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労働相談 懲戒解雇
問
私は正社員として今の会社に20年勤務しています。先日、経理処理をミスし、会社だけでなく、取引先に迷惑をかけてしまいました。そのため数日後、会社から懲戒解雇を言い渡されました。私の主張を聞いてもらう機会もなく、退職金も支払わないと言われました。
確かに重大なミスをしましたが、懲戒解雇、退職金の不支給に納得がいきません。このまま処分を受け入れるしかないのでしょうか。
答
懲戒解雇は労働者の重大な義務違反(非違行為)、会社の社会的信用の失墜などに対する制裁の処分として行われるものです。懲戒解雇された場合の労働者が受ける不利益は、非常に大きく、したがって、解雇の有効性についても、普通解雇の場合に比べて厳格な要件を満たすことが必要とされます。特に、労働者の違反行為の程度やその他の事情に照らしあわせて、懲戒解雇処分が相当なのかが判断のポイントとなります。
判断のポイントとしては、
(1)就業規則の懲戒事由の定めと周知の有無
(2)事実関係の調査と反論・弁明の機会の付与など手続きの経過
(3)会社における功績、職場状況、類似事例との対比
などがあり、これらの点を総合的に勘案し判断することとなります。
就業規則があっても、会社が周知義務を果たしていないこともあります。そのため懲戒規定や退職金規程について、相談者がいずれの懲戒解雇事由に当たるのか、また退職金についてどのように定められているのか、就業規則を確認する必要があります。
また退職金の不支給については、それが有効に適用できるのは、労働者のそれまでの功績を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合においてのみと考えられます。
相談者の事例では、取引先に対する迷惑行為も、相談者の地位、職責、経理処理のミスの重大性、取引先が被った被害の甚大性といった点の具体的な判断が必要であり、また、経理処理のミスについて、その原因や管理監督、教育指導体制において会社の落ち度がなかったかの判断も必要と考えます。
相談者が懲戒解雇の撤回や退職金の支給を求めるとすれば、労働組合への加入、労働審判制度の活用、民事裁判といった選択肢があります。
また、労働者支援事務所や労働委員会委員による「あっせん」制度もあります。
まずは労働者支援事務所にご相談下さい。
法、根拠等説明
労働契約法第15条 (懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効となる。
同法 第16条 (解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(解雇権濫用法理)
解雇の有効性が争われる事案では、この規定の考え方に従って解雇の有効・無効が裁判所において判断されることになります。
【平成21年8月当初掲載(平成28年3月・平成31年4月更新)】
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