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労働相談 男女雇用機会均等法
問
介護施設で働く女性労働者です。妊娠初期に入院し、医者に安静を指示されたことから夜勤勤務をはずしてもらうよう施設長にお願いしたところ、夜勤ができないのであれば日勤勤務のみのパートに変わるよう言われました。
妊娠したことを理由に労働条件の一方的な変更に応じる必要があるのでしょうか。
答
労働基準法では、使用者は、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければなりません(65条第3項)。また、妊産婦(妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性)が請求した場合、時間外労働、休日労働、また、深夜業をさせてはなりません(第66条第2項、第3項)。割増賃金の対象になる労働時間(「労働時間と休日休暇」の「時間外労働」参照のこと)についての請求は、時間外労働、休日労働、深夜業のそれぞれ単独でも、複数についての部分的なものも認められ、妊産婦の身体等の状況の変化に伴う請求内容の変更も認められています。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下 均等法)でも、事業主は、女性労働者が妊娠、出産したことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第9条第3項)と規定されており、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号)のなかで、以下の事項を明示しています。
イ 解雇すること ロ 期間を定めて雇用される者について、契約を更新しないこと ハ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。 ニ 退職又は正職員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと ホ 降格させること ヘ 就業環境を害すること ト 不利益な自宅待機を命ずること チ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと リ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと ヌ 不利益な配置の変更を行うこと ル 派遣労働者として就業するものについて、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと |
(「男女雇用機会均等法」の「マタハラ(妊娠・出産・復帰後の降格」。また、育児を理由とする不利益変更であれば、「育児・介護休業法」の「育児休業取得に伴う不利益取り扱い」参照のこと)
また、事業主は、女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保しなければならず(第12条)、保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守るようにするために、勤務時間の変更等必要な措置を講じなければならない(第13条)とされています。
以上の規定を踏まえて質問内容を検討すると、事業主が、女性労働者が妊娠・出産したことを理由に労働契約内容の変更を強要するとすれば、不利益な取扱いを禁止した均等法第9条第3項に違反することとなり、労働者は一方的な変更要求に応じる必要はありません。
さらに、労働基準法第65条及び第66条の規定から、深夜勤務に従事させないことや、これまでの身分のまま日勤などにより勤務できるよう施設側に求めることができるでしょう。施設側が求めに応じず夜勤勤務を命じられているような場合には、最寄りの労働者支援事務所にご相談下さい。
労使間での自主的解決が困難で、仲介により解決促進が図られると当所が判断した場合は、労使双方の了解のもとに自主解決を目指す「あっせん」制度も利用できます。
なお、福岡県では従業員が出産・子育て期を通して十分な子育てをしながら、引き続きその能力を活かして働くことが出来る社会の実現を目指し「子育て応援宣言企業」に対するサポート事業にも積極的に取り組んでいます。
【平成20年6月当初掲載(平成28年3月、平成31年4月更新)】
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