自分で作った茶碗で、自分で作ったお米を食べる。「すいとー小石原」では、地域の伝統である「陶芸」と、自慢の米を作る「農業」の体験イベントを通じて、地域の魅力を発信しています。
参加者は家族連れが中心。小石原の澄んだ空気の中、子どもたちは初めての田植えに夢中になって泥だらけに。田植え後も、草刈りや稲刈りを通じて米作りを体験します。「小石原のお米はただでさえおいしいのに、自分で体験した後は格別ですよ」と代表の熊谷裕介さん。もちろん、茶碗は陶芸体験で自ら作ったものを使用します。
参加者からは「子どもがご飯をたくさん食べるようになった」と、うれしい声も。その評判も広がり、都市部から多くの参加者が訪れるようになりました。すいとー小石原の活動は、郷土と都市部の懸け橋として動き始めています。
(1)稲刈り体験で汗を流した参加者たち (2)「ゆくゆくは、小石原の魅力に共感し、移住してくれる人が増えれば」と語る熊谷さん (3)「焼き物を買うだけでなく作る体験もしてもらえたら」と始まったのが陶芸体験
美しい石積の棚田が約400枚も広がる竹地区。「日本の棚田百選」にも認定された、東峰村を代表する景観です。約400年の歴史を持つこの棚田での米作りを守ろうと、平成12年に結成されたのが「竹地区棚田景観保全委員会」です。
農機具を搬入できない棚田での作業はかなりの重労働。さらに、ほとんどが兼業農家なので、休日はもちろん、田植え後は仕事の前後の時間を使って毎日足を運びます。最近では、「棚田の火祭り」や農業体験など、棚田を知ってもらうための取り組みにも力を入れています。
「楽しんでもらえることも大切だけれど、田舎での暮らしは美しいだけではないんです。厳しさもあることを知ってもらえたら」と会長の梶原光春さんは語ります。美しい景観を残していくため、棚田を守る活動は続いていきます。
(1)棚田の傾斜、水面の反射を生かしたたくさんの明かりが幻想的な「棚田の火祭り」 (2)「農業体験に10年近く通っている人もいます」と話す梶原さん (3)農業体験は、たっぷり汗を流して働く充実した内容
小石原焼の伝統を守り、その魅力を広く知ってもらおうと結成された「小石原焼陶器協同組合青年部」。窯元の若手12人が中心となり、展示会への出品や、他県の窯元との交流など、さまざまな活動を行っています。
昨年10月に開かれた展示会では、伝統を受け継ぎながらも、現代の暮らしに合ったデザインを取り入れた作品を出品。同じテーマでそれぞれが新作を用意するため、互いの作品から学ぶことも多いのだそう。
「伝統という軸を守りつつ、自分が作りたいと思う自由なデザインに挑戦しています」と話すのは、部長の太田圭さん。
「作品づくりを通して、若手が伝統を守る大切さを実感し、互いに刺激し合う。それが小石原焼の発展につながります」と、頼もしく未来を見つめます。
(1)小石原焼伝統産業会館にある登り窯。機械窯ではなく登り窯で焼く伝統的な手法を受け継ぐため、青年部も毎年利用する (2)「作品を見ていただける機会をもっと増やしたい」と太田さん (3)青年部のメンバーの作品は、道の駅「小石原」にも並ぶ
竹灯籠や巨大なぼんぼりにともされる3000個以上のろうそく。幻想的な雰囲気で多くの人を魅了する「小石原千灯明」は、毎年9月に小石原地区の高木神社で開催される祭りです。
祭りの原型はこの地に昔から伝わる「高木ぎおん祭」。年々活気を失っていく祭りを目の当たりにし、「みんなが楽しみにする祭りにしたい」という思いから、約20年前に生まれ変わり誕生したのが「小石原千灯明」です。
手作りのぼんぼりの設置から始まった祭りは、竹灯籠や子どもたちの絵灯籠へと拡大していき、今では地区の枠を超えて、みんなで楽しむイベントに。
「子どもたちに故郷の思い出を伝えていきたい」と話すのは、小石原千灯明実行委員会代表の福嶋秀作さん。地域を盛り上げる活動の火は、人々の心に故郷の記憶をともし続けます。
(1)神社を彩る竹灯籠は地域住民みんなで作ったもの (2)「地域住民が夢中になる祭りにしたい」とほほ笑む福嶋さん(右)と、祭りの発案者柳瀬良行さん(左) (3)同時開催の「小石原夜神楽」も見どころの一つ