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この会見録は発言をそのままではなく、文章とする際読みやすいように整理したものです。
この知事記者会見録の模様は、 ふくおかインターネットテレビ 動画配信しています。
(知事)このたび県では、家畜に加えて、野生動物、愛玩動物、動物園などにいる展示動物といった動物の人獣共通感染症などを定期的に検査し、こうした病気に対する人への感染予防に役立てるため、「動物保健衛生所(仮称)」を、全国で初めて開設し、これをみやま市に設置することを決定しましたので、発表します。
現在、世界中で蔓延している新型コロナウイルス感染症や、SARS(サーズ)やMERS(マーズ)などは、動物由来の人獣共通感染症です。また、最近話題となっているSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、マダニを介して広がる感染症であり、近年は、野生動物だけでなく、犬や猫も感染し、そこから人への感染が危惧されているところです。
こうした病気の感染を防ぐためには、日頃から動物全体の感染状況を把握する必要がありますが、これまで、家畜については県の家畜保健衛生所が病気の予防や監視を行っていました。しかし、例えばペットのような愛玩動物、動物園などの展示動物、さらには、自然に生息する野生動物。これらについては、感染の発生状況が十分に把握されていないというのが現状です。
このような状況を受けて、日本獣医師会においては、長年にわたり、このワンヘルスを推進するため、動物全体の保健衛生を担う機関の設置を国に要請してこられたところです。本県は、全国で唯一、人と動物の健康と環境の健全性を一体的に守るというワンヘルスを推進する条例を持っています。このたび本県が、国に先駆けて、各種動物の病気の動向を一元的に把握し、予防に役立てる「動物保健衛生所(仮称)」を設置することとしたものです。
この「動物保健衛生所(仮称)」は、現在筑後地域の家畜の保健衛生を担っている「筑後家畜保健衛生所」を筑後市から移転し、新たに野生動物や愛玩動物などの保健衛生業務を付加した機関として整備するものです。
この建設地ですが、みやま市に設置します。これは、「ワンへルスセンター」の中核をなす機関を1か所に集積させることで、人獣共通感染症の発生状況等の情報共有や施設の共同利用、試験・研究など、県の保健環境研究所との連携強化を図ることができることから、この保健環境研究所の移転先としてすでに発表している、みやま市の保健医療経営大学の敷地に移転、開設することを決定したものです。これによって、本県が国立感染症研究所と共同研究を行うこととしている、野生動物及び愛玩動物に関する人獣共通感染症の国内における監視体制の構築といった先進的な調査研究や専門人材の育成など、「ワンヘルスセンター」としての取り組みを一層加速していく考えです。
(読売新聞)動物保健衛生所の具体的な取り組みのイメージや、設置することでこんな研究ができるというような、知事の中でのイメージを、現時点の案の段階で構いませんので教えていただけますか。
(知事)具体的には今年この動物保健衛生所の開設に向けた基本構想を立てていきます。その中で、具体的な所管業務の内容や施設の概要といったものを明らかにしていきます。
なぜ動物保健衛生所が必要であるのか、どういったものであるかということを少し説明します。今の本県の家畜保健衛生所は家畜のみを対象としています。一方、愛玩動物、展示動物について考えると、これはペットクリニックなどの獣医師が診療をしていますが、こういった愛玩動物や展示動物の病気の発生状況を統計的に把握している機関はありません。さらに野生動物について言うと、病気の発生状況はほとんど把握されていません。
こういったことから家畜、愛玩・展示動物、そして野生動物全てに関する保健衛生を一元的に担当する動物保健衛生所というものが必要であると考え、全国に先駆けて設置することとしました。そして、動物保健衛生所を保健環境研究所の隣接するところに作ることで、保健環境研究所と動物保健衛生所の有機的な連携を図っていきたいと考えています。また県内の動物の人獣共通感染症などの発生状況や、それらがもつ薬剤耐性菌の状況、こういったものについての情報共有を互いに図ることができます。加えて、互いの取り組みの中で、検査をする技術を習得していく。あるいは、それぞれの施設の共同利用を図ることができる。そして、試験や研究への協力を図ることができる。こういった連携を図るということです。しかも、保健環境研究所は「環境」という言葉が入っていますように、環境部門も持っています。まさにワンヘルスは人と動物と環境、この3つの健全性というものを一体的に守っていくという考え方です。やはり環境と考えたときに、野生動物が人やペットなどに近接することが多くなることによって引き起こされる伝染というものがございます。そういったものについても、環境面からのアプローチを図ることができます。
ワンヘルスに関する一体的な取り組みが可能になる。ワンヘルスセンターとしての機能を果たしていくことができるものと考えています。
(読売新聞)保健環境研究所が2027年度の供用開始を目指していると思いますが、今回の動物保健衛生所も同じタイミングにできればといった構想はありますか。
(知事)はい。できる限り速やかに進めたいと思いますが、具体的には基本構想の中で詰めていきたいと思っています。
(読売新聞)今、県が九州で目指している人獣共通感染症センターの誘致について、こうした動物保健衛生の取り組みを推進しているということはそのアピールになるかと思いますが、それへの期待はありますか。
(知事)現在福岡県は、国立感染症研究所のサテライトとして、アジアの各国、九州各県、大学などが連携して人獣共通感染症対策や薬剤耐性対策を行う「アジア新興・人獣共通感染症センター」を九州に設置することを、九州知事会とも力を合わせて国に要望しています。今回の動物保健衛生所の開設、そしてワンヘルスセンターの整備というものは、この国立感染研究所のサテライトを九州へ誘致する一歩となると考えています。また、ソフト面でも、現在、国立感染研究所と共同でSFTSの実態を明らかにするための検査法の開発や、野生動物の調査、愛玩動物の診断システムの構築、こういったものを国立感染研究所と本県で共同で取り組むということになりましたので、こうした共同研究も、この国立感染研究所のサテライトの九州誘致に向けての一歩となるものだと考えています。
(NHK)筑後の家畜保健衛生所を移転して動物保健衛生所を設置するということですが、他に3か所ある家畜保健衛生所について、業務の統合やすみ分けなどはありますか。
(知事)今、筑後のほかに、福岡市に中央家畜保健衛生所、嘉麻市に北部家畜保健衛生所、久留米市に両筑家畜保健衛生所の3か所があります。動物保健衛生所はみやま市で開設、整備をしていきますが、残り3つの家畜保健衛生所にも動物保健衛生業務の担当者を新たに配置し、県全域の動物保健衛生、総合的な動物保健衛生に対応していく考えです。
(朝日新聞)ワンヘルスの構想の中で、今回の動物保健衛生所の位置づけや、期待する役割などについて改めて教えてください。
(知事)ワンヘルスの理念は、人の健康、動物の健康、環境の健全性、この3つをひとつのものと考え、これを一体的に守っていこうという考え方です。本県はこれを実践していくための条例を全国で唯一持っています。このワンヘルスを進めていき、そして私としては福岡県をワンヘルスの世界的な先進地に押し上げていきたいと考えています。こういった取り組みの中で、日々の実践的な業務を行うワンヘルスセンターを開設し、さらには、世界でトップクラスの研究者が集う国際フォーラムをこれからも福岡で開催していきたいと考えています。このような取り組みによって、福岡県をワンヘルスの世界的な先進地として押し上げていき、これによって、人々の命、健康を守っていきたいと思っています。
(FBS)この施設自体は動物保健衛生所ということで、ワンヘルスセンターの役割の1つということですか。
(知事)そのように考えていただければと思います。
(RKB)動物保健衛生所は、保健環境研究所と別の建物ですか、それとも一緒の建物ですか。
(知事)別棟になると思います。また、動物保健衛生所の内部においても、家畜と愛玩、展示、野生は、別棟にする必要があると思います。そこは、研究をしていく過程において、ウイルス、細菌等も取扱いますので、そういったものが伝染しないようにすることを考えると、基本的には別棟でやっていくと思います。
(RKB)建物は別棟で、合わせてワンヘルスセンターというイメージでいいですか。
(知事)はい。機能一体をワンヘルスセンターということで考えていただければと思います。
(終了)