大川家具 の技術を生かす 〜イシモク・コーポレーション〜
大川家具の技術を、新しい分野にも生かしたい。昭和23年に製材所として創業した株式会社イシモク・コーポレーションは、これまで培ってきた接着技術を生かし、ドアや玄関収納などの内装商品の製造や居住空間のプロデュースを行っています。「北部九州が自動車産業で盛り上がりを見せる中、大川家具の技術を自動車にも生かしたいと、平成19年に新たな部署を立ち上げました」と語るのは、イシモク・コーポレーションの石井泰彦社長。高度な技術力が求められる自動車の内装部品において、トヨタ自動車九州の関連会社とともに、ハンドルやインパネなどの開発を行いました。
こうした縁を通じて、トヨタ自動車九州から輝匠の製作の話があり、東洋突板工芸と一緒に、シートの製作に取りかかりました。突板の染色に携わった技術開発部の緒方利恵さんは「木は一枚一枚違う、天然の素材です。トヨタ自動車九州さんが求める色に、むらなく均一に染めることが大変でした」と振り返ります。染まりにくいといわれる杉の木を、要望のあったメタリック感のあるグレーにするために何度も試行錯誤を繰り返しました。
「480年の歴史で培われた、大川家具の削る、組む、接合するといった技術を、もっと進化させていきたい。そして、消費者のニーズに応える商品を作っていくため、研究・開発をやっていきたい」と石井社長。イシモク・コーポレーションの挑戦は続きます。
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〜東洋突板工芸〜
輝匠のシートバックやヘッドレストに使用されている木の織物。これを可能にしたのが、明治時代から大川市に伝わる「突板(つきいた)」と新たに開発された「木織(きお)り」の技術です。
木材を薄さ0.2ミリメートルにスライスした「突板」。
美しい木目を表現するため、壁材や天井材の表面などに使用されます。この突板を2ミリメートルに裂き、西陣織のよこ糸と織り合わせるのが「木織り」といわれる技術。突板に特殊な樹脂を染み込ませることで、木に柔軟性と耐久性を持たせ、糸のように編むことができます。開発した東洋突板工芸株式会社は、この技術で、平成21年に経済産業省の「ものづくり日本大賞」を受賞しました。
大川市で生まれ育った東洋突板工芸の大関一宏社長は、「大川家具の繁栄と衰退をみて、家具だけでなく新しいことを始めたいと思い開発しました」と語ります。世界で初めて実現された木の織物は、バッグやスマートフォンのケースなどで製品化され、その可能性は無限に広がっています。「最近は外国製の輸入家具が多いが、大川家具の本物の良さを、そして日本のものづくりの素晴らしさを伝えていきたい」と抱負を語ってくれました。
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