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がんを予防するためには
科学的根拠に基づくがん予防
現在、日本人の2人に1人が一生のうち一度はがんになる、と言われています。
本県においても、がんは昭和52年以降、死因の第1位であり、1年間に約1万6千人の県民ががんで亡くなっています。
がんは私たちにとって身近な病気で、その予防はとても大事なものとなっています。
がん予防のため、国立がん研究センターでは、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法」を提案しています。
日本人のためのがん予防法
国立がん研究センターの研究班は、日本特有の生活習慣、さらにはウイルスや細菌の感染への配慮を踏まえて、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法」を提案しています。
2017年8月改訂版では、「喫煙」「飲酒」「食事」「身体活動」「体形」「感染」の6項目についての予防法が示されています。
〇現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法
1 喫煙 | たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。 | ||||||
2 飲酒 | 飲むなら、節度のある飲酒をする。 | ||||||
3 食事 | 偏らずバランスよくとる。 ・塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。 ・野菜や果物不足にならない。 ・飲食物を熱い状態でとらない。 |
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4 身体活動 | 日常生活を活動的に。 | ||||||
5 体形 | 適正な範囲内に。 | ||||||
6 感染 | 肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。機会があればピロリ菌検査を。 |
出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」
また、1から5の5つの健康習慣に気を付けて生活している人は、そうでない人に比べて、以下のとおりがんになるリスクが低くなるという推計が示されました。
出典:Sasazuki, S. et al.: Prev. Med., 2012; 54(2):112-6より国立がん研究センター作成
1 喫煙
(1)たばこは吸わない
日本人を対象とした研究の結果から、たばこは肺がんをはじめ食道がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、膀胱がん、乳がんなど多くのがんに関連することが示されました。
たばこを吸う人は吸わない人に比べて、がんになるリスクが約1.5倍高まることもわかっています。
(2)他人のたばこの煙を避ける
受動喫煙でも肺がん(特に腺がんタイプ)や乳がんのリスクは高くなります。たばこは吸う本人のみならず、周囲の人の健康も損ねます。
禁煙はがん予防の、大きく、確実な一歩。
吸っている人は禁煙し、吸わない人はたばこの煙をなるべく避けて生活しましょう。
【関連情報】
「たばことがん」(国立がん研究センターがん対策研究センター「がん情報サービス」)(新しいウインドウで開きます)
2 飲酒
飲酒は、食道がん、大腸がんと強い関連があり、女性では、男性ほどはっきりしないものの、乳がんのリスクが高くなることが示されています。
女性の方が男性よりも体質的に飲酒の影響を受けやすく、より少ない量でがんになるリスクが高くなるという報告もあります。
お酒を飲まない人、飲めない人は、無理に飲まないようにしましょう。
<1日あたりの飲酒量の目安>
○日本酒・・・1合
○ビール・・・大瓶1本
○焼酎・泡盛・・・原液で1合の2/3
〇ウィスキー・ブランデー・・・ダブル1杯
〇ワイン・・・ボトル1/3程度
3 食事
これまでの研究から、「塩分のとりすぎ」「野菜や果物をとらない」「熱すぎる飲み物や食べ物をとること」が、がんの原因になるということが明らかになっています。
このことから、3つのポイントを守ることで、日本人に多い胃がんのリスクや、食道がん、食道炎のリスクが低くなります。
(1)減塩する
調査から、食塩摂取量の多い男性のグループでは胃がんのリスクが高いことがわかっています。
また、女性は男性ほどはっきりした関連はみられないものの、いくら、塩辛などの塩分濃度の高い食べ物をとる人は男女ともに胃がんのリスクが高いという結果も報告されています。
塩分を抑えること、すなわち減塩は、胃がんの予防のみならず、高血圧、循環器疾患のリスクの低下にもつながります。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準2015年版」)では、1日あたりの食塩摂取量を男性は8.0g未満、女性は7.0g未満にすることを推奨しています。塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にするよう心がけましょう。
(2)野菜と果物をとる
野菜と果物の摂取が少ないグループでは、がんのリスクが高いことが示されています。しかし、野菜や果物を多くとればリスクが低下するかどうかという点に関しては明らかではありません。
特に、食道がん・胃がん・肺がんについては、野菜と果物をとることで、がんのリスクが低くなることが期待されますが、いずれのがんも喫煙との関連がとても強いため、明確な結論は出ていません。
また、食道がんは飲酒との関連が強いことがわかっています。
これらのことから、禁煙と節酒を心がけることがまず重要となりますが、野菜と果物をとることは、脳卒中や心筋梗塞をはじめとする生活習慣病の予防にもつながるので、できるだけ毎日意識的にとるようにしましょう。
厚生労働省策定「健康日本21」では、1日あたり野菜を350gとることを目標としています。
果物もあわせた目安としては、野菜を小鉢で5皿分と果物1皿分を毎日食べる心がけで、400g程度になります。
(3)熱い飲み物や食べ物は冷ましてから
飲み物や食べ物を熱いままとると、食道がんと食道炎のリスクが高くなるという報告が数多くあります。
飲み物や食べ物が熱い場合は、少し冷まし、口の中や食道の粘膜を傷つけないようにしましょう。
4 身体活動
仕事や運動などで、身体活動量が高い人ほど、がん全体の発生リスクが低くなるという報告があります。
身体活動量が高い人では、がんだけでなく、心疾患のリスクも低くなることから、死亡全体として考えた場合のリスクも低くなります。
普段の生活の中で、可能なかぎり身体を動かす時間を増やしていくことが、健康につながると考えられます。
【推奨される身体活動量の目安】
例えば、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行いましょう。また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分程度行いましょう。
5 体形
これまでの研究から、男性の場合、肥満度の指標であるBMI(※)値21.0~26.9でがんのリスクが低く、女性は21.0~24.9で死亡のリスクが低いことが示されています。
(※ BMI(Body Mass Index):肥満度を表す指標。値が高くなるほど、肥満度が高いことを表す)
BMI値は以下の計算式で計算できます。
BMI値=(体重kg)/( (身長m)×(身長m) )
【BMI値の目安】
男性はBMI値21~27、女性はBMI値21~25の範囲になるように体重を管理するのがよいでしょう。
6 感染
ウイルスや細菌への感染は、日本人のがんの要因の約20%を占めると推計され、喫煙に次いで大きなリスクとなっています。
【がんの要因となる主なウイルス・細菌】
ウイルス・細菌 | がんの種類 | 関連情報 |
B型・C型肝炎ウイルス | 肝がん | |
ヘリコバクター・ピロリ菌 | 胃がん |
福岡県内でピロリ菌検査を実施している市町村 [PDFファイル/29KB] ピロリ菌除菌治療において保険適用を受けられる者(新しいウインドウで開きます) なお、除菌治療には軟便・下痢、味覚異常、発疹等の副作用がある場合がありますのでご留意ください。 |
ヒトパピローマウイルス(HPV) | 子宮頸がん |
このページは、科学的根拠に基づくがん予防(国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」)を参考に作成しました。
【関連情報】
がんの発生要因(国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」(新しいウインドウで開きます)
それぞれのがんの発生要因(国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」(新しいウインドウで開きます)