なぜ福岡はラグビーが強いのか。藤田監督は即答した。「ラグビースクールの指導者がすごいからでしょ」
そうなのだ。福岡県には幼稚園児、小・中学生を対象としたラグビースクールが24クラブもある(2015年3月時点)。
名門「かしいヤングラガーズ」の初代会長で現在はアドバイザーを務める魚住俊治(としはる)さんは「地元企業の理解もあり、芝生のグラウンドを練習場所として借りることができた」と振り返る。子どもたちにとって、けがや汚れの少ない芝生を使えることはとても幸福なことなのだ。
いま、かしいヤングラガーズでは幼稚園児から中学生まで約200人、指導者約70人が活動している。2008年には女子を対象にした「福岡レディース」も生まれた。
ワールドラグビーユース交流大会の女子部門で準優勝を飾った福岡レディースの18歳、野田夢乃(ゆめの)選手は日本代表候補のメンバーでもある。野田選手は小学校4年生から、かしいヤングラガーズでラグビーを始めた。
「鬼ごっこ感覚でできるのが魅力だった」と顔をほころばす。野田選手は練習で芝生以外のグラウンドを使ったことはないそうだ。豊かな才能、恵まれた環境、指導者の情熱。これらが一体となって、福岡のラグビー力を押し上げている。
福岡県はこれまで、数多くの日本代表を輩出してきた。いまでも、福岡堅樹(けんき)選手をはじめとする多くの選手が活躍している。そうした中、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)は日本で開催されることが決定した。福岡の地でも世界最高クラスの真剣勝負が展開される。
海外から観戦客がどっと押しかけ、福岡の認知度がさらにアップする。全国各地からもラグビーファンが集い、福岡の人々との交流も促進される。地域の一体感や活力が醸成され、豊かなまちづくりの契機ともなるだろう。もちろんラグビー選手にとってはあこがれの夢舞台である。
福岡から世界へ。ヒガシの服部綾(りょう)主将は、「日本一になりたい。そしてW杯でプレーしたい」と目を輝かせた。
熱狂。友情。団結―。4年後の福岡はラグビーでさらに熱くなっているだろう。
古賀市出身の22歳。5歳のとき、玄海ジュニアラグビークラブでラグビーを始めた。福岡県立福岡高校時代に花園出場。現在、筑波大学4年生。
―玄海ジュニアラグビークラブ時代の一番の思い出は。
小6の新人戦です。ダークホースだった自分たちが同率優勝をしました。自分がボールをもらって、一気にサイドラインを駆け上がって、トライをしたのです。4人抜きかな。みんな飛び上がって喜んでくれました。ラグビーを楽しむことを優先させてくれたおかげで、ここまで続けてこられた。福岡には楽しい思い出がたくさんあります。
―なぜ5歳でラグビーを。
父がクラブを見つけてきたんです。緑色のきれいな芝生のグラウンドを使わせてもらっていると聞いて、行ってみたら、ほんとうに素晴らしいグラウンドでした。芝生だと怖がらずにタックルにもいけますし、そこで相手に触れられずに抜いていく、走る喜びを知りました。小・中学校時代にしっかり基礎をたたき込まれたと思います。
―福岡高校時代の思い出は。
もちろん花園(全国大会)の1回戦で東京都の本郷高校に勝ったときです。でも、高校時代はけがもあった。その経験の中で体のケアや、自分の走りをコントロールすることの大事さを学びました。
―大学で活躍し、2年前、日本代表にも選ばれました。ことしのW杯に懸ける思いは。
個人としては、W杯の試合に先発し、トライをとって勝利に貢献し、チームとしては、1次リーグで3連勝で準々決勝に進出したいです。
―夢は。
4年後のW杯にも出場して、大会を大いに盛り上げたいです。選手生活を全うした後は、ドクターとして後輩たちを支えていけたらと思います。
アジア初となるラグビーワールドカップが2019年に日本で開催されます。
県では、産学官で「ラグビーワールドカップ2019福岡招致委員会」を設立し、福岡市での開催実現のためさまざまな活動を行ってきました。その取り組みが実り、オリンピック、サッカーワールドカップと並んでスポーツの三大イベントと呼ばれる大会が、4年後の秋、「ラグビー王国」福岡に。多くの県出身選手を含む、日本代表の活躍、そして大会の成功に向けて、大きな声援を送りましょう。