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グラフふくおか 2015夏号 summer 通巻579号平成27年6月20日発行(季刊) 発行 福岡県 県民情報広報課

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福岡の、戦後70年

「頓田(とんた)の森」の悲劇

当時を知るシイの木に思いをはせる金堀さん写真:当時を知るシイの木に思いをはせる金堀さん
 昭和20年3月27日午前10時ごろ、終業式が行われていた立石国民学校(※)の講堂で、5年生だった金堀(かなほり)重輝さんが聞いたのは、警戒警報から避難警報へと変わるサイレンでした。B29爆撃機の編隊が豊後水道を北上し、大刀洗飛行場方面へ向かっているとの情報が入り、すぐに集団下校が始まりました。
写真:頓田の森平和花園

子どもたちの絶好の遊び場だった頓田の森。皮肉にも足の速かった高学年の児童がいち早く逃げ込み被害に遭った 頓田の森平和花園
朝倉市頓田589-4
※駐車場はありませんのでご注意ください。
電話 0946-23-1227(朝倉青年会議所)

 頓田の森からすぐ近くにある自宅の防空壕へ逃げ込む直前、金堀さんはキラキラと光るB29から、鉛筆の芯のような爆弾がバラバラと落ちていくのを目撃します。ドーンという凄まじい爆音と衝撃。頓田の森に落とされた爆弾によって、ここへ逃げ込んだ31人の子どもたちが命を落としました。
 「辺り一面が血の海。着物も髪の毛も剥がれ、言葉にできない光景を、昨日の事のように思い出します」。84歳になった今も、当時の体験を戦争を知らない世代へと語り継ぐことが自分の使命と、金堀さんは語気を強めます。
※現・朝倉市立立石小学校

今夏の関連展示会情報
戦後70年企画展 「物言わぬ証言者」 遺物が語る沖縄戦

筑前町立 大刀洗平和記念館

7月15日(水曜)まで開催中
9時から17時※入館は16時30分まで
料金 大人(大学生以上)500円、高校生400円、小・中学生300円

戦後70周年記念講演

アクロス福岡イベントホール

戦争体験者による講演(予定)など
8月15日(土曜)14時から16時40分(予定)
料金 入場無料

福岡県戦時資料展

(福岡会場)アクロス福岡交流ギャラリー

8月11日(火曜)から16日(日曜)9時から17時

(北九州会場)ウェルとばた交流プラザ

8月4日(火曜)から9日(日曜)
9時から17時(最終日は15時まで)
料金 入場無料

戦争を伝える、鳴らない鐘

直方市「雲心寺」にある代替梵鐘。
裏には「皇紀二千六百二年」(昭和17年)と記されている
写真:直方市「雲心寺」にある代替梵鐘

雲心寺(うんしんじ)
直方市山部560 電話 0949-22-2228

 昭和16年、鉄や銅など、銃や砲弾に使う物資の不足を補うため、「金属類回収令」が出されました。各家庭で使われる鍋や貴金属はもちろん、お寺の梵鐘(ぼんしょう)までもが供出され、鐘のなくなったお寺には、コンクリートや花こう岩製の梵鐘が代わりに置かれました。直方市にある雲心寺には、音が鳴らない代替梵鐘が現存しており、当時の記憶を今に伝えています。