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労働相談 時間外労働
問
労働環境が悪いため、退職することにしました。そこで、これまでの未払い残業分の賃金を請求したいと思います。計算方法を教えてください。給料は月給制、手当は通勤手当のみです。私の勤務時間は午前9時から午後5時まで(休憩時間1時間)です。
答
賃金は、労働基準法等に基づき、毎月1回以上、決まった日に支払わなければなりませんし、支払われていない場合は請求することができます。ただし、残業分の賃金の計算にあたっては、会社が定めている労働時間と賃金制度の両方を正しく理解したうえで、計算する必要があります。
相談者の勤務時間は午前9時から午後5時まで(休憩1時間)、つまり一日の所定労働時間は7時間となっています。労働基準法では、36協定に基づき1日8時間、1週間40時間(特例措置事業所では44時間)を超えて労働させた場合、通常の労働時間の賃金の2割5分以上の割増賃金を支払うように決められています。
今回のケースでは、午後5時から6時までの1時間は労働時間が8時間を超えていないので、就業規則等で法定労働時間内での時間外勤務の割増賃金の支払いを定めていなければ、割増賃金を支払わなくても労働基準法違反にはなりません。よって時間外労働のうち午後5時から午後6時までは通常の賃金の1時間分、午後6時から午後10時までは2割5分以上の割増賃金、深夜労働にあたる午後10時から翌日午前5時までは5割以上の割増賃金を請求できます。また、毎週少なくとも1回の休日(法定休日)に勤務した時間は、通常の賃金の3割5分以上の割増賃金が発生します。
まずは、タイムカード、なければメモや日報等からこれまでの残業時間を算出して下さい。次に月給を月平均所定労働時間数で除し、1時間あたりの単価を算出して下さい。そしてこの単価に時間外、深夜、休日それぞれの割増率を乗じることで割増賃金が算出でき、未払賃金額を確定することができます。ただし退職金以外の賃金の請求権は2年間で時効により消滅します。
この割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、住宅手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類は算入しないことになっていますので、これらの除外賃金に該当しない「毎月定例的に支払われる賃金」はすべて基礎となる賃金に算入しなければなりません。
法、根拠等説明
労働基準法により、労働者の労働時間は原則として1日について8時間、1週間について40時間(特例措置事業所では44時間)と定められています。(注 変形労働時間制を採っている場合は適用が違います。)
そして、使用者が労働時間を延長したり、休日に労働させる場合は36協定を結び、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。また、使用者は労働時間の延長または休日、深夜の労働に対して「通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と規定しています。(詳しくは、労働相談「36(サブロク)協定」を参照ください。)
割増賃金率の一覧
時間外労働・・・2割5分以上
深夜労働・・・2割5分以上(午後10時~午前5時)
休日労働・・・3割5分以上(法定休日労働)
時間外労働+深夜労働・・・5割以上(2割5分+2割5分)
休日労働+深夜労働・・・6割以上(3割5分+2割5分)
休日労働+時間外労働・・・3割5分以上(6割以上ではない)
注 月の残業時間が60時間を超えた場合・・・5割以上(深夜を含む場合は7割5分以上)
(中小企業における月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率については、2023年4月1日より2割5分以上から5割以上に引上げ)
※法律上の休日労働とは労働基準法で定められた法定休日に労働した時間を指します。
月給制の場合の時間単価の算出方法
1ヶ月の所定労働時間数・・・1年間の所定労働時間数を12ヶ月で除す。
時間単価=(月給-算入しない賃金)÷1ヶ月の所定労働時間数
働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定されました(大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用)。
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とする。
臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間以内、月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月45時間を超えることができるのは年6か月が限度を守らなければならない。
違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
【平成21年4月当初掲載(平成28年3月、平成31年4月更新)】
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