの繊維はほこりやペットの抜け毛を吸い付けるのでフローリングにも最適。シュロの油分でつやも出るそう。使うほどに味わいが増すので、暮らしの中で愛着も湧いてくる掃除道具です。
生活に寄り添い、使うほど魅力を増す
問い合わせ
浮羽棕櫚箒保存会 電話0943-77-2212 ファクス0943-77-7811
八女市の旧寺崎邸での掃除風景
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筑前津屋崎人形巧房
電話・ファクス0940-52-0419
親子の触れ合いの中にも伝統工芸品を。「津屋崎人形」は素朴な素焼きの人形で力強い彩色が特徴。夏休みには福岡県庁において、縁起が良いとされるフクロウの形をした「モマ笛」の絵付け体験も行われました。
講師を務めたのは「筑前津屋崎人形巧房」の原田翔平(はらだ しょうへい)さん。素朴な人形に触れる子供たちと笑顔で対話した
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