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2015 冬号 WINTER 通巻581号 平成27年12月20日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

ふくおかスポーツ宣言!

スポーツライターの松瀬学さんが、福岡県のスポーツの"いま"に光を当てる「ふくおかスポーツ宣言!」。今回は、スポーツによって地域を盛り上げようと頑張る皆さんと、その取り組みを紹介します。

ふくおかスポーツ宣言!のマーク
 

スポーツで広がる地域の笑顔 しいコミ スポーツまつりの様子

築上町で開かれた「しいコミ スポーツまつり」。
年に1回の体力測定やニュースポーツで、参加者は爽やかな汗を流した

 

 「笑顔」。築上町の総合型地域スポーツクラブ「NPO法人しいだコミュニティ倶楽部」(愛称・しいコミ)はこの言葉をモットーとし、10年の歳月を重ねてきた。

 秋の某日。周防灘(すおうなだ)をのぞむ海岸沿いの体育館では、「しいコミ スポーツまつり」が開かれていた。ビートルズのヒット曲がBGMで流れる。6歳の男の子から83歳のおじいちゃんまで、ざっと60人がつどっていた。障害のある人たちも参加している。

 イベントは佳境を迎え、「ディスクホール」という競技が行われていた。知的障害者の女性が台座のゴールの前でからだを硬直させていた。皿のようなディスクを投げようとしたところで緊張のせいか腕がまったく動かなくなったのだ。「イチ、ニイのサン!」。全員の掛け声と手拍子がかかる。

 1分、2分、3分…。周りの声援に押されて、その女性がついにディスクをゴールに投げ入れた。「おぉー」「ヤッター」。歓喜の爆発。女性も顔をくしゃくしゃにして喜ぶのだった。

 「あれですよ、あれ」と同クラブの久本成美(ひさもと なるみ)理事長は声をはずませる。「ここでは障害者も健常者もないんです。みんなで一緒に笑う姿こそ、このクラブのいいところなんです」

 今、全国では約3500の総合型地域スポーツクラブが活動している。福岡県内にも79のクラブがある。

 2005年、合併前の旧椎田町に、33の自治会から約10人ずつ、300人余りが参加して"しいコミ"はスタートした。当時はほとんどが高齢者。「"病院ではなく、クラブへ。高齢者を家から出しましょう"がコンセプトだった」と久本理事長は振り返る。

 現在、会員が600人弱のしいコミは年会費が1人3千円と安い。年1千万円弱の事業予算は、会費やイベント参加費だけでなく、委託を受けた施設の管理、清掃、グラウンドの草刈りなどの収益で賄っている。

 クラブには人気のピンポン教室をはじめ、太極拳、カラオケ、囲碁・将棋、書道などさまざまな教室が。子ども向けのヒップホップダンス教室もにぎやかである。5年前に家族で築上町に引っ越してきた白川美香(しらかわ みか)さんも「このクラブを通じ、地域の輪が広がりました」と喜ぶのだ。

 しいコミの活動によって健康年齢が上がり、障害者と健常者が互いの理解を深めていく。築上町教育委員会の古市照雄(ふるいち あきお)さんは言う。

 「クラブは自然に出てくる笑いでいっぱいです。スポーツが基点となって、文化や福祉、モノ作り、子育てなど、いろんな地域活動につながっています」

 笑う門には福来る。紅葉もクラブも、環境が色をつくっていく。

■文:松瀬学(まつせ まなぶ)
1960年長崎県生まれ。福岡県立修猷館高校、早稲田大学を通じラグビー部主力選手として全国大会に出場。卒業後は共同通信社記者として、同社退社後はフリーのスポーツジャーナリストとして、さまざまな競技を世界各地で精力的に取材している。

 

年齢や障害の有無を超えてスポーツが結ぶ地域の絆

 

住民の手で運営される総合型地域スポーツクラブ

 地域で身近にスポーツに親しめる新しいタイプのスポーツクラブが、「総合型地域スポーツクラブ」です。子どもから高齢者までの多世代が、さまざまなスポーツをそれぞれのレベルに合わせて楽しむことができ、地域住民の手で自主的に運営されるのが大きな特徴。クラブの活動を通して、「住民が主体的に参画する地域スポーツの整備・充実」が図られています。

イベントにも、自然に一体感が生まれる工夫が

 「しいだコミュニティ倶楽部」の自主運営の素晴らしさは、普段は別々の教室に参加する会員が一堂に集う「しいコミ スポーツまつり」からも伝わってきます。どの競技にもゲームの要素を加える工夫があり、楽しみながら互いに応援するうちに、くじ引きで決めた即席のチームには自然と一体感が。「まつり」の名のとおり、スポーツが地域を一つにしていました。

みんなで一つのスポーツを楽しむ喜び

 久留米市の総合型地域スポーツクラブ「桜花台クラブ」では、スポーツのルールや用具を障害の種類や程度に適合(アダプト)させることによって、年齢や障害の有無に関係なく楽しめる「アダプテッドスポーツ」に取り組んでいます。

 車いすで協力してボールを運びゴールを決める。参加者全員で一つのスポーツを楽しむ喜びを地域みんなで味わっています。

総合型地域スポーツクラブの写真

応援や協力を通じて自然と仲が深まっていく。休憩中の談笑も地域コミュニティづくりに一役買っている


ディスクホールの様子

「ディスクホール」の様子。ゴールに入ったフライングディスクの数を競う


ボーリングでビンゴの様子

「ボーリングでビンゴ」は、倒したピンの数でビンゴを楽しむ「しいコミ」スタッフ考案のオリジナル種目

 
車いすスポーツの元福岡県代表、元日本代表の指導の様子

桜花台クラブでは、車いすスポーツの元福岡県代表、元日本代表も指導に加わっている

アダプテッドスポーツの様子

「楽しいからまた参加したい」。「アダプテッドスポーツ」の参加者は年々増加している

 

爽快に走って、ゆっくり歩いて筑後を満喫

 

地元のおもてなしもうれしい「走りとーなる筑後。」

 県と筑後12市町でつくる「筑後田園都市推進評議会」では、毎年秋から春にかけて地域で開催されるスポーツ大会を通じて、筑後地域を知って、楽しんでもらうプロジェクトを実施しています。

 耳納連山(みのうれんざん)の緑、雄大な筑後川の流れなど、このエリアには思わず走り出したくなる風景がいっぱい。だから共通テーマは、「走りとーなる筑後。」。どの大会も沿道の声援、町ごとに工夫を凝らしたおもてなしが自慢です。

記録を狙う、仲間と楽しむ、ゆっくり歩く…多彩な大会

 記録を狙う本格派も参戦するハーフマラソンやチーム一丸となってゴールを目指す駅伝、地域の魅力に触れながら「さるく(ゆっくり散策する)」ウオーキングなど、大会の種類は多彩です。大会後はグルメや温泉も楽しめます。

 複数の大会に参加して特産品などがもらえるスタンプラリーも、平成28年1月から始まる予定です。

 大会情報は http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/hashiritonaru.html

 
奥八女黒木ハーフマラソン大会の様子

八女市で開催された「奥八女黒木ハーフマラソン大会」には、老若男女約900人が参加

大木さるこいフェスタでゆったりウオーキングの様子

「大木さるこいフェスタ」では、町内各地区のおもてなしを受けながら、ゆったりウオーキング

PRイベントの様子

福岡市で行われたPRイベントで「わがまち」の魅力を発信

 

ふるさとへの思いをたすきに「福岡駅伝」が開催されました

 

11月22日、第2回市町村対抗「福岡駅伝」が、県営筑後広域公園で開催されました。県内各市町村の各世代の代表で編成されたチームが、ふるさとへの思いを一本のたすきに込めたレース。多くの人が応援に駆け付ける中、選手たちはエールを受けて力走しました。大いに盛り上がった今大会では、北九州市が優勝、福岡市が準優勝、久留米市が3位に入賞しました。

福岡駅伝ゴールの写真

2年連続の優勝を果たした北九州市。県内各チーム、中学生からシニアまでの男女が一本のたすきをつないだ