本文へ移動
グラフふくおか春号ロゴ

2016 春号 SPRING 通巻582号 平成28年3月20日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

ふくおかスポーツ宣言!

スポーツライターの松瀬学さんが、福岡県のスポーツの“いま”に光を当てる「ふくおかスポーツ宣言!」。
最終回は、「県民すべてがスポーツに関わる」福岡県づくりを目指すさまざまな取り組みをご紹介します。

ふくおかスポーツ宣言!のマーク
 

スポーツがくれる感動と未来

“博多の森”を拠点に、20年にわたってファンに愛され続けてきたアビスパ福岡。
昨年5年ぶりのJ1復帰を果たした

 福岡にはスポーツがある。スポーツに触れれば、お祭り好きの血が騒ぐ。プロサッカー、アビスパ福岡のサポーター集団「ウルトラオブリ」の代表、山本圭吾(やまもと けいご)さんは言った。

 「福岡の人はイキがいい。試合になるとスイッチが入るんです。みんな熱くなる。パワー全開になるんです」

 アビスパ福岡は昨年の師走、大阪市長居陸上競技場でのセレッソ大阪との試合で、5年ぶりのJ1復帰を決めた。「全員守備・全員攻撃」をチームに植え付けた井原正巳(いはら まさみ)監督が宙に舞った。山本さんはスタンドで男泣きした。

 「ピッチの選手と一緒に戦っていました。やっと、(アビスパが)ふさわしい場所に戻れた。達成感以外、何もありませんでした」

 もはや、サポーターはチームと一体。一緒に喜び、一緒に泣く。1993年のオブリ結成以来、山本さんはチームの浮き沈みをずっと、見守ってきた。

 「高校スポーツも熱気があるし、福岡にはスポーツの土壌があると思います」

 そうなのだ。「プレーする」だけでなく、「見る」「応援する」うえでも、これほど恵まれた地域はそうない。僕の子ども時代は、西鉄ライオンズがあった。黄金時代は過ぎていたけれど、夏の平和台野球場の外野席で感じたファンの蒸した熱気が忘れられない。

 ライオンズは福岡を去り、10年経ってやってきたのがダイエーホークス(現ソフトバンクホークス)。目下、堂々の2年連続日本一である。このほど、ファーム本拠地が筑後市に完成した。野球好きの子どもたちの盛り上がりはいかばかりか。

 アビスパやホークス以外にも、プロバスケットボールのbjリーグ、ライジング福岡は時に泥臭く、時に華麗なプレーでファンを増やしている。北九州ではサッカーのJ2、ギラヴァンツも熱いサポーターに支えられている。ともに謳うは「地域密着」。子どもたちへのスポーツ指導にも力が入る。そうして、地域に笑顔が広がる。

 それから、ラグビーも外せない。コカ・コーラレッドスパークスも宗像サニックスブルースも国内最高峰のトップリーグで頂点を狙う。福岡は3年後のラグビーワールドカップ開催地。地元チームが強ければ機運も高まる。

 国際大会も盛んだ。毎年、福岡国際マラソン、宗像ではワールドラグビーユースが開かれるし、国際車いすテニス大会も30年以上、飯塚市で開催されている。地元の理解と支えがあってのことだろう。そうした実績を武器に、県内各地域がオリンピックやパラリンピックのキャンプ地誘致に乗り出している。

 そういえば、山本さんはこんなことも言っていた。「福岡はアジアの玄関口。スポーツでも世界につながっているんです。スポーツで一緒に夢を見ましょうよ」と。

 同感だ。スポーツは絶好のコミュニケーションツール。人と人をつなぎ、感動を与えてくれる。まちを豊かにしてくれる。だから、スポーツ王国・福岡の未来は明るいのだ。

■文:松瀬学(まつせ まなぶ)
1960年長崎県生まれ。福岡県立修猷館高校、早稲田大学を通じラグビー部主力選手として全国大会に出場。卒業後は共同通信社記者として、同社退社後はフリーのスポーツジャーナリストとして、さまざまな競技を世界各地で精力的に取材している。

 

福岡ソフトバンクホークスのファーム本拠地が筑後市に

市民の熱い思いと「筑後七国」の結束が実った

 福岡ソフトバンクホークスのファーム(二軍・三軍)本拠地が筑後市にやって来ます。雁の巣(がんのす)球場(福岡市)から移転することとなり、平成25年8月に行われた募集には5県から34の自治体が名乗りを上げました。筑後市の本拠地整備推進室・江崎紹泰(えさき つぐひろ)さん※1は、「『市民の機運の盛り上げ』、『広域一体となった誘致』を柱に活動を進めました」と話します。2カ月ほどで市の人口を超える7万6000人以上の署名が集まり、一次審査突破後には周辺4市2町が加わった「筑後七国※2」で共同声明を発表するなど、多彩な活動が実り、誘致が決定しました。

※1「崎」は、たつさき
※2 筑後七国(柳川市、八女市、筑後市、大川市、みやま市、大木町、広川町)

市民がスポーツとふれあう施設へ

 平成28年3月、新たなファーム球場「HAWKSベースボールパーク筑後」が、県営筑後広域公園の隣接地で始動します。オープンを前に地域の方からの問い合わせも多いとか。新球場の誕生は、市民がスポーツに親しむきっかけになっていきそうです。

ホークスファンに伝えたい魅力いっぱいの筑後

 「若鷹育成のため“世界一”のファームを」との思いが込められた「HAWKSベースボールパーク筑後」。目の前のJR筑後船小屋駅のそばには筑後七国の観光情報や球団情報を発信する観光案内所が設置されました。試合観戦の後は、恋のパワースポットとしても人気の恋木(こいのき)神社や疲れを癒やせる船小屋温泉をはじめとした、筑後の魅力にふれてみませんか。

筑後地域への誘致を目指して行われた総決起集会の様子

筑後地域への誘致を目指して行われた総決起集会。筑後地区の自治体関係者などが集まり、誘致への思いを一つにした

誘致活動の様子

行政・民間・市民と、誘致活動は、県南地域一帯を巻き込んだ

にこやかにPRする江崎紹泰さん

「オープン記念のイベントも盛りだくさんです」と、にこやかにPRする江崎紹泰さん

誘致決定を受けて開催された「筑後七国 ホークス野球教室」の様子

誘致決定を受けて開催された「筑後七国 ホークス野球教室」の様子。プロ野球選手の指導に、少年チームの選手たちは目を輝かせる

 

国際大会など、スポーツの感動あふれる福岡県

ギラヴァンツのホームタウン、北九州市
東京オリンピック・パラリンピックのキャンプ地誘致も展開

 サッカーJ2ギラヴァンツ北九州の新本拠地となる「北九州スタジアム」が来年3月に完成する北九州市では、同クラブと連携し、学校などの訪問や地域のにぎわいづくりといった取り組みを行っています。また、国内で唯一の車いすバスケットボールの国際大会(男子)を毎年開催しています。世界のトップアスリートが集結し、熱戦を展開。海外の選手が市内の小学校を訪問する交流事業も行っています。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機としたスポーツ振興を進めている北九州市。今年1月には、自治体が特定の国・地域とスポーツや文化面での交流を行う「ホストタウン」に、タイを相手国として登録されるなど、オリンピック・パラリンピックのキャンプ地誘致への機運はますます高まっています。

 
ギラヴァンツの子どもサッカー教室の様子

子どもサッカー教室など、地域に根ざした活動で市民に愛されているギラヴァンツ

「北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会」の様子

スピード感あふれるプレーや激しいぶつかり合いが展開される「北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会」

 

国際車いすテニス大会を30年以上開催
パラリンピックのキャンプ地誘致を目指す飯塚市

 1985年から毎年「飯塚国際車いすテニス大会」を開催し、国内外の身体障害者のスポーツ交流・相互理解を深めている飯塚市。運営資金を企業や市民からの寄附金で賄い、通訳や移送スタッフなどを延べ2000人の学生、市民ボランティアが担う「イイヅカ方式」と称される運営方式は、世界的にも高く評価されています。飯塚市では、2020年のパラリンピックで選手たちに最高のパフォーマンスを発揮してもらえるよう、このおもてなしの心に満ちた運営実績のもと、車いすテニス競技のキャンプ地誘致を進めています。

「第31回飯塚国際車いすテニス大会(JAPAN OPEN 2015)」優勝者の国枝慎吾(くにえだ しんご)選手

「第31回飯塚国際車いすテニス大会(JAPAN OPEN 2015)」優勝者の国枝慎吾(くにえだ しんご)選手。大会は、国際テニス連盟(ITF)から全米オープンなど世界四大大会に次ぐスーパーシリーズ(SS)に格付けされている