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福岡県だより2015年5月号
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ふくおかのキラめくひと

MADE IN KYUSYU「輝匠(きしょう)」

 美しく、肌触りのよいシートは「博多織」。柔らかく、しなやかな木のシートバックは「大川家具」。その他、有田焼(佐賀県)、長崎べっ甲(長崎県)、別府竹細工(大分県)、八代いぐさ・肥後象嵌[ぞうがん](熊本県)、飫肥[おび]杉工芸(宮崎県)、薩摩錫器[すずき](鹿児島県)といった九州各地の伝統工芸と、乗りやすく美しいデザインを追求し続ける自動車の生産技術を融合させて、トヨタ自動車九州株式会社と各メーカーが共同製作した車が、九州オリジナルカスタマイズカー「輝匠」です。
 平成26年1月に開催された「福岡モーターショー」に出展された輝匠は、4万8千人を超える来場者を魅了しました。同年10月には、伝統工芸分野の振興に貢献した団体として、トヨタ自動車九州が「伝統的工芸品産業功労者等経済産業大臣表彰優良団体賞」を受賞。伝統工芸の美しさや新たな可能性、九州が誇るものづくりの心を、多くの人に伝えてくれました。

博多織の伝統を生かす〜サヌイ織物〜

 博多織と聞いて連想するものといえば、締めやすくしっかりした帯。西陣織などと比べて、平均すると約3倍の量の細い縦糸を使い、手間をかけて作られています。そのデザインも秀逸で、博多織を代表する「献上柄」は、770年以上経った今でも親しまれています。
 博多織の全盛期は昭和50年頃。ライフスタイルの変化により、その市場規模は、全盛期の1割程度にまで縮小しています。その中で、「革新なくして、伝統なし」と持論を語るのが、株式会社サヌイ織物の讃井勝彦社長です。「伝統工芸とは生活必需品。和装産業が縮小する時代に、和装品以外の道もあるのではないか。博多織の技術を使って、消費者が必要なものを作ることが大事」。サヌイ織物では、ネクタイや財布、小物入れなどを製作しています。「博多織を使えばいいわけではない。毎日使うものだからこそ、使い心地や耐久性にこだわっています」と、それぞれの用途に合わせた糸を使い、織り方を変え生地を作っています。
 輝匠の製作の話があった時のことを、「自分にしかできないと手をあげました。トヨタ自動車九州さんのオーダー『青から黒になるグラデーション』を出すために、細かく糸の色を変え、試行錯誤を繰り返しました。多くの人に博多織を知ってほしいと社員一丸となって作業しました」と振り返ります。
 現在は、自身も理事を務める博多織工業組合の取り組みとして「洗える博多織」の製作に挑戦中。伝統を大切にしながら、時代の要請にも応える。博多織に新たな1ページが織られています。

■博多織
約770年前に宋に渡った満田弥三右衛門が伝えた厚手の絹織物。江戸時代には、福岡藩から幕府に献上された。

■博多織工芸館  博多織の歴史などを学べる。
開館時間:10時〜17時
住所:福岡市西区小戸3丁目51−22

大川家具 の技術を生かす
〜イシモク・コーポレーション〜

 大川家具の技術を、新しい分野にも生かしたい。昭和23年に製材所として創業した株式会社イシモク・コーポレーションは、これまで培ってきた接着技術を生かし、ドアや玄関収納などの内装商品の製造や居住空間のプロデュースを行っています。「北部九州が自動車産業で盛り上がりを見せる中、大川家具の技術を自動車にも生かしたいと、平成19年に新たな部署を立ち上げました」と語るのは、イシモク・コーポレーションの石井泰彦社長。高度な技術力が求められる自動車の内装部品において、トヨタ自動車九州の関連会社とともに、ハンドルやインパネなどの開発を行いました。
 こうした縁を通じて、トヨタ自動車九州から輝匠の製作の話があり、東洋突板工芸と一緒に、シートの製作に取りかかりました。突板の染色に携わった技術開発部の緒方利恵さんは「木は一枚一枚違う、天然の素材です。トヨタ自動車九州さんが求める色に、むらなく均一に染めることが大変でした」と振り返ります。染まりにくいといわれる杉の木を、要望のあったメタリック感のあるグレーにするために何度も試行錯誤を繰り返しました。
 「480年の歴史で培われた、大川家具の削る、組む、接合するといった技術を、もっと進化させていきたい。そして、消費者のニーズに応える商品を作っていくため、研究・開発をやっていきたい」と石井社長。イシモク・コーポレーションの挑戦は続きます。

〜東洋突板工芸〜

 輝匠のシートバックやヘッドレストに使用されている木の織物。これを可能にしたのが、明治時代から大川市に伝わる「突板(つきいた)」と新たに開発された「木織(きお)り」の技術です。
 木材を薄さ0.2ミリメートルにスライスした「突板」。
美しい木目を表現するため、壁材や天井材の表面などに使用されます。この突板を2ミリメートルに裂き、西陣織のよこ糸と織り合わせるのが「木織り」といわれる技術。突板に特殊な樹脂を染み込ませることで、木に柔軟性と耐久性を持たせ、糸のように編むことができます。開発した東洋突板工芸株式会社は、この技術で、平成21年に経済産業省の「ものづくり日本大賞」を受賞しました。
 大川市で生まれ育った東洋突板工芸の大関一宏社長は、「大川家具の繁栄と衰退をみて、家具だけでなく新しいことを始めたいと思い開発しました」と語ります。世界で初めて実現された木の織物は、バッグやスマートフォンのケースなどで製品化され、その可能性は無限に広がっています。「最近は外国製の輸入家具が多いが、大川家具の本物の良さを、そして日本のものづくりの素晴らしさを伝えていきたい」と抱負を語ってくれました。

■大川家具
480年以上の歴史を誇る大川家具。大川彫刻、大川組子、大川総桐箪笥が県知事指定特産工芸品に認定されている。

県庁11階「福岡よかもんひろば」オープン!

福岡県が誇る伝統工芸品や観光などの情報を発信する「福岡よかもんひろば」が、4月17日午後オープンします。

見どころ@ 博多織タペストリー

福岡県の5つの祭りをデザインした幅2メートル、高さ2.5メートルの博多織タペストリー。豪快な祭りを繊細に表現したタペストリーからは、博多織の技術と伝統を感じることができます。

見どころA 手しごとんねる

経済産業大臣指定、県知事指定の伝統工芸品を一堂に展示します。天井や壁を使ったトンネル状の空間では、県の特産品や観光地などを紹介。大川組子のパズルをはじめ、伝統工芸品に触って遊べるコーナーもあります。

見どころB ここならではの眺望

北棟の大川インテリアや県産材を使用したラウンジ、カフェスペースからは、博多湾や寄港するクルーズ船の様子を眺めることができます。南棟からは、緑豊かな東公園や福岡空港を離発着する飛行機の様子、福岡市街を一望できます。

企画展 久留米おきあげ(期間:4月17日〜5月31日)

おきあげとは、鮮やかな布に綿を詰め、ひとつひとつ重ねて作る「押絵」のこと。羽子板や壁かけの歌舞伎役者などが代表的です。大正から現代に至る貴重な作品をお楽しみください。「福岡よかもんひろば」では、今後も福岡のさまざまな魅力を紹介していきます。

【問い合わせ】観光・物産振興課 tel092-643-3419

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