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労働相談 (育児、介護休業法改正 介護離職の防止に向けて)
質問
父親が要介護状態になり住み慣れた自宅での介護を希望しているため、介護保険のサービスと会社の介護休業制度を活用し、介護をしながら働きたいと考えています。
平成29年に育児、介護休業法が改正されたと聞きましたが、介護休業を取得しやすくなるのでしょうか。
答
仕事と家庭の両立支援を進めるため制定された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児、介護休業法」という)については、介護をしながら働く方や、有期契約労働者の方が介護休業、育児休業を取得しやすくなるよう改正が行われ、平成29年1月(一部は10月)から施行されています。
仕事と介護の両立支援制度に関する主な改正内容は、以下のとおりです。
1 介護休業の分割取得
改正前 |
改正後 |
介護を必要とする家族(対象家族)1人につき、通算93日まで原則1回に限り取得可能 |
対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得可能 |
(注)介護休業とは
労働者(日々雇用される方を除く)が、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)の対象家族を介護するための休業です。対象家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹及び孫です。
2 介護休暇の取得単位の柔軟化
改正前 |
改正後 |
1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、1日単位での取得 |
1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能 |
3 介護のための所定労働時間の短縮措置等
改正前 |
改正後 |
介護のための所定労働時間の短縮措置(選択的措置義務)について、介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能 |
介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能 |
(注)介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)とは
事業主は、要介護状態にある対象家族の介護をする労働者に関して、対象家族1人につき、次のうちいずれかの措置を選択して講じなければならないとされています。
ア 所定労働時間の短縮措置 イ フレックスタイム制度 ウ 始業、終業時刻の繰上げ、繰下げ
エ 労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度
4 介護のための所定外労働の制限(残業の免除)
改正前 |
改正後 |
( な し ) |
対象家族1人につき、介護終了まで利用できる所定外労働の制限(残業の免除が受けられる制度)を新設 |
また、仕事と育児の両立支援制度等についても、次のとおり改正されました。
5 有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
改正前 |
改正後 |
申出時点で ア 過去1年以上継続雇用されていること イ 子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあること ウ 子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者を除く |
申出時点で ア 過去1年以上継続雇用されていること イ 子が1歳6か月(2歳までの育児休業の延長を申し出る場合には2歳)になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと |
6 子の看護休暇の取得単位の柔軟化
改正前 |
改正後 |
1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで、1日単位での取得 |
1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能 |
7 育児休業等の対象となる子の範囲
改正前 |
改正後 |
法律上の親子関係がある実子、養子 |
特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等も新たに対象 |
8 いわゆるマタハラ、パタハラなどの防止措置の新設
改正前 |
改正後 |
事業主による妊娠や出産、育児休業、介護休業等を理由とする不利益取扱いは禁止 |
1 左記に加え、上司や同僚からの妊娠や出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等(いわゆるマタハラ、パタハラなど)を防止する措置を講じることを事業主へ新たに義務付け 2 派遣労働者の派遣先にも以下を適用 ア 育児休業等の取得等を理由とする不利益取扱いの禁止 イ 妊娠や出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等の防止措置の義務付け |
(注)「いわゆるマタハラ、パタハラ」とは、働く女性や男性が上司や同僚から受ける上記の休業等を理由とする嫌がらせのことです。
「マタハラ」はマタニティハラスメントの略です。
「パタハラ」はパタニティハラスメントの略です。(パタニティとは英語で「父性」という意味です)
9 事業主に対する努力義務の創設
改正前 |
改正後 |
(な し) |
1 労働者やその配偶者が妊娠・出産したこと等を知った時は、個別に育児休業等に関する制度(育児休業中・休業後の待遇や労働条件など)を知らせることを事業主の努力義務として創設。 2 小学校就学に達するまでの子を養育する労働者が育児目的で利用できる休暇制度(例:配偶者出産休暇、入園式、卒園式など子の行事参加のための休暇等)を設けることを事業主の努力義務として創設。 |
【根拠法令】
育児、介護休業法(平成3年法律第76号)
第11条、第15条、第16条の5、第16条の9、第23条第3項(介護休業等改正関連条文)
第2条、第5条、第16条の2(育児休業等改正関連条文)
第25条、及び「子の養育又は家族介護を行い、又は行なうこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(厚生労働省告示第509号)」(マタハラ、パタハラなどの防止措置の新設関連条文)
【参考】
厚生労働省HP 『 育児、介護休業法のあらまし(平成30年9月作成)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103504.html(新しいウィンドウで開きます)
【平成29年6月当初掲載 (平成31年4月更新)】
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