ブルーカーボン
環境と海を救う

私たちの食卓を支える豊かな海産物を育み「海のゆりかご」といわれる藻場。藻場を形成する海藻や海草の光合成によって蓄積される炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれ、脱炭素社会の実現に向けて大きな役割が期待されています。県では昨年、産学官による「福岡県ブルーカーボン推進協議会」を設立し、海洋環境の変化やウニによる食害で荒れてしまった藻場を再生させる試みを進めています。ウニの駆除や採捕・養殖を通じて豊かな海を取り戻すための奮闘の舞台裏に迫りました。

豊かな海を残す!
水産高生の挑戦

(写真提供)福岡県立水産高校

潜水技術 活動に生かす

県立水産高校(福津市)では、潜水士を目指す海洋科マリン技術コースの3年生が、学校で培ったダイビングの技術を生かし、藻場の保全のためのウニの駆除や、陸上の草で藻場を再現した「インスタント藻場」の設置・観察に取り組んでいます。

同校は今年7月、福岡県海洋開発協会や福岡県漁業協同組合連合会などと、海で働く人材の育成で協力する「みらうみプロジェクト」の協定を締結。専門家の持つ高度な専門知識や技術で生徒の活動を後押ししています。

今年6月、同コースの「藻場保全班」が恋の浦海岸で活動に着手。生徒たちはウェットスーツを着て1時間ほど海中に潜り、海藻を食べ尽くすウニを間引く作業を進めました。海中では波の流れに逆らいながらバランスを保つ必要があるため、作業は大変だといいますが、同班の渡邉憩(わたなべけい)さんは「少しでも魚を増やすことにつながればうれしい」と話します。

「インスタント藻場班」は九州大学水産実験所の指南を受け今年5月、福津市内の水辺に生えているヨシで作った藻場を学校前の海中に設置。3週間かけて、魚の隠れ家や産卵場所になるかどうか、様子を定期的に観察しました。今後も設置場所を変えるなどして、観察データの収集・分析を行う計画です。同班の古藤真裟斗(ことうまさと)さんは、「後輩たちに役立つデータを残したい」と意気込みます。

こうした取り組みを校外に発信するのが、「広め隊」です。小中学校や県ブルーカーボン推進協議会の事例報告会で、仲間を代表して活動の内容や成果を発表しています。原動力は「将来、海で働く仲間にたくさん入学してほしい」との思い。「豊かな海を残すことの大切さもしっかり伝えていきたい」と、広め隊の川野大地(かわのだいち)さんは話します。

渡邉憩さん
古藤真裟斗さん
川野大地さん

福岡県立水産高校

1954(昭和29)年に創立され、翌55(同30)年、福津市の景勝地・津屋崎海岸に開校した。4級海技士や潜水士の資格取得を目指す海洋科、食品の開発や流通について学習する食品流通科、水生生物の生態や漁業経営などを学ぶアクアライフ科の3学科がある。全国優勝した端艇部など、部活動も盛ん。定員160人。

福津市津屋崎4-46-14

0940-52-0158

ウニが拓く!
漁協の未来

2200個販売「新たな収入源に」

玄界灘と響灘からなる筑前海に面した岡垣町の波津漁港。波穏やかな港内に漂う2基のイカダに結びつけられたカゴでは、約3000個のムラサキウニが養殖されています。

「先週の餌もきれいになくなっている。順調に育っている証拠です」。遠賀漁協の参事で3年前から養殖に取り組む河村拓磨(かわむらたくま)さんは、笑顔を見せました。

ワカメの端材をウニの餌として再利用

筑前海では2011(平成23)年頃からムラサキウニが増え続け、藻場を食い荒らし、磯焼けが進みました。その結果、増えたムラサキウニは身が少なくて売り物にならず、取る人が減っていきました。

漁協では、高齢化を理由に漁をやめる組合員が多い一方で、後継者が不足するなど、別の課題も山積しています。そこで、河村さんは「船を下りた組合員や、漁業に就いたばかりの後継者の収入源になり得る」と、ムラサキウニを採捕し、養殖を始めました。

ウニの状態を確認する河村さん

餌となるワカメのやり方を試行錯誤する中で、多くのウニが死んでしまうトラブルにも見舞われましたが、県水産海洋技術センターや県立水産高校などの協力を得て、昨年度は2200個の養殖ウニを販売して収益を上げることができました。

河村さんは「安定供給を続けられる手法を確立し、味や色など品質にもこだわれるように取り組みを続けたい」と表情を引き締めました。

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