「お店に立つときは背筋を意識しています。家族も応援してくれているのでうれしい」と小田さん

　「家でじっとしていてもつまらない。頭のサビ落としにもいいかな、と思って。自分にできる範囲でがんばってみようと思ったの」と目を輝かせるのは小田由美子さん（68歳）。今年２月から、福岡県70歳現役応援センターの紹介で、高齢者向け雑貨店「ホームカミング」の販売員として活躍する、笑顔のすてきな女性です。ガーデニングなどの趣味本、グレン・ミラーやスタン・ゲッツなど懐かしいジャズのCD、おしゃれなデザインの老眼鏡、カラフルな雑貨…。さまざまな商品が並ぶ店内はまるでおもちゃ箱のよう。小田さんは、高齢者の興味を引く商品の仕入れや、店内レイアウト、商品を紹介するポップ広告などを担当しています。

　「当店に俳句コーナーができたのも、小田さんのアイデアなんですよ」と店長の鈴木健司さん（39歳）。「お客さまからすれば、僕はいわば息子世代。お客さまが求める商品と自分のイメージの間にズレがあるのでは、と不安もありました。そんな時、応援センターのあっせんで小田さんに来てもらいました。お客さまの感覚が分かる、わが社の貴重な戦力です」と頬を緩めます。

左から3人目が南里センター長。「応援センターでは、履歴書の書き方講座や模擬面接も行っています。気軽にご相談ください！」

　「長年の経験を生かせる仕事に就きたいのですが…」「こんな求人もありますよ。挑戦してみてはどうですか」 　JR博多駅のすぐ近く、福岡県70歳現役応援センターには、連日、たくさんの高齢者が訪れ、相談員と進路についてじっくり話し合っています。

　再就職だけでなく、シルバー人材センターやＮＰＯ・ボランティア団体での活動など、幅広い選択肢の中から進路を選ぶことができるのが特徴。昨年4月の開所以来、相談件数は約6200件。応援センターの登録者約1600人のうち、約400人が企業などで活躍中です。

　応援センターでは、企業に対する働きかけにも力を入れています。職員が企業を訪問し、独自に開拓した求人は約300件。また、定年延長など「70歳まで働ける制度」の導入についても、50社を超える企業を新たに開拓しました。

　南里妙子センター長は、「高齢者の皆さんは、豊かな人生経験と、優れた知識をお持ちです。そんな皆さんと、人材を求める企業やNPO・ボランティア団体をつなぐ役割を果たしたいですね」と言葉に力を込めました。