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労働相談 労働条件の不利益変更
問
大学で国家資格を取り、やっとその職種で採用され頑張っていたところ、「適性がない」という理由で、使用者から職種変更を伴う配置換えを提案され、「同意するかしないか」の返事を求められています。給料も大幅に下がります。このような提案のきっかけは、私のかなり重大なミスにあります。年齢が25歳ですので、社会人としてまだまだ未熟だと思います。 職種変更は全く考えたことがなかったので、混乱しています。どうしたらいいでしょうか?
答
労働基準法第2条第1項において「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」と定められています。
また、労働契約法第3条第1項において「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」と、さらに第8条において「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と定められています。(「働くとき、雇うときのルール」の「賃金の一方的変更」、「労働協約の改定による労働条件の切り下げ」参照のこと)
労働者の違法行為や仕事上の重大なミスがあった場合、使用者は、その程度に応じて懲戒解雇、出勤停止、減給、訓戒などの懲戒処分を行うのが通常ですが、使用者は、今回、懲戒処分ではなく、職種変更を伴う配置換えを言い渡しました。
配置転換について判例は、(1)労働協約や就業規則に配置転換についての合理的な根拠があること、(2)実際にもそれらの規定に基づき配置換えが頻繁に行われていること、(3)採用時に職種を限定する合意がなかったこと、等の条件が満たされていれば、使用者は労働者の同意なしに配置転換できる権限を有するという考えに立っています。
そして、これらの条件を満たしたうえで提案されたとしても、(1)当該配置転換について業務上の必要性が認められない場合、(2)業務上の必要性があったとしても、他の不当な動機・目的をもってなされたものである場合、(3)労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合などでは、権利の濫用と判断されるケースがあります。
入社の際の合意内容にもよりますが、一定の専門的資格を活用する仕事に就く前提で一定の職種として採用された場合に、職務内容を大きく格下げして、それを理由に賃金を大幅に引き下げるような配置転換には、権利の濫用に該当するケースもあるでしょう。
このため、使用者としては、配置転換の内容とそれに伴う労働条件の不利益変更について、労働者の理解と納得を得る説明が求められます。
あなたが同意するかしないかを決めるためには、提案理由や配置換え後の労働条件をもっと詳しく聞く必要があります。早急に使用者に話合いの場を求め、具体的に説明してもらってください。後々のことを考えて、文書にしてもらった方がいいでしょう。(「働くとき、雇うときのルール」の「配転命令の拒否」参照のこと)
【平成21年3月当初掲載(平成28年3月、平成31年4月更新)】
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