本文
労働相談 求人募集
問
ハローワークの求人票で正社員とあったので入社したが、パートで給料は時間給、社会保険等も入れないなど、雇用条件が求人票の内容と違っていました。納得がいかないのですがどうしたらよいのでしょうか。
答
求人募集の内容と労働契約
ハローワークの求人票や、求人誌、新聞、チラシの求人広告などには、いずれも法律的には「誘引行為」として応募を誘い、引き付けるための条件が示されています。この求人に対して求職者が応募する行為が法律上の契約の申し込みで、会社(使用者)が承諾(採用)することで契約は成立します。
求人者の労働条件の明示義務
とはいえ、会社(求人者)がハローワークに提出した求人票記載の内容が、直ちに労働契約の内容になるとは限りません。会社(求人者)は採用に際して適用する労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条)ので、求人票(求人広告)の記載内容と異なる条件での雇用なら、面接から採用までの間に、その旨明示されるべきです。
(必ず書面で明示すべき労働条件)
(1)労働契約期間
(2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
(3)就業場所と従事業務
(4)始業と終業時刻、休憩時間、休日、休暇
(5)所定労働時間外労働の有無等
(6)賃金の額及び計算と支払の方法、締切日、支払日
(7)退職、解雇事由
労働契約の成立と労働条件
会社(求人者)が面接時等契約までに『パートタイムとして時間給での雇用』ということを明示していなければ、労働基準法第15条第2項の「明示された雇用条件が事実と相違する場合」として、労働者は即時に雇用契約を解除できます(民法第628条)。もちろん、明示された雇用条件の履行を要求することも可能です。会社(使用者)が要求に応じない場合、債務不履行で損害賠償も請求できます(民法第415条)。
今回のケースの場合、契約締結時にパートタイムおよび時間給での雇用を合意した等の特段の事情がない限り、正社員雇用とみなすことができると考えられます。少なくとも、正社員かパートタイマーかと言った労働者の身分に関わる重要な事項については、使用者は契約締結時に労働者の納得の得られる説明や話合いをするべきであり、求人票といえども使用者による一方的な変更は契約上の信義誠実の原則に反すると考えられます(民法第1条2項)。
社会保険等への加入条件
社会保険等への加入については、雇用保険なら31日以上雇用見込みがあり週の所定労働時間が20時間以上であれば、また、健康保険や厚生年金は会社が適用事業者であり労働時間・日数が一般社員の4分の3以上あれば、パートであっても適用になります。
法、根拠等説明
(判例)
求人票について、求職者はこれを信頼して契約を申し込む訳ですから、記載された労働条件が労働契約の内容にならない場合には、「これを明確に変更し、これと異なる合意をする等特段の事情がない限り、求人票記載の労働条件のとおり定められた」ものと解すべきだとされています。(千代田工業事件・大阪地裁判昭58.10.19)
賃金に関しては、求人票に記載されているのは見込額です。しかし、『見込額』として当事者を拘束し、求人者はみだりにこの見込額より著しく下回る額で賃金を確定すべきではないが、反面やむを得ない事情があれば「見込額」と異なる賃金を決定しても差し支えないとされています。(八洲測量事件・東京高判昭58.12.19)
【平成22年5月当初掲載(平成28年3月、平成31年4月更新)】
労働に関する相談は下記の各労働者支援事務所で受け付けています
福岡労働者支援事務所 :TEL 092-735-6149
北九州労働者支援事務所:TEL 093-967-3945
筑後労働者支援事務所 :TEL 0942-30-1034
筑豊労働者支援事務所 :TEL 0948-22-1149
※相談受付時間:開庁日の8時30分から17時15分(祝日及び12月29日から1月3日を除く月曜日から金曜日)