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労働相談 (長時間労働防止に係る労働基準法等の規定 11月は過労死等防止啓発月間)
質問
長時間労働が改善されず、それに伴う過労死等が問題になっていますが、行政はどのような対策を取っているのでしょうか。
答
長時間労働や休日出勤、休暇が取得できない状態などが続くと、仕事への意欲・効率の低下だけでなく、健康障害や過労死にもつながります。
国においては、過労死等の防止のための対策に関する大綱を閣議決定するとともに、働き方改革関連法を整備し、次のような過労死等防止策を推進しています。
【時間外労働等の上限規制(労働基準法)】
労働基準法では、労働者の法定労働時間は1日8時間、1週間40時間(特定措置事業所は44時間)以下、法定休日は1週間に1日(又は4週間に4日)以上と定めていますが、労働者と使用者が時間外労働及び休日労働に関する協定(36協定)を結び、労働基準監督署に届出することで、法定労働時間を超える労働(時間外労働)及び休日労働を命じることができます。
ただし、時間外労働と休日労働には法律上の上限時間があります。これを超える労働時間は違法となり、使用者に罰則が科せられたり、企業名公表等の措置が実施されることがあります。
1 時間外労働の上限 月45時間 かつ 年360時間以下
2 臨時的な特別の事情があって1によらない場合の上限
次の要件をすべて満たす必要があります。
・時間外労働と休日労働の合計 月100時間未満 (月45時間を超えることができるのは年間6月まで)
直近2月~6月の各平均が80時間以下
・時間外労働の上限 年720時間未満
※中小企業は2020年4月から適用されます。
※一部の事業(自動車運転業、建設業、医師、砂糖製造業、研究開発事業等)は上限規制の適用を猶予又は除外されています。
なお、この場合の時間外労働に対しては割増賃金を支払うよう決められています。割増賃金は、通常の労働時間の賃金に以下の割増率を乗じて計算します。
・時間外又は深夜労働 2割5分以上
・休日労働 3割5分以上
・月60時間を超える時間外労働 5割以上(中小企業は2023年4月~)
【年次有給休暇の取得義務化(労働基準法)】
労働基準法では、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的として、全ての企業に対し、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者を対象に、使用者が時季を指定して年に5日の年次有給休暇を取得させることを義務付けています。
なお、既に5日以上取得した労働者に対しては、時季指定は不要です。
【労働者の健康確保(労働安全衛生法)】
1 労働時間の把握
事業者は、長時間労働者(時間外労働・休日労働が月80時間超)を把握するため、すべての労働者の労働時間をタイムカード、パーソナルコンピューター等の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録など客観的な方法で把握する義務があります。
2 面接指導等の実施と産業医への情報提供
事業者は、長時間労働者が申し出た場合、医師による面接指導を実施する義務があります。また、長時間労働者の作業環境、労働時間数、深夜業の回数等の情報を産業医に提供する義務があります。
3 ストレスチェックの実施義務
従業員数50人以上の企業は、常時使用する労働者に対し、年に1回、ストレスチェックを実施する義務があります。
高ストレスと評価された労働者から申し出があったときは、事業者は、医師による面接指導を行い、必要がある場合に就業上の措置を講じなければなりません。
【勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法)】
労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保するため、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休憩時間(インターバル)を確保することが企業の努力義務とされています。
【その他の施策】
過労死防止のためには、単に法令を遵守するだけではなく、これまでの働き方を改め、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のとれた働き方ができる職場環境づくりが必要です。
厚生労働省では、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」とし、その一環として「過重労働解消キャンペーン」を実施しています。主な取組は、使用者団体や労働組合への協力要請、長時間労働削減に積極的に取り組む企業の都道府県労働局長による訪問、過重労働等の疑いのある事業場等への重点監督、電話相談の実施、セミナーの開催などです。
福岡県では、県内の企業における働き方改革の気運を醸成して、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得、柔軟な働き方の推進を促しています。主な事業は次のとおりです。
ア 働き方改革に取組む企業にアドバイザーを派遣して、企業が抱える問題についての個別相談や企業内研修を実施
イ 雇用管理の改善に取組む企業への表彰
このように、長時間労働削減や過労死等防止対策に取り組んでいるところです。
すべての人が健康で安心して働くことができる職場環境整備のために、一人ひとりが自らの働き方を今一度見つめ直し、長時間労働削減等に対して理解を深め、主体的に取組むことが求められています。
【根拠法令】
労働基準法第32条(労働時間)、第36条(時間外及び休日の労働)、第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)、第39条(年次有給休暇)、第41条の2(労働時間等に関する規定の適用除外)
労働安全衛生法第13条(産業医)、第66条の8の2、第66条の8の3(面接指導等)、第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
労働時間等設定改善法第2条(事業主等の責務)
【平成29年10月当初掲載 (平成31年4月更新)】
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福岡労働者支援事務所 :TEL 092-735-6149
北九州労働者支援事務所:TEL 093-967-3945
筑後労働者支援事務所 :TEL 0942-30-1034
筑豊労働者支援事務所 :TEL 0948-22-1149
※相談受付時間:開庁日の8時30分から17時15分(祝日及び12月29日から1月3日を除く月曜日から金曜日)