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労働相談 (マタハラ)
問
私は、正社員で入社後ずっと営業課で勤務しており、3年前には管理職である主任に昇格しました。妊娠したため自ら希望して営業課内で比較的軽易な業務へ主任の肩書のままで担当換えとなりました。その後出産し1年間の育児休業を取得して先日職場復帰しました。営業課の主任として復帰すると思っていましたが、1か月間は軽易業務担当のままで渋々勤務していましたが、2か月目に総務課係員へ降格・減給となる配置転換の辞令が出ました。事前説明もなく納得できませんが、育児休業を取得したことで営業課の主任への復帰はあきらめなければならないのでしょうか。
答
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下 均等法)や育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行なう労働者の福祉に関する法律(以下 育児・介護休業法)では、使用者が妊娠・出産、育児休業等を理由として、解雇・雇止め・降格など労働者にとって不利益な取扱いをすること(いわゆる「マタニティハラスメント=マタハラ」)を禁止しています。
「妊娠・出産」「育児休業」等の事由を「契機として(注1)」、不利益取扱いが行われた場合は、原則として例外(注2)に該当する場合を除き、法違反になります(均等法第9条第3項、育児・介護休業法第10条)
以下のような事由を理由として | 以下のような不利益な取扱いを行うのは違法 |
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女性労働者の_ 妊娠・出産 妊婦健診などの母性健康管理措置 産前・産後休業 軽易な業務への転換 つわり・切迫流産などによる労働時間・能率の低下 妊娠・育児中の時間外労働、休日労働、深夜業 育児をする労働者の_ 育児時間 育児休業 子の看護休暇 短時間勤務、始業時刻変更、時間外労働、深夜業 |
不利益取扱いの例 解雇 雇止め 契約更新回数の引き下げ 退職や雇用形態を変更する労働契約の強要 降格 減給、または賞与等における不利益算定 不利益な配置変更 不利益な自宅待機命令 労働者の意に反する時間外労働の制限、または短縮措置等の適用(育児労働者) 昇進・昇格の人事考課での不利益評価 仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする 派遣先が当該労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと(派遣労働者の場合) |
(「男女雇用機会均等法」の「男女雇用機会均等法」参照のこと)
御相談の場合においては、育児休業から復帰2か月目という時期(事由の終了から1年以内)に、事前の説明もなく所属部署変更で降格となる辞令が出され、本人も同意していません。例外(注2)に該当しないときは、育児休業を取得したことによって「降格」や「減給」等の不利益取扱いを受けたと判断されます。
マタニティハラスメントによる不利益な取り扱いではないかと思われる場合は、最寄りの労働者支援事務所又は福岡労働局雇用環境・均等部指導課へご相談ください。
(注1) どういった場合を「契機として」といるか否かは、基本的に、妊娠・出産・育休等の事由と時間的に近接しているかで判断されます。原則として、妊娠・出産・育休等の事由の終了から、1年以内に不利益取扱いがなされた場合は、「契機として」いると判断します。
ただし、事由の終了から一年を超えている場合であっても、実施時期が事前に決まっている、又は、ある程度定期的になされる措置(人事異動(不利益な配置変更等))、人事考課(不利益な評価や降格等)、雇止め(契約更新がされない)など)については、事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断します。
(注2)2つの例外
例外1 業務上の必要性が、不利益取扱いの影響を上回る特段の事情がある
業務上の必要性から不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法規定の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、不利益取扱いで受ける影響の内容や程度を上回ると認められる「特段の事情」が存在するとき
例外2 本人が同意し、一般的労働者が同意する合理的理由が客観的に存在
契機とした事由又は当該取扱いで受ける有利な影響が存在し、かつ労働者が同意している場合で、有利な影響の内容や程度が不利な影響のそれを上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき
注 実際には、より詳細な状況を確認した上で違法性の判断を行います。、
【根拠法令】
均等法第9条第3項(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
同法施行規則第2条の2(妊娠又は出産に関する事由)
「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」第4の3(平成18年厚生労働省告示第614号)
育児・介護休業法第10条(不利益取扱いの禁止)
「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」第二の十一(平成21年厚生労働省告示第509号)
「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)
【平成28年1月当初掲載 平成31年4月更新】
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