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労働相談 労働組合員の範囲
問
会社側と労働組合員の範囲で対立しています。会社側は、「マネージャー(一般的には課長か係長に相当)は100万円以下なら予算を編成する権限があり、人事評価制度の評価者になっており、労働組合法の利益代表者(労組法第2条第1号)に当たるので組合員に入れるのは認められない」と主張しています。ところが実態としてマネージャーには、労働組合との団体交渉の窓口で、団交に向けての会社側の会議にも参加し、交渉にも会社側として出席する人事系のマネージャーとその他のマネージャーがいます。
組合としては、マネージャーは組合員の範疇と考えていますが、どのような対応が考えられるでしょうか。
答
まず、組合員をどの範囲にするのかは労働組合の自治に属する問題であり、会社側が干渉できるものではありません(ただし、「利益代表者」の参加を許した組合は労働組合法上の保護等を受けられない可能性があります)。
とは言え、労使間で現実的には線引きを行うことは考えられます。そのため「利益代表者」とは何かを考えておく必要があります。
労働組合法の言う「利益代表者」とは、会社の定める「管理職」がすべて該当するとは限りません。また、ある一定の職名以上の労働者が一律に「利益代表者」になるものでもありません。結局、労働者の担当する職務の実質的内容に即して、個別的・具体的に判断する他ありません。
行政解釈(行政庁による法解釈)等を参考にしつつ判断すべきでしょう。また、労働委員会の資格審査を受けるのも一つの方法だと思われます。
相談の事例の場合、まず全マネージャーが対象になるものではありません。人事評価に関しては、労働者の地位・身分について直接決定する権限を持つ者が該当し、この権限行使につき補助的・助言的地位にある者は含まれません。従って、人事評価を行っていることのみでは該当しないでしょう。また、予算に関してはあまり重要な要素ではないと考えられます。
聴取内容から、判断すると、人事系のマネージャーか否かで線引きするのが妥当ではないでしょうか。
また、使用者が、「管理職」が労働組合に参加していることを理由に団体交渉を受け入れない例も見受けられますが、判例では「そのこと自体は、当然には団交拒否の正当な理由にはならない」(セメダイン事件)としています。また、仮に、労働組合法が規定する「利益代表者」の参加を許した労働組合であっても、少なくとも憲法が認める団結権の保障は受けることができます。
法、根拠等説明
労働組合法第2条第1号(「利益代表者」とは)
役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
「利益代表者」についての行政解釈(昭24.2.2労働省発労第4号)
(1)総ての会社役員,理事会又は之に類似するものの構成員
(2)工場支配人,人事並びに会計課長及び人事,労働関係に関する秘密情報に接する地位にある者
(3)従業員の雇用,転職,解雇の権限を持つ者及び生産,経理,労働関係,対部外関係,法規その他の専門的事項に関する会社の政策決定についての権限を有し或はこれに直接参画する者
(4)労務部(名称を問わず之に該当する部課)の上級職員
(5)秘書及びその他の人事,労働関係についての機密の事務を取扱う者
(6)会社警備の任にある守衛
【平成20年8月当初掲載(平成28年3月、平成31年4月更新)】
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